05・貴方の愛に溺れたい
すいません、死にネタです。
大丈夫な方のみお読み下さい。
――――ファラオも物好きな。何を好き好んで靡かぬ女をお側に置かれるのか。
――――其処が良いのだろうよ。丁度捕らえた獲物を屈服させるようなもんだ。
あの娘だって所詮女、直ぐに威光にひれ伏して媚を売るようになるさ――――
「お前は本当に頑固だな・・・今までの女とは全く違う。何をそんなに抵抗する?」
「・・・・・私は貴方の物では無いもの。言いなりにはならないわ。」
「今までの女はそんなことを言いもしなかったぞ。媚の一つでも売れば贅沢な暮らしが出来て何の心配もいらぬのに。」
「私にとって人を愛するとは媚を売ることではないの。そんな見せかけや、物を貰って喜ぶ愛などいらない。」
「私がお前を愛することも、要らぬと申すか?」
「・・・・・ええ・・・・・」
「だが、もうお前は私のものだ。すっかり私に染まって私の掌の上でしか鳴けぬ・・・・・
最早他では生きられまい。その身体にそう教え込んだのだから。」
夜毎褥に積もるのは、寂しい言葉と悲しい拒絶。
黄金の髪を持つ娘は、その手で病人を癒し、汚水を清水に変え、その身を持って奴隷の命を贖った。
賞賛され、誉めそやされ、そしてファラオに執着された。
罵倒を持ってファラオを拒絶した娘は、何時頃からその青い瞳に愁いを浮かべるようになった。
何度か抱かれた後、娘は始めて奴隷少年の解放をファラオに懇願した。
願いは直ぐ聞き入れられた。もとより、少年はとっくに解放されていたのだから。
愁いを浮かべるようになったのはそれから。
ふとした折にファラオが見せる、不器用な愛情を感じるようになってから。
そしてファラオのためにと次々送られてくる、見目麗しく自信に輝く娘達を目にするようになってからだった。
「今日も側室が増えた・・・下らぬ・・・よくもまあ次から次へと見つけてくるものだな。」
「そう・・・皆心配なのでしょう、貴方には跡継ぎがいないから。それ以前に王妃も妻と言われる方もいない。」
「お前がいるではないか。」
「・・・私、子供は生まないわ・・・きっと神様がお許しにならない・・・」
「何故そんなことを言う?私の愛が足りぬのか?」
「そんな気がするだけよ。」
「それでは是非ともその腕に、我らの和子を抱かせてやろう。」
「そんなことを言わないで。女王がいるわ。女王との間に赤ちゃんが生まれればいいことだわ。」
「お前の子が良い。」
「貴方はファラオだわ。国のためにも貴方のためにも、正当な血筋を持つのが一番よ。」
「愛した女の生んだ子を跡継ぎと定めて悪かろうはずが無い。何より跡継ぎを決めるのは私だ。」
「お願いだから・・・そんなことを言わないで。・・・さあ、もう用は済んだでしょう?今日は一人で眠りたいの。
・・・・・出て行って。」
「今宵に限って何故そのようなことを言う?」
「べつに、ただ一人で居たいだけよ・・・・・お願いだから・・・・」
「この頃のお前は何処かおかしい。」
「・・・・・そう・・・・・いつから気付いていたの・・・?」
「さあ・・・もう随分になるな。何か気に病むことがあるのか?体調が優れぬなら医者に見せよう。」
「別に何も無いわ・・・」
「ではどうしたのだ。やはりおかしいぞ。一人にはしておけぬ。」
「・・・・いままで・・・・ありがとう・・・・・」
「何?なんと申した?」
「・・・・・愛しているの・・・・」
微かな声が聞こえた。
「キャロル?」
ファラオが起き上がって少女の顔を覗き込む。
長い間焦がれ続けたその言葉は、しかしあまりにも儚く、俄かには信じることが出来なかった。
「なんと申した?」
白い腕が差し伸べられ、抱き締めていた腕に重ねられる。
「キャロ・・・・・」
小さな唇が、初めて自ら男のそれに重なる。たどたどしく舌を動かして唇を舐め、何時も受ける愛撫を男に行う。
いつしか夢中になってそれに応える自分がいた。
引き摺られそうになる意識を何とか繋いで唇を放す。
「・・・貴方を愛しているの・・・・・」
再び呟くと、何かに憑かれた様にファラオの唇を貪る。
「貴方を愛しているの・・・誰にも渡したく・・・無いの・・・・なんでもするわ・・・・貴方のためなら・・・・・」
息を弾ませ、かすれた声を振り絞って囁くとキャロルは寝台を降りる。
何も纏わない小さな肢体が床に跪いた。
追いかけるように起き上がった男が座る。その股間に身を伏せた。
天を仰いで屹立する男のものに白い指を絡め、愛しそうにさすり、頬を摺り寄せる。溜息がかすかに触れる。
「キャロル・・・・?」
「何でもするわ・・・貴方のためなら・・・貴方がよろこんで・・・・くれるなら・・・・そう思うようになっていたの・・・」
呟くと男のものを咥える。小さな口には収まりきれない程大きく太い物を懸命に舐め上げ、舌を絡め、吸い上げる。
「今ほど自分が何も持たないということを悲しく思ったことは無いわ・・・権力も、財力も・・・・地位も・・・」
やがて唇を放し、再び愛しそうに指で撫でさする。
「貴方を悦ばせるものも力さえも・・・」
青い目に透き通ったものが盛り上がった。
「貴方に庇護されているだけの私は、ただの毛色の変わった娘・・・・・
この世界で生きてゆくには、この身を鬻ぎでもしなければ糊口を凌ぐことも出来ない・・・」
涙が零れ落ちる。男のものを撫でさすっていた指が放される。
「・・・貴方を愛するなんて出来ないと思っていたのに・・・。」
後ろへ下がる。
「それなのに・・・貴方に愛されてもいつか飽きて捨てられるときが来る・・・そうなったら生きてゆけない・・・・・
貴方の掌の上でしか鳴けない・・・いつの間にかそう思うようになっていた。」
伏していた身を起こして言った。
「貴方から離れなければならない時が来たわ・・・。何も言わずにその手で殺して。最後の慈悲を・・・・」
「・・・・・話を聞いたのか・・・・・」
「・・・・・ええ・・・。アイシスを正妃に。ヒッタイト皇女を第二妃に。他にも複数の女性が後宮に納められると。
・・・・・そう聞いているわ・・・・・」
「形式だけだ。私が愛しているのはお前だけ・・・・」
キャロルが力なく笑った。
「私が愛しているのは貴方だけ・・・・でも、そう思うのは私だけではないわ・・・・
地位や身分に関係なく貴方だけを愛する女性が他にいないと、どうしてそう言い切れるの?
