小枝を組み合わせて作ったビーバーの小屋にぺペンシー四兄妹はいた。

「この方は様。皆、赤い魔女と呼んでいます」

ビーバーは、ぐったりと気を失って暖炉の特等席の寝椅子に寝かされている少女を見やって説明した。

「ナル二アを支配しておられる女王とは腹違いの妹にあたります。だから、皆、姉君の白い魔女に

 対してこの方を赤い魔女だと呼んでおられるのです」


「妹君はそれはそれはお優しい方でした。いつもナル二アの平和を

 願っておられました。様の力が及んでいたこのナル二アは

 春のごとく穏やかで争いのない平和な国でした。

 しかし、ある春の祭りの時、白い魔女が突然やってきて妹君を石にされてからは

 ・・春や平和な時は永久に閉ざされ、長い冬と恐怖にこの国は包まれてしまったのです」



「ここは?」

「ああ、良かった。気がつかれたんですね!」


ビーバーが嬉しそうに暖炉の側のふかふかの寝椅子から起き上がった

を見て叫んだ。


 
「あなた達・・もしかして私の呪いを解いて下さったぺペンシー四兄妹!?」

彼女ははっとミンクやテンの毛皮の

コートを着込んだ人間達を見とめて

叫んだ。


「は、はい・・」


エドマンドがどぎまぎしながら答えた。


「あ、ありがとう・・あなた達!」

彼女は涙ながらに感謝して呟いた。


「お礼を言うなら私じゃなく、こっちのピーターにね。

 だって真っ先に氷を触って溶かしたのはピーターだもの。私は何もしてないよ」


正直な末っ子のルーシーが、彼女に真相を話した。


「じゃ、あなた一人で・・あの分厚い氷を割ったの!?」

「ああ、実はそうなんだ・・何が何だか分からないけど体が勝手に動いて・・」


驚くにピーターは照れくさそうに言った。

「嬉しい!本当に、本当にありがとう!あなたが来てくれなければ、私は一生、あの氷のケースに

 閉じ込められっぱなしだったわ!」



なりふりかまわずにぐっとピーターを抱きしめた

エドマンドはちくりと胸の痛みを感じ、その腹いせに

「余計なこと言うなよ!」と真相を話してしまったルーシーにやつあたりしていた。

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