霊界探偵と助手達、その友人、飛影、あとから駆けつけた蔵馬の助力もあって、
無事雪菜を垂金邸から連れ出すことが出来た。
「氷女は氷河の国から出ないで暮らすしきたりがあるのです」
「本当にありがとう、和真さん・・」
大吹雪という悪天候に見舞われる中、見送りに来た桑原に雪菜は芯から切なそうに言った。
「さん、本当に泪さんにお会いにならないのですか?」
雪菜は最後に、半分だけ氷女の血を受けた同族の彼女に語りかけた。
飛影は自分が実の兄であることを話さなかったが、は自分が氷河の国の出身であること、
母親は氷女の泪、父親は人間で元霊界探偵であることを明かしたのだった。
「そんなことをしたら長老達の目もあるし、お母様に迷惑がかかります。
お母様には私は人間界で元気にやっているとお伝えしてください」
はそう言うと背丈の低いこの可愛らしい少女の両手を取り、そっと自らの手で包み込んだ。
「私は人間で霊界探偵の父親と氷女から生まれた女の忌み子であり、氷河の国を追放された身・・」
「そんな!ご自分をそんな風に卑下なさらないで下さい!あなたは命をかけて私をあの館から救い出してくれました!!」
「そんな方が忌み子だなんて嘘です!!さんは忌み子なんかじゃありません!私と同じ血を分けた氷女です!!」
雪菜は、悪天候の空を眺めて皮肉っぽく呟いたに向かって熱っぽく言った。
「それに・・短い間でしたけど、あなたはいつまでも
私のたった一人の義姉様であることに変わりありません。そうですよね?」
雪菜の心からの笑顔に、はずっと持ち続けていた氷河の国へのわだかまりが
胸の中でちょっとずつ解けていくのを感じた。
「おい、桑原さん急に渋くなったと思わねーか?」
「映画に影響されたに500円」
「いんや、俺は女にふられたに500円だ」
オレンジ色の夕焼けが美しい刹那、桑原は沈み行く夕日をバックに何やらたそがれていた。
そんな桑原をあれこれあてこすって、賭けの格好の材料に使っているのは子分の桐島達だ。
「ピンポーン!桐島、正解〜♪」
「おいおい・・あれは振られたんじゃないだろう?」
幽助はにひひと笑い、それを皿屋敷中学のセーラー服を着たぼたんは軽くいさめた。
「だって、あの子は氷河の国ってとこに帰っちまったじゃねえか」
「いいじゃないさね〜人間の桑ちゃんと氷女の雪菜ちゃんとの究極の長距離恋愛〜♪」
ぼたんは一人浮き浮きと舞い上がっていた。
「そういやお前・・本当にお袋さんに会わなくてよかったのか?」
「雪菜ちゃんが、せっかく氷河の国にへ一度来ないかって誘ってくれたのによ」
幽助はここで急に真面目な顔をして、盟王学園の真紅のブレザーを着たに問いかけた。
「浦飯さん・・いまさら会ってどうするの?私が氷河の国に足を踏み入れれば、
雪菜ちゃんやお母様に迷惑がかかるだけだし、あの長老のお婆さん連中は決して歓迎してくれないわ」
「今は雪菜ちゃんに会えたこと、そして、こうしてお母さんのこと言えただけでもよかったって思ってる」
「雪菜ちゃんは、実のお母様が亡くなってから私のお母様に育てられたんだって。
だから私達は血は繋がらないけど、義理の姉妹になるわけ。いいじゃない。今はそれだけで十分よ」
実の母親に会えるチャンスを逃したのに、は実に晴れ晴れとした顔をしていた。
「へぇ〜そんなもんかよ・・」
幽助は、河川敷の土手をぼたんと共に歩き出した彼女を見送りながらぼそりと言った。