私は、その人と貴方が並んで立つ姿を笑ってみていられるほど強くないの。そして貴方の横に立てるほど
自分に誇れるものを持たない・・・」
黙ってしまったファラオに、キャロルはぽつぽつと喋る。
「今は未だ良い・・・。でも私も女。いずれ貴方を誰にも渡したくないと嫉妬に狂い、他の女性の血でこの手を染める日が来る。
このまま何も知らず、貴方に溺れていたかった・・・でも女は変わるわ・・・。聖蛇にも悪蛇にも。
・・・だって今でさえ、貴方を誰にも取られたくないなんて馬鹿なことを思っている・・・・・・・・もう直ぐ限界が来る・・・」
「そうか・・・お前の気持ちに気付いてやれなかったのは私の慢心ゆえか・・・」
キャロルがかぶりを振った。
「隠してきたから。わざと嫌がり、抱かれることを拒み、貴方を拒絶したから。
貴方を拒む限り、貴方が私に興味を持ってくれるだろうと思ったの。
だけどもし私が子供を生んだら・・・いいえ、そうじゃなくて、貴方を愛したら自分がどうなってしまうかが恐ろしかった。
浅ましく劣情に狂い、最後には貴方の愛まで失う、きっとそうなる・・・私は卑怯者なの。」
声を震わせながら懇願する。
「何時も自分に都合の良いことしか考えていない。貴方にはもっと相応しい女性がいるわ。
中身の伴わない『ナイルの娘』に押し潰されてしまった私なんかじゃなく、自分に対して胸を張れる女性が・・・・
だから殺して。私を愛しているなら、どうかその手で、その剣で。」
輝く黄金の髪を片手で纏め、白い項を露わにする。
そして細い首を差し出し、いつの間にか己の心を捕らえた愛する男の掌に、己の命を載せた。
ファラオが黙って見つめている。永い永い沈黙のあとに声が聞こえた。
同時に温かい腕がキャロルの肢体を抱き締める。
「では・・・殺してやろう。お前が狂気に堕ちてしまわぬうちに・・・・・この手で・・・・・
その瞳に最後まで私を映せ。私の心を抱いて先に逝くが良い。私も直ぐに逝く。・・・・・良いな?」
「い・・・いらないわ・・・・」
「お前の最後の願いを聞いてやるのだ・・・・わたしの願いを聞いてくれても良いだろう・・・」
「・・・・・・有り難う・・・たとえ嘘でも嬉しいわ・・・・・」
白い肢体を褥に押し倒し、男がしっかりと抱き締める。顎を捉え、深く深く口付けてお互いの心まで貪りつくすように舌を絡める。
放しては口付け、角度を変え、喘ぎながらお互いに溺れてゆく。
「メンフィス・・・メンフィス・・・」
「キャロル・・・・お前だけを・・・・・愛しているのだ・・・・」
唇が項を滑る。幾つも紅い花びらを散らしながら男が囁く。
何時もは嫌がるキャロルが、白い肌に残る痕を感じて悦びの声を漏らす。
「貴方だけしか・・・・見ないの・・・・貴方だけしか・・・愛さない・・・決して・・・・・決して・・・・・」
静かな暖かい愛撫と囁き。喘ぎ声と呻き。
白い肌に顔を埋めていた男が再びキャロルを抱き締める。
「我慢出来ぬ・・・・」
「わたしも・・・・来て・・・・・」
そして悦びの声を上げながら男と女が一つになる。
暖かく蕩けた中を、少しでも深く味わおうとして男が奥へと進んでゆく。
女が少しでも感じようとして男のものにしがみ付く。
ゆっくりゆっくり。二人して揺れながらお互いだけをその瞳に映し、嬌声と喘ぎを交わらせながら徐々に上り詰めてゆく。
「よいか・・・・・?」
「ええ・・・・・」
男の動きが早くなる、白い尻が踊って高い水音と共に褥に蜜を溢れ零す。
唇が合わさる。啄むような軽い音。繰り返し繰り返し、メンフィスはキャロルに口付けを与えた。それが徐々に深くなる。
キャロルが強請る。
「あ・・・あ・キス・して・もっと・もっと・もっと・・・・・っ」
白い腕を逞しい腕に回してキャロルが強請る。もっともっと。最後のキスを。
褐色の両手が細く白い首に掛かった。
鈍い音が褥に響く。
上り詰めた白い肢体が痙攣して、最後の息と共に力を失う。
己の両手に力を込めた瞬間、キャロルが微笑んでくれたように見えた。
「こん・・・ど・・・うまれ・・・・てくる・・・・・ときは・・・おんなには・・・・・なら・・・・・な・・・・・・・・・」
END
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