昔話風楊呂/禁なし/お題:5(手に手を)/チビ呂望なのでゴ注意
-肖望-

※呂望が8歳なのでショタちっくです。
※性的描写はございません(裏なのにすみません)が、暗喩を性的に考えると色々とやらしいかもです。
※楊ゼン・呂望とも一応原作設定ですが、呂望-4歳と言う事もあり…
※色々とおかしいです。
※苦手な方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
昔話風楊呂
 
 
 
 
 
 
 
 
 
中国の広い広い夜空に、大きな満月に引き連れられた星々がゆっくりと輝き、地表の青草を照らし出している。
その夜空と同じほどに広く広がる草原のど真ん中には、まるで静かな海夜を漂っている棺桶の様に、夜風にそよぐ草原の腹に木造の箱がぽつんと置かれていた。
 
箱の前には、動物の脂で小さく燃える火が二つ。その間には美味しそうな匂いのする酒の入った大瓶が一つと、酒の肴が盛られた皿がいくつか並べられている。
 
表面に仰々しい筆遣いで何か描かれている棺おけの様な箱の中には、白い服を着た身丈の小さな少年が、更に小さくなって縮こまり、震えている。
 
暫く木箱の周りには、草の囁く声と少年の息遣いだけが小さく音を響かせていた。
 
途端、風が吹いたかと思うと、気配が一つ増えた。さくりさくりと草を踏む音に少年は、あぁついにこの時がやってきたのだと、恐怖に軋むからだを抑えるように震える両手を強く握り合わせると、閉じた目の奥に、大切だった両親や兄弟、大好きだった村の皆の顔を必死に映し出した。
 
最後にあの沼で出会った青年の顔を思い出すと、くすりと小さく笑い、心の中で呟いた。
 
「信じてたのに…だめだったんだ…」
 
そして覚悟を決めたかのように、見えない空をぐっと仰いだ。
 
 
 
 
*****
 
 
 
 
「近くの林の奥には行くな。奥にある沼には主がいる。主は人を惑わす美しい姿をしていてな、近寄ると主は大きな大蛇の姿を現して、そして近づいた者を沼に引きずりこんで食べてしまうんだ」
「はーい」
 
メエメエと鳴く羊達が取り囲んだ集落のど真ん中で、子供達の元気な声が響き渡った。指を立てて子供達を戒めていた姜族の統領は、子供達の顔を見渡すと、首を傾げた。
 
「望はどこだ?」
 
子供達は口々に「知らない」、「そう言えばずっと見ていない」等と隣の子供と顔を合わせ口々に言った。
 
「望…まさか…」
 
 
統領の末息子である呂望は、なんとその大蛇がいると言われている沼の淵で、そんな話は知る由も無く、うずくまって小さく泣いていた。呂望が身を置いていた姜族は、普段草原を移動して暮らしていた為、初めて足を踏み入れた雑木林の動物や植物に夢中になってしまい、挙句の果てには帰り道が判らなくなってしまったのである。
 
「ひっく…とうさま…にーさまぁ…」
 
心細さに泣きじゃくっていると、どこから現れたのか、長身で髪の青い青年が、呂望に声を掛けてくれた。
 
「こんなところで…どうしたの?」
「とうさまの所に帰りたい…」
「じゃぁ、連れて帰ってあげる。だからもう泣かないで」
「ほんとう?」
 
呂望が顔をあげると、しゃがんでいた青年は優しく微笑んだ。
青年が沼のほとりに咲いていた珍しい花を取って、呂望に持たせてやる。
 
「ほら、父様の所へ帰ろうね」
「うん」
 
頷いた呂望は、差し出された青年の大きな手を握ると、ゆっくり立ち上がった。
青年の手は、父親や兄弟の手の温もりとは少し違った様に感じられた。
 
呂望と青年は、村に帰る道すがら、花を摘んだり甘い実を取って食べたりと、日が沈む頃にはすっかり仲良くなっていた。
 
そろそろ林が切れる辺りに差し掛かると、遠くから父親の呂望を探し呼ぶ声が聞こえてきた。
 
「望〜〜!…呂望〜〜!」
「あっ!とーさまの声!」
 
呂望は繋いでいた手を離すと、声のする方へ走り出した。
するりと抜けていってしまった手を、青年は慌てて駆け寄り握り捕まえた。びっくりした呂望が青年の顔を見上げると、青年はとても悲しそうな顔をしていた。
 
「どうしたの?一緒に行こう?」
「僕は…一緒に行けないんだ…」
「どうして?」
「…でも、もっと僕と一緒に…」
 
青年は、初めて会った人間の子供の呂望が余りにもかわいくて、父親の元に帰そうと思っていたが、いつのまにか手放したくなくなってしまっていたのだ。
呂望は困ってしまいながらも、青年の手を両手で握ってこう言った。
 
