ここはゴドリックの谷。

達三人が雪の降りしきる中を歩みだすと、どこかの家の犬がやかましく吼え始めた。

近くの教会からは、鐘の音に混じってクリスマス・キャロルを歌う村人達の声が聞こえる。

「聞いて、ほら・・思ってた日付に間違いないわ」

ハーマイオニーが感慨深げに呟いた。

「去年の今頃はシビウ(ルーマニアの県の一つ)の教会でこれと同じ曲が聴けたの」

もぐすんと鼻を鳴らしながら言った。

「それに、それに・・僕の両親もあそこにいたかもしれない」

ハリーも言葉を探して言った。

それから達は教会の裏手にある小さな墓地に足を踏み入れた。

雪には埋もれていたが、ハリーの両親のお墓もすぐに見つかった。

ハーマイオニーは、の両親が暮らしたコテージを去る時は

ティー・ローズの花束を作ってやり、ハリーの両親の墓には

クリスマス・ローズの花束を供えてあげた。

「メリー・クリスマス、、ハーマイオニー」

「メリー・クリスマス、ハリー」

彼は目が潤んでいたが、二人の女友達に感謝の意を表すことだけは忘れなかった。

彼女達も目が潤んでいたが、おとなしく彼の肩に頭をもたせかけた。

「誰?」

突如、が鋭い唸り声を上げた。

「ハリー、誰かがこっちを見てるわ」

数分遅れてハーマイオニーがモミの木に遮られた教会墓地の入り口を

眺めやって警告した。

「不審者だわ!あの人、私達のこと、密告するつもりじゃないかしら?」

がまずしい身なりの老婆を只者ではないと見抜いたのか

ハリーを突っついて言った。

「いや、誰だかだいたい分かってる」

ハリーは盛んに警告するを黙らせると言った。

「やめましょう、ハリー。私も嫌な予感がするの」

ハーマイオニーは老婆が身振りで「ついてくるよう」示したのを

不気味に思ったのか再度警告した。

「バチルダ・バグショット。ダンブルドアの古い友人だ。大丈夫。

 あんなによぼよぼしてるんだ。いざとなれば僕一人で組み伏せられるよ」

ハリーは不安を断ち切るかのように女の子達に言い含めると、老婆の後を追った。


来るんじゃなかった。

は老婆の住むあばら家に着いた途端に激しく後悔した。

窓ガラスが割れ、ろくにランプもつかないあばら家はすえたにおいがして、

食べかけの残飯にハエがぶんぶん群がっていた。

そして、こんな暮らしぶりでは、あの優れた魔法史の著書を残した

バチルダも前世紀の遺物のような人物に思えた。


「あのお婆さん、何だかおかしいわ。まるで生きていないみたい」

が、老婆の体から立ち込める死臭の交じり合った獣臭を嗅ぎ取って呻いた。

ハーマイオニーは「シッ!」と口に手をあてがって黙らせたが、彼女も

この家に足を踏み入れた瞬間、何だか妙な胸騒ぎがしていたのだった。

その間にハリーは、危なっかしい手つきで蝋燭に火を点そうとしていた老婆から

マッチを借りると、代わりにつけてやっていた。











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