意気揚々と新車でナンパに出かけたサイゾウだったが、案の定、女運、金運の悪さにかけては
彼の右に出るものはおらず、真紅のボディコンスーツの美女をつかまえたのはよかったものの、その女は
妖怪で買ったばかりの新車を魔剣でめった切りにされる始末である。
妖怪の気配を察した猫丸がその場にタイミングよく駆けつけてくれたまではよかったものの、
サイゾウはさらに魔剣で身包みはがされた上、原型をとどめないほど破壊された新車を唖然と
眺めているところだった。
次々とバスから飛び降りた仲間達は、波止場にしゃがみこんでいるサイゾウの無様な格好に思わず失笑してしまった。
は「やっぱり女運がめちゃくちゃ悪いんだ・・」と哀れみをこめて呟き、この中で一番酷いと思われる
サスケはその言葉を耳に挟み、さらに笑いが止まらなくなってしまった。
だが、その失笑も原型をとどめないほど破壊された車を見たときには消えてしまった。
「こいつはただもんじゃねえな・・」
「きっと妖怪の仕業ね」
普段着に着替えたサイゾウの運転する猫丸の中では憎らしいほど冷静なサスケ、鶴姫の
二人が破壊しつくされた彼の車について話していた。
「あんな美人が怪力の魔剣の使い手とは・・」
「ソウゾウデキナイネ〜」
オリーブグリーンのタンクトップ姿のジライヤとオフホワイトのタンクトップの上にレースのカーディガンを羽織った
も額をよせてひそひそと話し込んでいた。
しかも、その後サイゾウはその格好悪い現場をドラム缶の後ろに隠れて一部始終カメラに収めていた
小僧っ子に「写真をばらまく」と恐喝されてしまう。
小僧っ子は、証拠にトランクス一枚でたたずむサイゾウの写真を見せ付けた。
鶴姫、は思いっきり引いてしまい、ジライヤはここまで三枚目になれる彼にいたく感心し、
サスケはここでもにやにや笑い、一番酷な反応を見せてくれた。
「うわ・・なかなか抜け目のない子供よね・・」
「サイゾウ、変なのにひっかかっちゃったわね〜」
「ほんとすげえな。大人顔負けだよ」
「最近の子供は妖怪よりタチがワルイネ〜」
子供のくせに大人を恐喝するのかと怒り狂ったサイゾウを尻目に、鶴姫、サスケ、ジライヤは
のん気に話していた。
だが、この事件はそう簡単に済みそうになかった。
ボディコンスーツの美女に化けた妖怪、網切りは霧隠才蔵を恨んでおり、その直系の子孫である
サイゾウに復讐を誓ってやってきたことが分かったからだった。
どちらかが倒すか、倒されるかしかないこの一件にサスケ達の出る幕はなく、
不本意ながらも、霧隠の子孫であるサイゾウがかたをつけることで決着がついた。
には珍しく「だから美人には気をつけろと・・」と延々と説教され、彼はこれを機にしばらく
ナンパを控えることとなる。