「匂うぞ」

アナグマがくんくんと鼻を鳴らした。

「何が?」

ニカブリクが尋ねた。

「人間の臭いだ」

「あいつか?」

「いや、敵だ!」

ニカブリクは隣にたたずむカスピアンのことだろうとたかをくくっていたが、

次の光景は逃亡者達を凍りつかせた。


「いたぞ!」

軍人達の野太い声、王子に向けられる黒いボーガン。

「逃げろ!」

カスピアンはポインター種の猟犬のようにさっと身を翻すと

両脇の者達に命じた。

がさがさとハリエニシダの茂みをかき分けて近づいてくる軍人達。

ひゅっ、ひゅっと何本かの矢が放たれた。

矢はカスピアンの髪をかすめ、目の前の幹にぐさりと突き刺さった。

は金の錫杖を急いで取り出すと、めちゃくちゃに振り回した。

すると錫杖の先から金色の粉が飛び散り、

彼ら狙って飛んでくる矢は、たちまち無数のスターフラワーとなって舞い落ちた。

それでも迫る敵の数は知れず、の長い黒髪を矢風が吹き上げていった。

「ああっ!」

最後尾を走っていたアナグマ目掛けて軍人の放った矢が命中した。

アナグマはどすんとつんのめって崩れ落ち、ハリエニシダの茂みの中に突っ込んだ。

「まずいぞ!」

「待て、私が行く!」

ニカブリクがその鈍い音に振り返って、友を助けに行こうとした。

だが、カスピアンが彼の手を押しとどめた。

「角笛を頼む!俺の命より何倍も価値がある!」

アナグマは荒い息をしていたが、駆け寄った王子に白い角笛を差し出して言った。

ゆっくりと近づいてきた軍人の一人が王子にボーガンの狙いを定めた。

だが、彼はが苦し紛れに振った金の錫杖の魔法を浴び、

金ぴかの像となってどすんと倒れた。

追いついてきた他の軍人達があっけにとられて、純金の像に変えられた

彼を見つめていると、茂みの中を静かに移動してきた影にむこうずねを切り裂かれた。

その影は三人の図体のでかい軍人達をひっくり返し、さらに嘲笑うかのように茂みの中を

這い回った。

アナグマを抱えた王子は見えない影に、テルマールの屈強な軍人達がばたばたとなぎ倒されていくのに

気味悪くなって走り出した。

それでも執拗な矢は逃亡者達を追い、も危うく頬を

矢じりがかすめるところだった。

「心配しないで。あれは味方です」

極度の不安に達して走り続けるカスピアンに、はそっと安心させるように

言ってやった。

テルマール人達はまた一人、また一人と戦友が消えていくのにパニックになり、

やたらめったら長剣でハリエニシダの茂みを突き刺していた。

だが、最後の一人があっけなくむこうずねを切り裂かれて倒れてしまうと

その影は否応なしに王子の下へ迫った。






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