「また、一緒に遊ぼ?」
 
言い終わる頃、背後から父親が現れた。
 
「呂望!こんなところにいたのか!」
「とうさま…」
 
青年はいつの間にか忽然と姿を消していた。父親は、呂望の足元に沼のほとりにしか生えない花が落ちているのを見つけて青ざめた。
 
「呂望…この奥の沼に行ったのか?」
「うん」
「いいか望…沼にはな…」
 
呂望は父親に沼の主の話を聞いて、今日助けてくれた青年がそうなのかもしれないと思ったが、あの優しい青年がそんな事をするようには見えなかった。
 
「もう沼には行っては、駄目だ」
 
そう言われた呂望であったが、次の日も、またその次の日も、沼のほとりの青年に逢いに行った。
 
やがて二人は「楊ゼン」「呂望」と、互いの名を呼び合うほどに、更に仲良くなっていった。
 
 
 
 
*****
 
 
 
ぱしゃん、と沼に入れた足で沼の水を蹴る。
楊ゼンの隣で一緒に足を沼に入れていた呂望は、楊ゼンの足から頭の先まで繁々と見つめた。
 
すらりと伸びた素足は美しく、髪は綺麗な空の色をしていて、更に整った顔。そして優しくも妖しげに届く甘く澄んだ声は、まるで父親に聞いた大蛇の妖怪を連想させた。
 
この綺麗な二本の足がくっついて、大蛇のしっぽになるのだろうか?
 
今日も沼に遊びに来ていた呂望は、青年が何者なのか気になって聞いてみた。
 
「楊ゼンは、ここに住んでるの?」
 
楊ゼンが答えに戸惑っていたので、呂望は父親に聞いた沼の主の事を楊ゼンに話した。
楊ゼンは笑いながら「違うよ」と言った。
 
「じゃぁどこからきてるの?」
 
楊ゼンはまた、答えに困りながらも言った。
 
「僕はね、空の上に住んでるんだよ。そこからここに着ているんだ」
「楊ゼンは空の神様なの?」
「…まぁ、そんな所かな」
「すごい!…じゃぁ、望がどこの草原に行っても、望に逢いにこれるね」
「そうだね…でも、僕はもっと望と一緒にいたいよ」
「望も、もっともっと楊ゼンと一緒がいい」
 
 
かわいいなぁ。
どうしてこんなにかわいいのだろう。
 
楊ゼンは、呂望を自分だけのものにしたくなった。
村に帰る呂望の背中を見ては、何度もこのまま攫ってしまおうかと考えた。だが、それは出来なかった。
 
 
 
 
*****
 
 
 
 
時は過ぎ、沼のほとりには別な花が咲くようになった頃の、ある日の事。
呂望の表情はいつになく曇りがちであった。楊ゼンが心配して尋ねると、呂望はこう言った。
 
「もう…望はここにはこれないんだ」
「どうして?」
「望はね、明日の夜…羊の神様のいけにえになるんだって」
「えっ…生贄に?」
「とうさまが言ってたの、羊の神様の使いが来て、統領の末息子を羊の神様のお嫁さんによこさないと、村の羊に悪い病気を持ってくるぞって…」
「そんな…」
「だから、もう楊ゼンに……今日はね、お別れを言いに来たの。今まで楽しかっ…」
 
楊ゼンはたまらず呂望の肩を掴み、言った。
 
「僕と一緒に逃げましょう?貴方が生贄になる必要なんて…」
 
呂望はそう言う楊ゼンを真っ直ぐ見つめて、首をゆっくり横に振った。
 
「怖い…から楊ゼンと一緒に逃げたい…でも、望が逃げたら羊達が苦しんじゃう…それに羊が死んじゃったら、父様や母様や兄さま…村の人達が生活できなくなっちゃうから…」
 
「じゃぁ、僕が羊の神様に何とかしてくれるように頼んできてあげるから…大丈夫、空の神様と羊の神様は仲がいいんだよ…だから安心して…」
「楊ゼン…ありがとう」
 
呂望は楊ゼンの胸に顔をそっと埋めると、小さな涙を一粒落とした。
 
「望…同じ神様なら…羊の神様より楊ゼンのお嫁さんになりたかった…」
「呂望…」
 
楊ゼンは、愛しさと慈しみに震えた手を、呂望の背中に回し、そして優しく撫でた。
 
 
 
 
*****
 
 
 
