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初めて訪れたキャロルの別荘。
そのバスルームの扉を、まるで我が家のように開いて、メンフィスはキャロルを誘った。
キャロルがくすくす笑いながら付いて行く。
床は大理石を用い、観葉植物が置かれ、清潔な白いバスタブと真鍮のシャワーが二人を待っていた。
「ほう・・・・パピルスか。」
「ええ、頂き物だけど気に入ってるの。だけどどうして知ってるの?あまり人気の有る植物じゃないと思うけど。」
「俺はもともとあっちの生まれだ。俺の先祖とやらがいた頃は、当たり前に岸辺に生えていたらしいが・・・。
今じゃ自然のものは無い。全部人間が栽培してる。」
「知らなかったわ。でもメンフィスが話してくれるのは嬉しい。こうやって貴方のこと一つずつ分かって行くの、嬉しいわ。
タオルは・・・ここね。ああ、バスタブにお湯を張るわ、ちょっと待って。
メンフィス、バスソープを取ってくれる?・・・・・メンフィス?」
返事が無いのに気付いて振り返ると、彼の視線が窓辺に向いていた。
広いバスルームの一方は大きな窓で、半分上がったブラインドの下に、明るい日差しを浴びて置物が並んでいた。
クリスタルのアヒルが三羽、愛嬌の有る顔つきで一列に並んでいる。
「ふ・・・・・ん」
彼が長い指先で一羽の嘴をつつき、掌にとってじっと見つめる。
「あ・・・・ごめんなさい、それは大事なの。なるべくなら触らないで・・・・・」
メンフィスの形の良い眉がぴくりと上がった。あまり表情には出さないが、気に入らないことが有るときの、彼の癖だ。
だが、メンフィスはそのまま置物を元の場所に戻した。
ほっとしたキャロルが脱衣場のロッカーを開け、オーガニックコットンの柔らかいタオルを出す。背後から湯の落ちる音がした。
彼がバスタブに湯を張っているのだ。
「バスローヴは・・・何処かしら・・・あら?変ね・・・・・」
あちこちを開けて、ようやく見つけた二着を手に持ったときに。
耳慣れない声がした。
いや、確かにメンフィスの声だ。声はメンフィスなのだが・・・・・・
振り向いたキャロルの目に飛び込んできたのはにやにや笑っているメンフィス。
片手を腰の辺りでひらひらさせ、頭にあのアヒルを載せている。
「・・・・・ぷっ・・・・・くくくっ、やだ、床に落したら割れちゃうわ。やめて。」
笑いながら伸ばしたキャロルの手を、鳴き真似をしながら器用に避けて笑う。
「お・・・・・っと」
「あっ」
とぽんと音がして、クリスタルは煌めきながら湯の底に沈んでゆく。
「あ〜あ、割れなくて良かったわ、兄さんが買ってくれたのに・・・・・えっ!?」
バスタブの端から身を乗り出し、湯の底に沈んだアヒルに手を伸ばした白い肢体を、後から彼が抱き締めてきた。
「ちょ・・・・・なにするの?」
「キャロル・・・・・」
耳元で呟く声が熱い。
「ちょっと、やめてって。濡れちゃうわ。」
そのときにはすでに、熱い掌がキャロルのバスローヴの帯を解き、はだけた白い胸を包んでいた。
「キャロル・・・・・」
「・・・・・っ」
「愛している・・・・キャロル・・・・」
呟いて、項に触れる彼の唇が熱い。
「あ・・・・・やめ・・・・・」
「嫌だ・・・・・やめない」
メンフィスの唇が、バスローヴを下ろしながら白い背を滑る。いつの間にか床に膝をついて、キャロルは甘い溜息を吐いていた。
「あ・・・・・・・・は・・・・・」
その肢体を明るい日差しに晒しながらキャロルが花開く。後から胸を摘まれ、脇腹を撫でられ、気まぐれに白い尻を触られて震える。
「キャロル・・・・・」
甘い声にゆっくりと振り向くと、メンフィスの形の良い唇が待ちかねたように紅い唇と重なる。
「ん・・・ふ・・・んん・・・・・っ・・・・・っ」
片手が白い胸を愛撫している。摘まれるたびにぴくぴくと肢体を震わせ、撫で回されるたびにゆっくりと嬌声を零す。
片手が色付いた肌を彷徨い出した。
「んっ・んんっ・んふっ」
くちゅりと音を立てて唇を離すと、青い瞳が潤んでいる。
「も・・・う・・・・・」
片腕で細い腰を抱え込んだまま、呟く。
