「よいこらせ、っと…」
「これで全部だね。でも、ホントに持てるのかい?」
聖夜の訪れた冬のある日。
ダリア・ビアーの一角で、何やら男女のヒソヒソ話が聞こえてくる。
「ははは…これでも大の大人だ。任せてくれ」
再びよいこらせ、という掛け声がかかって…
………。
「…誰か人手増やそうか?」
「い、いや…大丈夫だ…」
男の声と共に、何やら不気味な音が響き始める。
ズリッ、ズリッ、と。
どうにも怪談めいた音が。
【僕らの撲殺寸前クリスマス 〜ダリア・ビアー編〜】
ズリッ、ズリッ、ズリッ。
「………」
ズリッ、ズリッ、ズリッ。
謎の音に目を覚ましたエクサルは、我が耳を疑った。
ズリッ、ズリッ、ズリッ。
「ちょ…おい、カイン。カイン!」
堪りかねたエクサルは、隣のベッドで大絶賛熟睡中のカインを起こしにかかった。
流石に時間帯を考えて小声で。
しかし趣味が昼寝らしい彼は、その凄まじいまでの鈍感力のお陰か起きる気配が無い。
そんな間にも音は段々と近付いてくる。
ズリッ、ズリッ、ズリッ。
「起きろってカイン! オイコラ! カーイーンー!!」
半ばパニック状態のエクサルは、声こそ小さいものの物凄い勢いでカインの体を揺さぶる。ちょっと半泣きだ。
「う…ん? どしたの、えくさる…」
「どうかしたのは俺じゃなくて。外。外の音だよ…」
「そと…?」
明らかに寝ぼけた声で、ボンヤリと視線をドアに向ける。
「何か引きずる音ですね」
「うわっ」
エクサルは勢いよく声のした方を見た。そこにはいつの間にか起きていたらしいキロタが。
光を反射していた眼鏡に驚いて、思わず悲鳴を上げそうになったのは秘密だ。
「重たいものだな…死体でも引きずってきたか」
これまたいつの間にか起きていたらしいザイオンがニヤリと笑う。
「や、やめてよザイオン。だとしても、何でそんなものがこんな所に…」
「そんなもの、相場は決まってるだろ。ゆうれ…」
「わーッ! それ以上言うな! 言わないでくれっ!」
思わず耳を塞ぐエクサル。それを見たザイオンは更に面白そうに口角を引き上げた。
カインは「あぁ、そっか」と苦笑する。
「エクサルは苦手なんだっけ。ゆうれ…」
「だから言うなって!」
勢いよくカインの口を塞ぎながら、半ば叫ぶようにして言う。
「でも、こんな夜に怪しいですね」
「…そろそろ来るな」
「うえぇぇぇ…」
「エクサル、しっかり」
キロタは銃を、ザイオンは斧を持ち、エクサルは情けない顔で拳を握り、カインは剣を鞘からそっと引き抜いた。
そして。
ズリッ、ズリッ…
………ガチャ。
「今だ!」
キロタが引金を引き、
「食らえッ」
ザイオンが斧を振り下ろし、
「えぇえいっ!」
カインが剣を薙ぎ、
「うああぁぁぁーもうどうにでもなれえぇぇぇー!!」
エクサルが半泣きで殴る蹴るの大暴走。
ドサッ。
「あ」
「お」
「あ――!」
「…あれ?」
床に倒れていたのは…
「だっ、大丈夫ヨハネ!?」
哀れ、サンタの格好をした仮面の天使だったとさ。
クリスマスですが、ヨハネさんボコられSSでお送り致しました。
タイトルコールはBSのカイン口調なイメージでお願いします。(笑)
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