 
楊ゼンは望を見送ると、哮天犬を出し、急いでもうすっかり赤く染まった空へ飛んだ。
 
「羊の神様なんていただろうか…」
 
所がまる一日いくら探しても、羊の神様なんてものは居なかった。さては悪い妖怪が、人間を騙して呂望を奪い取るつもりなのだろう。
 
「あんな可愛い子を生贄にだなんて許せない…絶対に許さない…例え神様だったとしても…殺してでも、呂望を助けだしてやる」
 
 
楊ゼンは洞府に戻り、三尖刀を持つと、元始天尊の居る崑崙山玉虚宮へと向かった。呼ぼうとしていた師匠である玉鼎真人も何故か丁度その場に居た。
 
「楊ゼン…丁度お主にわしらからも話しがあったのだ…まぁ良い、お主から先に話すがよい」
 
楊ゼンは深々と頭を下げた。
 
「はい、元始天尊様…僕は、元始天尊様や玉鼎真人師匠に教え授けて頂いた技で、殺生の罪を犯してしまうかもしれません。それには訳があり、お赦しを請いに来ました。どうか…」
 
「楊ゼン、最近私の目を盗んで外に出ていると思ったらそんな事…一体人間界で何をしていたんだ」
 
玉鼎真人が心配そうな顔で楊ゼンに問う。
元始天尊は眉の下で目を細めて言った。
 
「まぁまて玉鼎……ふむ、禁じられている殺生の罪を犯してまで…訳を話してみい」
 
楊ゼンは、親しくなった呂望のこと、村の人たちが居もしない羊の神様と名乗る妖怪に騙されて、呂望を生贄に出してしまう事を詳しく話した。
 
「妖怪を退治して、その少年と村を救いたいと思っております。…しかし、手に余り殺してしまうかもしれません」
 
じっと聞いていた元始天尊から返ってきた答えは意外なものであった。
 
「楊ゼン…お主にその妖怪は倒せまい」
「…はい?」
 
元始天尊を除いて、崑崙山で一番だと自信を持っていた楊ゼンは、眉をしかめた。
 
「無理だと言っておるのだ、何せその羊の神様というのは、お主という事になるのだからのう」
「は?何を仰って…」
「さて…ここからはわしの話じゃ。楊ゼン、お主に命を授ける。今夜はその姜の村まで行って、羊の神様っぽく変化して、その生贄の少年をここまで連れて帰ってくるのじゃ」
 
訳が判らないという表情をした楊ゼンに、元始天尊は続けた。
 
「数十年前にのう、姜の村人に仙人骨を持つ者が居て…わしが直々スカウトしに行ったのじゃが…あの村の者ども、仙人など居ない、新手の人狩りだと言ってその者を連れて行かせなんだ。しまいにはこのわしに槍を向けおっての。今回は取り逃がしたくない人材じゃからの、少し荒っぽいやり方じゃがこうする事にした。ま、その呂望という少年には後で家族に手紙でも書かせよう」
 
話を聞いて、張り詰めていた楊ゼンの表情が少し緩んだ。
 
「じゃぁ、呂望には仙人骨があったのですね?」
「そうじゃ」
 
じっと聞いていた玉鼎真人は、安心した風に言った。
 
「良かったな楊ゼン…それにもっといい話があるぞ?その少年をお前の弟子にしようと元始と二人で話をしていたのだよ」
「僕の弟子に?」
「あぁ、そろそろお前も一人前だ。弟子の一人でももった方がいいと…」
 
呂望とこれからずっと一緒に居られる。そう思い嬉しさが表情から零れそうになった瞬間、元始が口を開いた。
 
 
「じゃが楊ゼン…お主はわしや玉鼎の目を盗んで勝手に何度も人間界に遊びに行っておったな?…入山する予定であった子とは言え人間の子と関係を持ちおって…それの罰をお主に与えなければならぬのう。それに、師弟の関係を築く前に、既に別な関係を作り上げてしまったようじゃしのぅ。やはりわしの弟子にした方が良いのかもしれぬ」
 
「元始様お願いです。どうか僕に呂望を…」
「…駄目じゃ」
「お願いです…」
 
元始は少し目を閉じて考えると、面白い事を思いついたと言わんばかりに言った。
 
「よし、じゃぁこうしよう。お主が妖怪である本当の姿で呂望を迎えに行く。お主は自分が楊ゼンである事は一切喋ってはならぬ。もし呂望が妖怪の姿であるお主をお主であると気づく事が出来たら、呂望を弟子としてお主にやろう。だが、もし呂望がお主と判らなかったり、お主がそうである事を喋ってしまったら…」
 
そう言い掛けた所で玉鼎が口を挟んだ。
 
「そんな…元始様、楊ゼンは私と元始様以外に本当の姿を今まで見せた事が無いのですよ?人間の子の前、しかも禁じられているとはいえ親しくなった子にいきなり…楊ゼンがかわいそうです」
 
