はてしないムアが続く緑の丘で、アスラン軍と白い魔女の軍は
対峙した。
アスラン軍の総指揮官であるピーター・ぺペンシーと忠実な副官のオレイアス、
弟のエドマンド・ぺペンシーは皆、輝くような銀色の甲冑をつけ、
厳しい顔でえんえんとつらなるムアを眺めていた。
エドマンドが指揮する弓隊にはビーバー氏、セントール、赤い魔女が
弓を手に手に小高い丘の上からずらりと並んでいた。
「捕虜など必要ない。全て殺せ。妹の首を取った者には褒美をつかわすぞ!」
殺されたアスランの毛皮を身にまとった白い魔女は声たからかに宣言した。
突如、大地は揺れた。
両軍は斧や剣や槍を手に手にいっせいに駆け出した。
ピーターは長剣を真っ直ぐにかかげ、「ナル二アの為に、アスランの為に!」
と愛馬をせきたてて突っ込んでいった。
両軍の長槍、剣や斧や盾が激しくぶつかる音がし、戦は幕を開けた。
一通り、軍がぶつかると、いよいよ白熊が引く忍び返しのついた馬車を操り
敵の総指揮官である白い魔女が登場した。
「弓を放て!」
その様子を見ていたエドマンドはに目配せして合図した。
ネイビーブルーの古代ギリシャ風のドレスとマントをまとったと甲冑をつけた女セントールが弓を大きく引くと、魔法の矢が勢いよく発射された。
セントールの矢は空中で弧をかいて、不死鳥の姿になり、じりじりと燃え尽きて
白い魔女の周りに群がる敵軍の中心に落下した。
不意をかかれた敵軍は総崩れになり、皆ひっくりかえった。
アスラン軍は大喜びで剣や槍を手に手にわきかえった。
白い魔女は余裕綽々でムアを焼きつくす炎を氷の防壁ではねかえし、
アスラン軍の士気をかいた。
とそこに、の魔法の炎の矢が飛んできて馬車を引く白熊の一頭に着火し、
彼はもんどりうって転んだ。
「おのれ、小娘が・・」
ごろごろと転がっていく白熊の下敷きになった兵士たちをさけながら、白い魔女は自分の氷の防壁を
突き破った妹の矢を忌々しそうににらみつけた。
「全軍退却!岩場まで引き上げろ!」
怒りに満ちた白い魔女が馬車を駆って突っ込んできた。
ピーターのかけ声でアスラン軍は急いで後退した。
それを援護するためにエドマンドは弓隊に矢を放つよう命じた。
女セントールやがいっせいに矢を放ち、
それはアスラン軍を追って来た敵の将兵達に雨あられと降り注いだ。