朱雀の巫女は神座宝をかっさらった尾宿を追う内に雪の深い森をさ迷い、慌てて追いかけてきた
鬼宿、翼宿、とも離れ離れになってしまった。
その後、偽の天帝に「美朱は体の具合が思わしくないため休んでいる。
あとで責任を持っておぬしらのもとに送り届けよう」と騙された鬼宿は北甲国の砂漠地帯を
他の七星士とともに馬をすすめていた。
結局、いらいらと一人落ち着かない鬼宿は馬の向きを変えさせ、愛しい巫女のもとへ
一目散に駆け出したのであるが。
心地よい夜風が頬を撫でる中、残りの七星士達はうねうねと続く
砂漠の海を進んでいた。
「井宿、ちょっと休んで鬼宿と美朱待ったらどうや?」
「早く進まなければだめなのだ。砂漠は夜間に出来るだけ移動するのが一番いいのだ。
じゃないと朝は炎天下で体力を消耗して参ってしまうのだ」
「それは分っとんねんけど――さっきから馬がびくともせえへんねん」
「こら!お前の人参取ったことまだ根に持っとんのか?ええからはよ動けぇ!」
「置いてけぼりを食うやんけ、このあほんだら!」
苛立った翼宿は、息荒く馬衝を踏ん張って動かない強情な馬を拳で殴りつけた。
途端に彼は馬から振り落とされ、砂漠のど真ん中に放り出された。
「馬の食料まで取ろうとするからよ。たくっ、何て意地汚い・・」
は呆れたように首をふりふり、しぶしぶながら落馬した翼宿を助け起こしていた。
「すんませ〜ん、お願いしますから乗せて下さい〜!!もう二度としませんから〜!!」
乗馬拒否された翼宿は泣く泣く強情な馬に頭を下げて頼み込んでいた。
しかし、そこは彼らしく隙を見て馬の足首を鉄扇で払い、仕返しをしていた。
結局、翼宿を足蹴にしたグレーの若馬とのおとなしい白い雌馬を取替えっこして
至急の事態を解決するはめになった。