元始はそんな玉鼎を無視し「いいからさっさと行ってこい。ちゃんと見てるからな」と言って楊ゼンを玉虚宮から追い出した。
 
 
 
 
*****
 
 
 
 
すっかり日の落ちた人間界の空を、楊ゼンは不安の気持ちを抱えながら飛んでいた。
 
「呂望は…気付いてくれるだろうか」
 
自分の本当の姿に。大きく突き出た角に、大きな身体、まさに妖怪であるような手。この姿から、あの逢っていた時の自分の姿を見出してはくれぬだろう。きっと怖がって泣くだろう。僕だと知っても、本当の僕の姿を恐ろしいと思うだろう。
どうせなら、あの時攫って、僕だけのものにすれば良かった。そう心の中で思った。
 
 
姜の村の方向へ飛んでいくと、小さな明かりと共に、大きな木造りの箱が見えた。かわいそうに、あの箱の中に呂望がいるのだろう。
楊ゼンは近くに降りると、箱にゆっくりと近づいて、思い切ってその箱を開けた。
 
「あっ…」
 
箱の中の呂望は妖怪の姿をしている楊ゼンを見ると、びっくりした様にガタッと音を立てて箱に身体をぶつけた。そして震える体で姿勢を但し、手を合わせて言った。
 
「お願いです、羊の神様…僕のことはどうとしてもいいです、だから村の羊と村の人を…どうか…どうか…」
 
呂望のこんな姿に、楊ゼンは思わず抱きしめて名前を呼んでしまいそうになった。がしかし、元始との約束を思い出し、ぐっと堪えた。連れて行こうと手を伸ばすと、呂望は怯え、更に身体を震わせ、目を貝の様に堅く閉じた。
 
やはり、僕とは気付いてくれなかった。楊ゼンは落胆と共に呂望の手をきゅっと掴んだ。
 
「……あ…」
 
その途端、楊ゼンの手に伝わっていた呂望の身体の震えが止まった。
 
「楊…ぜん?」
 
思いもかけず名前を呼ばれた楊ゼンは、驚いてその手を離した。呂望は箱から飛び出すと、一寸の恐れも見せずに妖怪の姿の楊ゼンに抱きついた。
 
「楊ゼン…!やっぱり助けに…羊の神様にお願いしてくれたの?怒られなかった?こらしめられなかった?どこも怪我してない?」
 
……嘘だ…。と心の中で呟く楊ゼンは、余りの展開に固まってしまった。
 
「楊ゼン?…どうしたの?…ねぇ……喋れなくなっちゃったの…?もしかして望のせい?神様に声を取られちゃったの?」
 
暫し沈黙が流れた後、楊ゼンの頭の中で元始の声がした。
 
「もういいからそのまま連れて戻って来い。約束どおり呂望はお主の弟子にしてやる。訳はお主から話しておいてやれ」
 
楊ゼンはその声にはっとすると、ずっと呼びかけたかった名前を呼んだ。
 
「呂望…」
「楊ゼン!!」
 
今にも泣き出しそうだった呂望は、大きな声でわんわん泣き出し、「良かった」と言っては何度も楊ゼンに抱き付いた。
 
「ねぇ呂望、どうして僕だって判ったの?」
 
呂望は考える間もなく答えた。
 
「楊ゼンの手だったんだもん」
「僕の手…?でも、全然違うよね?」
 
そう言って呂望に妖怪である自分の大きな手を見せた。
 
「うん、でも直ぐにわかったよ?」
 
そう言う呂望に不思議そうに首を傾げた楊ゼンであったが、もうそんな事はどうでも良いと思った。
 
「ねぇねぇ楊ゼン…この姿…楊ゼンのほんとうの姿?」
「そうだよ…僕の本当の姿…怖いでしょう?」
「ううん、全然怖くないよ。本当の神様みたいでかっこいいよ?…それに…楊ゼンだもん!」
 
余りの嬉しさと照れくささに、楊ゼンは「そっか」とだけ言い、やがて落ち着いた呂望を哮天犬に乗せ、崑崙山を目指してゆっくりと飛び上がった。
 
 
こんな事があって、二人はより一層仲良くなり、数年後には「崑崙で一番仲のいい師弟」として、ずっとずっと一緒に幸せに暮らしましたとさ。
 
めでたしめでたし。
 
 
 
 
 
いい師匠、いい弟子とめぐり合った二人は実力を付け、
数十年後、一緒に封神計画を任された話はまた別のお話…。
 
 
 
 
 
 
 
おしまい
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裏なのに裏内容じゃなくてすみませんっ!エロい描写はないのですが、
呂望がショタショタしいので裏に投稿させて頂きました。
しかしお題が掠る程度&突っ込み所多すぎで申し訳ないです(ああ…
 






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