どうやら、振り下ろした拳に力を込めすぎたみたいで。
 私の膝に頭を乗せているギルは、すっかり伸びてしまっていた。
「何よ、情けないわね」
 オレンジの髪の毛を弄りながら呟く。もちろん返事なんてない。

「ヴィディア、頼み事があるんだ」
「えっ、私に?」
 レイジに――しかも個人的にお願いされるなんて珍しい。いつもギルに相談するのに、私を頼ってくれたのが凄く嬉しくて。何何、と思わず擦り寄って。
 そしたら。
「ギルに、膝枕をしてやってほしんだ」
 この時ばかりは、「レイジの馬鹿!」って叫びたかった。でも、やっぱりそんな事は出来ないのよね。だって、その顔はとても真剣。真面目に頼み事をしているレイジに、そんな言葉をぶつけられるワケないもの。
「ギルの奴、仕事しっぱなしだろ? だから、たまには休ませてやりたくてさ…」
 嗚呼…どうして貴方はそんなにギルを気にかけるの。
「ヴィディアなら付き合い長いし、ギルも安心できると思うんだ」
 嗚呼…どうしてその笑顔を純粋に私に向けてくれないの。
「女性に頼む事ではないと分かっているけど…頼むよヴィディア」
 嗚呼……レイジの馬鹿!いっつもギルギルギルギルって!
 それでも、やっぱり断れなくて。大好きなレイジの頼み事だもの。
「分かったわ。任せて」
 精一杯の笑顔で、私は頷いた―――

 気が付いたらぷちっ、とオレンジの髪の毛が数本抜けてた。でも失神してるギルは起きる気配なんてなくて。
 丁度いいから、憂さ晴らしに悪戯しちゃおう。



何かちょっと補足的な感じになっちゃいました。
幼馴染3人で一人はぶりってツライですよねぇ



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