ピーターは白い魔女の二本の長剣の一振りを上体を斜めに倒して避け、
力強い一振りを浴びせた。
だが、白い魔女の剣術はがっちりしており、二本の長剣でしっかりと
攻撃を塞がれてしまう。
アスランの紋章が描かれた銀の盾も白い魔女の長剣の力が
強すぎて、防ぐにも吹っ飛ばされてしまう。
「何をしているお前達?妹を早く始末せよ!!」
白い魔女は岩陰の後ろでチーターやイノシシと交戦していた
ミノタウロス二頭に命じると草むらにむなしく転がった
ピーターが起き上がるのを待った。
「はい、陛下!」
「ウォーッ!!覚悟するがいい!!」
あっという間に左右から大きな斧を掲げたミノタウロスが
どすどすと走ってきた。
「そんなに死にたいなら死ぬがいいわ!!」
はちっと舌打ちすると、背中に立てかけていた長弓に矢を番えて放った。
勢いをつけて走っていた先頭のミノタウロスは、彼女の素早い魔法の矢を
読みきれずもんどりうって転んだ。
倒れたミノタウロスの肩から怒りの炎が湧き上がり、遅れて走ってきた
もう一頭を踏みとどまらせた。
「まだやる?」
「やるんだったら、何体でもかかってきなさい!!いつでも相手になってやるわよ!!」
「ピーター王、万歳!今こそアスランの元に栄光を!!」
はぜいぜい息をはずませながら、周囲で戦っているセントールや動物達に
聞こえるようにはっきりと叫んだ。
ナルニアの守護神である彼女の声に勇気付けられた動物やセントールらは
くじけそうになっていた士気を取り戻し、敵軍と激しくぶつかった。
「おのれ・・こしゃくな!」
の声援に、白い魔女は二本の長剣を交差させて、ピーターを刺し殺そうとしたが、
彼は上体を反らせて二本の凶器の攻撃を避けた。
猛々しい咆哮がこだました。
アスランだ。
切り立った崖の上によじ登り、白い魔女に石にされた大勢の仲間達を
引き連れて戻ってきたのだ。
ピーターやは力強い援軍に感激し、白い魔女の顔は引きつった。
「そんな馬鹿な・・」
白い魔女は目の前の出来事を信じることが出来なかった。
「もう全て終わりよ、ジェイディス女王!降伏すれば命だけは助けてあげる」
足元に転がったミノタウロスをどかし、二本の炎の短剣を構えて、
ゆっくりと歩いてくるは哀れみをこめた目つきで言った。
スーザン、ルーシー率いる弓隊はアスランの後ろから次々と顔を出し、
ワーッといっせいに崖を蹴って柔らかなムアの丘に飛び降りた。
ルーシーの友人で幽閉から解かれたタムナスは体ごと小鬼にぶつかっていくと、吹っ飛ばした。
ピーター、白い魔女の戦いもだんだん白熱してきていた。
二者は激しく長剣でぶつかり合い、怒りに任せて魔女が長剣でピーターの
左足をなぎ払った。
魔女はその勢いで彼の左肩の甲冑と鎖帷子の隙間に長剣を突き刺し、
もう一本の長剣で彼を叩き切ろうとした。
ピーターは銀の盾で凶器を防いだが、すぐに長剣で盾が吹っ飛ばされ、
彼の目の前に鋭い長剣がせまった。