、ビクトール・クラム、フェリシティー、ムーディ、ハリー、ハグリッドの組が
大暴れしたおかげで三十人近くいたデスイーターの数は減ってはいたが、
敵はまだしつこく騎士団につきまとっていた。
は通りがかりに苦戦を強いられていたルーピン、ジョージの組を助けるため、
とっておきの風圧呪文をお見舞いした。
その呪文はスネイプともう一人のデスイーターをひっくり返らせ、
暗闇の底へと突き落としていった。
「あの女だ、あの女が本物だ!あの女を捕まえるんだよ!!」
だが、べラトリックスの狂気をはらんだ声が聞こえてくると彼女はぎくっと強張った。
「君は何をやってるんだ!?」
ビクトール・クラムはぎょっとしての腕をつかんだ。
たちまちべラトリックスとロドルファスが追ってくるのが分かった。
クラムとは「失神の呪文」の連続応酬をしながら
汗血馬とペガサスで逃げ惑った。
二人があまりの速さで逃げたのと魔術に長けていたのと、途中でロンとトンクスの組に邪魔されたのとで
べラトリックスとロドルファスはくやしそうに歯軋りしながら
だんだんその姿が見えなくなってしまった。
「君は誰も助けるんじゃない!!今度誰かを助けたらヴぉくは庇ってあげられないよ」
二組を巻いてしまって、誰もいなくなってからクラムはむっつりと警告した。
はクラムのこんなに怒った顔を見たことがなかった。
彼女は「だって、あれは私の夫なのよ――」と叫びたかったが、彼の怒りの前とまたデスイーターが後ろから
追ってくるかもしれないので押し黙った。
「君は絶対にたどりつかなければいけない。たとえ、誰かが犠牲になってもだ」
クラムの力強い声には納得して、ペガサスにもっと早く進むように命じた。
今、ボートキーが設置してあるトンクスやミュリエルの家などを経由して逃げ帰った騎士団は「隠れ穴」に身を寄せていた。
ジョージは片耳をもぎ取られ、ハリーは歯を一本折り、最悪なことにマッド・アイは死んだ。
「突然現れたヴォルデモートが――奴は箒なしでも飛べる。マッド・アイは奴に狙われた君の伯母さんを庇ったんだ。ヴォルデモートの
呪いがまっすぐにマッド・アイの顔に当たって、それから彼は箒から仰向けに落ちていった。
フェリシティーは大急ぎで姿くらましせざるをえなかった。僕たちは助けることが出来なかった。
僕たちも周りを六人のデスイーターに囲まれていた」
フラーとともに彼の最後を目撃したビルは涙ながらにに語ってくれた。
「あの状況では誰だって無理だ。自分を責めるんじゃない」
ルーピンは目にいっぱい涙をためたを抱き寄せながら言った。
恩師を助けられなかったフェリシティーは戦友で彼の秘蔵っ子だったトンクスと
肩を寄せ合って泣いていた。
そして、それに呼応するようにあちこちからすすり泣きや叫び声が聞こえてきた。
ファイア・ウィスキーでマッド・アイに哀悼の意を捧げた後、
ルーピンはをかすり傷ひとつ負わせずに連れてきたクラムに
「ご苦労だったね。君も怪我はないか?」とねぎらっていた。
そこでクラムはかつてトライ・ウィザード・トーナメントで競い合った友人が
結婚している事実を知ったのだった。