どうしてこんなことになったのだろう?
押し寄せる快楽の波に、スナコは意識が飛びそうだった。
いや、飛んだほうが楽なのかもしれない。しかし何度その時が来ても、一人の男によって呼び戻されるのだ。
今だって・・・。頬を軽くペチペチと叩かれた。
「おい・・・落ちんなよ?」
ネクタイの目隠しが涙で濡れて気持ち悪い。肌にべたべたとまとわりつく。
『いやだわ、かぶれるかも・・・』
関係のないことを考えて、気を紛らわそうとしたが無駄だったようだ。またもこの男の手によってわけもわからない快感に攫われる。
どうしてこんなことになったのだろう?
記憶をたどるスナコ。自分は悪いことはしてないはず。そう、
この人がまた風邪をひいて、それで看病するように言われて、そして
その一言に正直に答えたんだ。
それだけ?他に何か気に障ることでもしなかった?
いくら自分に問い掛けても、答えが帰ってこないどころか、男の愛撫は止まらない。
「お前・・・体、綺麗な。」
高野恭平の一挙一動に反応している自分がいる。
「っ!・・・み・・・見ないでっ・・・・・・!はなし・・・て・・・・・・、」
精一杯口を動かしてやっと出た言葉。・・・情けない。スナコはそう思った。
恭平はしばし考えると近くにあったネクタイで目隠しをした。この男の姿を見ない分、落ちられる確立が減ってしまった。タチの悪い・・・。
自分はいったい何なのだろう?今私は玩ばれてる?それとも愛されてる?
なら前者か。
再び恭平に口付けされる。
彼はいつの日かこんなことを言った。
「愛がなければ意味がない」
よく言えたものだ。
すでに抵抗をする気力も力もないスナコは、ただされるがままであった。
―――――――――――――――――――――――・・・・・・いったいどのくらいの時がたったろう?
言いようのない異物感と、下半身の鈍痛でスナコは涙をぽろぽろと流した。
「っひ・・・ぃ痛い・・・!!!」
苦しげな嗚咽は止まる事無く、唇は噛み締めすぎて血がうっすら滲んでいた。
恭平はネクタイを取った。もう顔を見ても何をしても気絶・鼻血どころではないだろう。
と、思ったのも事実だが、理由はもう1つあった。
どうしてもスナコの表情がみたくなったのだ。
単純な理由だが恭平はどうしても我慢できなかった。
ただ愛しくて、我慢できなくなった。それだけだ。
長い睫が濡れて輝いている。頬が羞恥心からか薔薇色に、唇が血で滲んで赤く染まっている。
普段見れないその苦しげな表情は恭平を煽るには十分だった。
さらに恭平は自身を深く沈ませた。
「ぅ・・・っぁ!」
恭平が動くたびに彼女は身を捩じらせ悶えた。
汗ばんだ肌が手に吸い付くようで気持ちいいと思った。
「おい・・・動くぞ」
耳元で囁く。
ビクッ! と、スナコが大きく震えた。
腰を動かそうとする。が、中がきつくて動けない。
小さく舌打ちすると、恭平は再びスナコの耳元に顔を近づけて囁いた。
「力抜け」
低い甘い声に身が震える。
「〜〜〜!!」
余計締め付けられ、恭平は逆効果であったと悟る。
どうしたものか・・・と少し考えてみる。そしてふと閃いた。
「ひゃぁっ!!」
耳に奇妙な快感が走った。
舐められたのだ。中を。
全身の力が一瞬抜けた。と同時に恭平が腰を進めてきた。
もうスナコは何がなんだかわからなくなっていた。
恭平自身を打ち付けられるたび痛さと共に快感が走った。
口が勝手に半開きになる。
「ふっ、ぁ、や・・・ひ、ぁあ!」
耳に入る高い声が自分の声じゃないようだ。
気がつけばスナコは、恭平の前の肌蹴たパジャマを縋りつくように握っていた。
口を口で塞がれる。
恭平の舌が入ってくる。
甘美な刺激に頭がおかしくなりそうだった。
「ん・・・ふぅ・・・」
唇が離れると同時に喘ぎ声が漏れた。
恭平が聞こえるか聞こえないかという声で何かいった。
だがスナコには聞こえなかった。
頭の中が真っ白になり、何も考えられなかった。。
―――――――――――――――――――――――・・・・・・いったいどのくらいの時がたったろう?
言いようのない身の重さでスナコはだるそうに目を覚ました。
そして何より腰が痛い。
ふと誰かに抱きしめられているのがわかった。
恭平だ。恭平の胸板が今目の前いにあるのだ。
思わず鼻血を噴きそうになる。と、その前に自分の状態に気付いた。
真っ裸だ。何も着ていない。
そのままスナコは石化した。そして五分ほどで全てを把握した。
『夢?あれは夢?じゃあこの状況は?顔から火が出そう・・・。この男、いつか殺してやる!!』
そこまで考えた所でふとキスをしたことが鮮明に思い出された。
回らない口で小さくぼそぼそ呟く。
「あれは愛がない、だから意味がない、あの行為も愛がない、だからあの行為も意味がない、あれは愛が(以下続く」
恭平は起きていた。もちろんこの独り言も聞こえていた。
「・・・愛あるっつーの・・・。」
また聞こえるか聞こえないかという声で呟いた。
もちろんガクガクブルブルしているスナコには聞こえてなどいなかった。