カイロのブライドン砦まで逃げ帰った達は今、おおわらわで荷造りの準備に追われていた。

空には不吉な暗雲がたちこめ、雷がごろごろと鳴り出していた。

ブライドン砦の一室ではトランクに衣装や書籍をつめこむエヴリンと

リックが案の定喧嘩していた。

「こら、。あっちへいってなさい!」

スケッチブックや原稿やらを両腕一杯に抱えた

我が物顔でトランクの上に居座るだんだら猫をどかした。

「こんな所、契約にはなかったぞ!俺はずらかる!」

「駄目よ!」

「いいや、ごめんだね。すぐにここを出るんだ!」

「あいつをとめなきゃ!」

「俺はやだね、止めるんだったら、本を一番最初に読んだ君が止めろよ!」

「ええ、そうよ。今回のことは全て私に責任が・・悪うございました!私が絶対にとめてみせるわよ!」

「いったいどうやって?あの化け物はこの世の武器では死なないんだぞ」

「武器以外で倒すのよ」

「そいつはご立派なこったな!」

「真面目に私の話を聞いてちょうだい!あの化け物が完全に蘇ったら世界が滅びるのよ!」

「おい、それを俺のせいにするのか?」

「あいつの復活を何としても防がなきゃ」


それから二人の言い争いは続けられ、業を煮やしたリックは「居残って世界を救いたけりゃお好きにどうぞ!」

と捨て台詞をはいて部屋のドアを乱暴に開けると出て行った。


「エヴリン、正気なの?あの醜い化け物をリックなしに私達だけで止めろっていうの?」

部屋にぽつんと残されたは、ゆるぎない決意を固めて腕を組んでいるいとこに食ってかかった。

「絶対に返り討ちにされるわよ!そうでなくてももうバーンズさんが半殺しにされたんだし・・」

「何が何でも男手が必要よ。彼がいてもやれるかどうか分からないのに!」

は、いらいらと落ち着かない様子で室内を歩き回りながら呟いた。


だが、やエヴリンの心配も杞憂に終わり、砦を去ると喚いていたリックは

戻ってきた。



「あら、やっぱり良心がとがめて残ったの?」

「どういう風の吹き回し?」

ふかふかのペルシャ絨毯が引かれた回廊を歩いていたエヴリン、は角を曲がって走ってきた

リックにばったりと出くわした。

「やあ、エヴリン!それにあ〜・・ちょっと困った問題が」

彼は何とか平静をとりつくろうとしていたが、あきらかにまずいことに巻き込まれているのは確かだった。


暗雲が立ち込め、何千もの隕石が気炎を上げて落ちてくる中、

裏階段を駆け下りてきた裏切り者のベニの後をつけて、一室になだれ込んだリック達は息を呑んだ。

そこで彼らが見たものは、何と暖炉の側で皮下細胞を取り戻しつつあるあのミイラだったのだ。

リックはひるまずに二丁のピストルを発射して威嚇したが、ミイラはびくともせず

ずんずん進んでくると大きく腕を引き、彼を投げ飛ばした。


リックは景気よく吹っ飛ばされ、別の扉を開けて駆けつけてきたジョナサン達にぶつかって倒れた。

次は達の番だ。

ミイラは背格好がそっくりな二人の女性達を見比べていたが、エヴリンをマホガニー

の戸棚のところまで追い詰めて優しくキスしようとした。

だが、その時、この窮地を救ったのはだんだら猫のだった。

彼はグランドピアノの上にストンと降り立つと、鍵盤の上を踊るように歩き始めた。

それを見たミイラは、ウォーッと吼えると蜘蛛の子を散らすように大量の砂嵐に巻かれて退散した。

「おいおい・・こりゃマジでやばいぞ」

二丁のピストルをしっかりと握り締めて起き上がったリックはこわごわとつぶやいた。



「あの化け物、猫が怖いんだ・・」

ゴロゴロと喉を鳴らしながらすりよってきた功名者を抱き上げると

は今しがた目撃した奇妙な出来事を反芻していた。

「でも、何で?リックを投げ飛ばすぐらいの力があるなら、小動物一匹ぐらい簡単に殺せそうなのに・・」






「あいつ、エヴリンのことが好きなんだ。キスまでしようとしてた!」

「だから、墓場では私にもキスしようとした。あの時、お墓の中は暗かったから、あの化け物は私とエヴリンを取り違えたのよ」

「よせよ、何でだ?奴は何が目的だ?」

「その答えは館長さんが知ってるはずよ」


カイロ博物館のうなぎの寝床のような廊下を進みながらジョナサン、、リック、エヴリンは

慌しくくっちゃべっていた。




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