それからクリーチャーがずっと行方知れずだったマンダンガス・フレッチャーを捕まえてくるまで

時間はかからなかった。

道中、偶然に落ち合ったドビーと協力してこの抜け目ない盗人を乱暴に

グリモールド・プレイスに放り込んだのだ。

達はそこで驚愕の事実に突き当たった。

盗人は横丁で盗品を売りさばいていた時、視察がてら通りかかったアンブリッジに

「問題のロケット」を譲渡したことを白状したのだった。

マンダンガスから事情を聞いてしまった以上、ぐずぐずしていられない達は入念に計画を練って、

魔法省に乗り込んだ。

彼らは魔法省に出勤途中のお役人四人をこっそり襲うと、彼らの髪の毛を頂戴し、

それをポリジュース薬に混ぜて飲み干した。

見事、魔法省の役人に変装した彼らは日頃の恨みも手伝ってか、法廷に列席していた

アンブリッジを派手にやっつけ、ついで窮地に陥っていた魔法省の役人の妻を助けて

脱出したのだった。

無論、彼女に最も恨みを抱いていたとハリーがこてんぱんにアンブリッジをやっつけたのは

言うまでもない。

ここでも可愛そうなロンはホグワーツ五年生の頃から女難の相に見舞われているのかと思われるほど

散々な目に合っていた。

魔法省のお役人の妻をマグル狩り法廷から連れ出したのはいいが、その妻に感謝されて

正体を明かせぬまま熱烈なキスをされ、その現場をトランクスとタンクトップ一丁で駆けつけてきた

その夫に目撃されるという有様だった。

さらにまずいことにハーマイオニーにも目撃され、彼女の眉がぴくぴくと痙攣し、たちまち険しい顔になっていた。

その後、エントランスホールでは魔法省の警備員は追ってくるわ、デスイーターの一人にハーマイオニーがスカートを掴まれるはで

彼らは何とか逃げおおせていた。


今、彼らはただっ広い森にいた。

もう日暮れ時でカシの木の上ではカラスがやかましくさえずっでいた。

とハリーは互いにぜいぜい息を弾ませながら地面の上に寝転んでいた。

しばらく二人は興奮と疲労のあまり起き上がれなかった。

地面に堆積した枯葉が羽毛枕のように気持ちよかった。


「ハリー、早く私のバッグを取って!」

二人はずっとそうしていたかったのだが、ロンのくぐもった呻き声とハーマイオニーの緊迫した声に

その思いは断ち切られた。

「中にハナハッカのエキスが入った瓶があるわ!」

ハリーはアンブリッジから奪ったロケットをしっかりとポケットにねじ込むと、弾かれたように

立ち上がり、近くに転がっていたハーマイオニーのビーズのバッグの中を漁り始めた。

「どうしたの!?」

正式な癒者ではないが、癒者見習いであるが駆け寄ってきてロンの上にかがみ込んだ。

「ばらけよ!無理に姿くらましをしたから・・」

ハーマイオニーが涙声で叫んだ。

状況を察したはややうろたえながらも、渾身の力をこめて激しくのた打ち回るロンの腕を押さえ、ようやくビーズのバッグからハナハッカのエキスが入った薬瓶を

引っ張り出したハリーからハーマイオニーがそれを受け取った。

「ロン、落ち着いて、落ち着いて!もう大丈夫、助かるからね!」

「一滴ずつゆっくりと注ぎ込んで!」

は黒髪を振り乱し、薬さじで茶色の液体を傷口に塗ろうとしているハーマイオニーに指示を出した。

「何でこんなことに?僕はてっきりグリモールドプレイスに戻るかと思ってたんだけど・・」

ロンの痙攣が少しずつ収まってきたのを見計らってからハリーは尋ねた。

「ええ、ええ、そのつもりだったわ。だけど・・私がドジを踏んだの!お屋敷に戻る途中でヤックスリーにスカートの裾を掴まれて・・それで

 もうあそこには帰れなくなって・・」

ハーマイオニーは悲痛な声で叫んだ。

「それで無理に姿くらましをしたの?」

は気の毒そうに呟いた。

ハーマイオニーはこくこくと頷くだけだった。

ロンは顔面蒼白だった。

幸い、ハナハッカのエキスが体内に回り始めて痙攣と激しい出血は治まってきていたが。

「ああ、ごめんなさい・・ロン、私のせいで!」

ハーマイオニーは酷く取り乱していた。

はそんな彼女の姿を初めて垣間見た。

には分かった。

彼女がロンのことをどれだけ大事に想っているかを。

しばらくして、やや落ち着いたハーマイオニーが杖を上げて保護呪文をかけだした。

これは万全の守りであり、今の彼らに取れる最善の策だった。

その間に、ハリーはハーマイオニーのビーズのバッグからキャンプ用の白いテントを取り出して設置した。

は傷ついたロンを出来るだけ暖かくしてやり、ありあわせのものでスープを作って食べさせた。

それからの彼らの旅路は気の遠くなるようなものだった。

賢明なハーマイオニーの判断で一定期間の滞在後、場所を変えての野宿、また野宿。

森を見つけるとハリーは釣りに出かけ、運よく彼の釣り針に鱒や鮭やなまずがかかった時は

彼らは料理上手な伯母に手ほどきを受けたによってご馳走にありつくことが出来た。

だが、そうでない日には彼らはひもじい食糧事情を強いられた。

魔法使いの旧家の出であるロンにはそれが応えた。

魔法使いと吸血鬼の旧家のハーフであるも似たような状況だった。

二人はいつもふかふかの羽根布団で眠り、毎日、滋養豊富なご馳走を食べていた。

それが突然、ひもじい食料事情と不安定な住宅環境を強いられたのだからたまったものじゃない。

ロンはだんだんとふさぎ込み、誰彼構わず皮肉っぽく愚痴った。

は彼みたいに決して愚痴ったりしなかったが、ルーピンのことを考えると毎晩毎晩枕を涙で濡らした。

ハリーはダーズリー家で相当鍛えられていたので、この逆境にも耐えることが出来たが、

誰よりも血液が不足しやすい彼女の顔が日に日に青ざめていくのを見て胸を痛めていた。































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