「俺よりあんなアヒルが大事か?」
「ちが・・・そうじゃなくて・・・」
「じゃあ愛してるって言え。俺を愛しているって。何よりも俺が大事だって。」
「あ・・・愛してる・愛してる・愛してるから・・・っ・あああっ」
一番感じるところ。キャロルが一番悦ぶ所を彼の指がさわっている。
「あ・・・いやぁ・・・ああぁ・・・・こんな・・・・・ぁっ」
バスルームに隠微な水音が響く。どんどん大きくなって高くなって、それに連れてキャロルが上げる声も高く切なくなる。
「いやいや言いながら・・・」
メンフィスの瞳が細くなる。そして待ち焦がれた快感がやってくる。
熱く蕩けた中に、長い指がゆっくりと沈む。
「あああ・・・ああ・・・・・はああ・・・・・ん・・・くぅ・くぅ・んん」
跪き、いつの間にか両手でバスタブの縁を握り締め、開いた足の付け根に男の指を咥え込み、
指の動きに合わせて白い尻を振り、胸を揺すってキャロルが快楽に酔い痴れる。
「達きたいか?達っていいぞ。そら・・・・・・」
声と同時に指の動きが早くなる。暖かい蜜が幾筋も、上気した太腿を伝い、流れ落ちる。
「あっ・あっ・ああっ」
白い尻がだんだんと後ろに突き出されて、もっともっとと快感を強請る。それに応えて指の数が増える。
「ああっ・あああっ・あんんっ・あっ・ああう・あんっ・んんっ!」
不意に中が締め付けて来た。同時に暖かい蜜があふれ出して、キャロルがぐったりとバスタブに縋りつく。
「ひど・・・・・」
「いやいや言いながら素直に応えただろう?」
笑いながらキャロルの身体に引っかかっていたバスローヴを毟り、自分のも脱いで其処に放り出す。
そのまま後ろから圧し掛かり、自分の熱い杭をゆっくり沈めていく。
青い瞳が見開かれ、仰け反った喉からは歓喜の声が迸る。
「あああああっ・・・メンフィス・・・・・っ」
跪き、後ろから白い肢体に己の杭を何度も打ち込むと、目も眩む様な快感が脳天まで走る。
キャロルが黄金の髪を振り乱し、あられもなく声を上げてよがり狂う。
「ああ・あい・あいしてる・あいしてるっ」
「誰よりも?他の・誰よりも?」
嬉しくて、もっともっと縋るようにその言葉を、白い喉から引きずり出す。
キャロルが言ってくれるとその一言が、吐息が、声色すら嬉しい。
もっともっと、もっと言ってくれ、キャロル。
キャロルが絶叫を上げて達した。己もそのまま弾けたいのを歯を食いしばって堪え、引き抜いて
放り出したバスローヴの上に組み伏せる。
バスタヴから溢れた湯が、暖かな流れとなって床を濡らし、二人を濡らし、流れてゆく。
湯と愛撫で紅に染まった太腿を抱え上げ、真上を向いた泉に己の物を垂直に打ち込んだ。。
キャロルの肢体が跳ね上がる。
メンフィスはそのまま、唸り声を上げて腰を打ちつける。互いの肌を、太腿を、熱いものが濡らし、飛沫が飛び散る。
もう声も出なくなったキャロルが、それでも熱に浮かされたように繰り返す。
「あ・愛して・る・あいして・る・あいして・あん・ああ・あう・ああ・あ――――っ!!」
「キャロル・キャロル・キャロル・・・・・・っ」
強烈に突き上げ、最奥まで穿ちながら熱いものを放った。
「立てない・・・・・」
「何?」
「メンフィスの馬鹿。腰抜けちゃったわ。」
床にへたり込んだキャロルが、恨みがましくメンフィスの顔を見上げる。
「どうするのよ、こんなんじゃ食事に行けないわ。」
きゅっと栓を捻る音がして熱い湯が降って来た。
続いて、両手を泡だらけにしたメンフィスがキャロルを捕まえる。
「洗ってやる。」
くるくる洗われ、綺麗に梳られて抱かれたまま湯に沈む。
メンフィスの指が、沈んでいたアヒルを摘んで窓辺に置いた。
「ふふふ・・・・・」
「なんだ?」
「雛、みたい。」
くすくす笑いながら瞳を閉じ、逞しい胸に頭をもたせ掛ける。
「貴方だけよ・・・家族の誰とも、今まで誰とも、こんなことしたこと・・・なかったわ・・・」
パパ、ママ、兄さん達。
私、この世で一番、大事な人を見つけたわ。
END
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