ピーター王と対面したリーピチープはナルニアの住人達で敵の幌馬車を襲撃し、剣を根こそぎ奪った

ことを報告した。

彼はその報告に満足そうに頷いた。

それからピーターは森の住人を引きつれ、森の奥深くにそびえる遺跡へと向かった。

頑丈な石を積んで作られた遺跡では、セントールが剣を高く掲げて先王達の帰還を

歓迎した。

ピーター達は感慨深げに石畳の段を下りていき、遺跡の内部に足を踏み入れた。

遺跡の内部では松明が煌々と照らされ、すでにナルニアの住人達が、敵から奪った剣や斧を鍛えたり、

研いだり、その作業にいそしんでいた。


「内部は昔と変わっているだろうが、守備は万全だ」

ピーターは一通り、遺跡の外側や内側を見て回るとカスピアンに告げた。

「ピーター、プリマヴェーラがこっちに来てって」

松明をかかげたスーザンが、遺跡のほの暗い隅から呼びかけた。

その凛とした声にまたまたカスピアンの頬は緩み、ピーターはそそくさと駆けていった。

遺跡の奥の奥には、かつてアスランが横たわっていた石舞台が鎮座していた。

そして、壁画にはピーター、エドマンド、スーザン、ルーシーが馬に跨って狩をする姿や、タムナスに日傘を

差し掛けられ優雅に散歩するプリマヴェーラ一世の姿も描かれていた。


カスピアンが円盤型の大きな点火台に松明を近づけると、パチパチと嬉しそうに炎が躍り上がり、

その奥に雄雄しく描かれたアスランのレリーフを照らした。

ルーシーは悲しそうに真っ二つに割れた石舞台の上に手を触れ、「アスランはこのこと知ってるよね?」

とスーザンに尋ねた。


途端に彼女は難しい顔をして黙り込んでしまい、「ねえ、そうでしょ?プリマヴェーラ!あなたなら分かるよね?」

と水を向けられた妖精女王も「ごめんなさい・・あの方はいらっしゃらないの」と

申し訳なさそうに呟くよりなかった。

「思うに僕らだけで何とかするしかないんじゃないか」

ピーターは唇をぎゅっと結ぶと皆に言った。


そこへ遺跡の土台石の上で見張りをしていたフォーンが悪い知らせを持って飛び込んできた。

遺跡が見渡せるクヌギの木々が絡み合ったところに、馬に跨ったテルマール人の斥候がうろついていたというのだ。

知らせを受け取ったピーターは「今なら城の守りは手薄、こちらから攻撃を仕掛けよう」と

持ちかけた。

だが、自らもテルマール人であり、生まれ育った城の内部も外部も知り尽くしているカスピアンは

「難攻不落の城だ。危険すぎる」と反対した。

しかし、数々の戦を勝利に導いてきた英雄王は「では初の落城となるな」と軽く笑って

聞き流した。

「不意打ちを仕掛けるんだ」

トランプキンも若き王の意見に賛成だった。

「でも、少なくともここは安全だ」

「十分な備えをすれば守り抜けんじゃない?」

何事も現実的なスーザンもカスピアンの意見に同調した。

「君がよくやってくれているのは分かる。でもここは要塞じゃない。巨大な墓なんだ」

ピーターはカスピアンの労を労いつつ、あくまでも意見を変えなかった。

「兄さん!でもここだって兵糧が無くなれば終わりだよ」

砕かれた石に、のんびりと腰掛けていたエドマンドが見かねて口を挟んだ。

「木の実を集めりゃいいんだよ!」

「それを奴らに投げつけてやれ!」

「お黙り、二人とも」

深刻な話し合いの最中にふざけた赤リスとリーピチープは、横で腕を組んでいたプリマヴェーラに叱られてしまった。

「見ろ、怒られた・・」

リーピチープは頭に差した赤い羽根飾りを揺らし、赤リスに不満をぶっつけた。

「入城さえ出来れば、城の守備隊を倒せるか?」

「命の限り戦います」

ピーターはてきぱきと背後に控えるセントール達に尋ねた。

彼らは最大級の敬意を払って答えた。

「これはとても危険な賭けよ」

エドマンドの隣の打ち砕かれた土台石に腰掛けていたプリマヴェーラが

不安そうに意見を述べた。

「分かってる。でもチャンスは今しかないんだ」

ピーターは懐かしいすみれ色の瞳を熱心に覗き込んで言った。

「こんなこと言いたくはないのだけれど私、何だか嫌な胸騒ぎが・・」

ピーターの熱意に当惑気味のプリマヴェーラは、エドマンドのところに戻ると、こっそりと胸の内を打ち明けていた。

その不吉な言葉はルーシーの耳にも届き、幼い彼女は、兄に「白い魔女を倒したのは本当は誰だった?」

と厳しい意見を叩きつけていた。

「フン、森の主ともあろう方がそんな弱気では困りますな・・」

二カブリクは彼女の側を通る時、きつい言葉を投げつけると

「もうこれ以上アスランを待ってられない」と非情な決断を下したピーターの後を

追いかけて行った。




その夜、城に近づく六体の影があった。

その影の正体は巨大な翼を羽ばたかせて滑空するグリフォンに掴まった四人の人間、一人の妖精、それに一人の赤小人だった。


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