whiteout


 目覚めたら一面の白銀世界

 映画のようなその景色

 眩しくて目が眩む異次元だね


  「・・・もう、朝・・・か」
  渋沢は、時計に手を伸ばし時間を確認する。
  時計の針は6時半を指していた。
  「・・・寒・・・」
  あたたかい布団から抜け出して、
  渋沢は思わず身震いする。
  「今日、何度だ・・・?」
  何を思ったのか三上が突然買ってきた
  窓際にかけてある温度計の方に行き、
  それを見て渋沢は、はぁ、と息を吐いた。
  「4度って・・・この様子じゃ外、雪じゃないのか・・・?」
  人が居た部屋でさえその温度なので、渋沢はそう思う。
  その時、自分の隣のベッドで、寝返りを打つ音が聞こえた。
  そのまままた寝息を立て始める三上を
  渋沢は微笑ましく思いつつ苦笑して、彼の方に近づく。
  「・・・三上。起きろ。朝だぞ」
  云って身体を少し揺らしてやると、三上は小さくうめいた。
  「ん・・・」
  「ほら、三上」
  「・・・んー・・・後五分」
  「ダメだって。遅れるぞ?」
  「うー・・・」
  三上が半眼で渋沢を睨むが、渋沢には通じない。
  渋沢はにっこりと笑った。
  「おはよう、三上」
  「・・・はよ・・・」
  眠そうに目を擦る三上。
  そんな姿を見れるのは自分だけの特権だと、
  渋沢は思い嬉しくなる。
  「・・・さみぃ・・・」
  「そりゃぁ、温度が温度だからな。
  ・・・この様子だと雪が降ってるかもしれないぞ?」
  「マジ!?」
  がばっと三上が起きあがる。
  驚きつつも渋沢は頷いた。
  「俺雪ってあんま見たことないんだよなー」
  云いつつ布団から抜け出て窓の方へと向かう。
  カーテンを中途半端に開け、窓を開ける。
  窓から見えたのは、一面の、白銀世界。
  「うわー・・・すげー・・・真っ白じゃん!!
  ・・・なんか映画見てるみたい・・・」
  「・・・たしかに、凄いな・・・」
  三上の横に立って、渋沢が返事を返す。
  雪が、光を反射して、きらきらと輝いている。
  「眩し・・・でもやっぱ綺麗なー」
  目を細めて三上がそう呟くのを、
  視界の隅で捕らえた渋沢は小さく笑った。
  「そうだな」
  そうやって、雪を見ている三上のほうが綺麗だけど。
  渋沢は心の中でそう付け足した。


 後数時間で人の足に乱され

 その美しい姿が変わる

 繰り返し ほらまた汚されていく


  急に部屋のドアが開いて元気な声が聞こえてくる。
  「三上先輩!キャプテン!おはよーございます!!」
  「誠二!ノックくらいしなよ!!」
  「ったく・・・お前には学習能力が無いのか?藤代」
  三上が振り返って、呆れた様子で云うと、藤代はぶーっと膨れた。
  「先輩、俺の事バカにしてるでしょ!?」
  「バカをバカといって何が悪い」
  「ひどっ!!」
  「まぁまぁ。それよりも飯食べに行かないか?」
  喧嘩口調になってしまった二人の間に渋沢が入る。
  三上と藤代はしょうがない、といった様子で静かになった。
  「・・・とりあえず・・・藤代、笠井。おはよう」
  「おはようございます、キャプテン。今日は外雪ですね。
  ・・・この様子だと朝練、ないんじゃないですか?」
  笠井がぺこり、と頭を下げて、それからそう云う。
  渋沢はそれに頷いた。
  「そうだな。運動場も雪で使えないだろうし・・・。
  こんなに降るのも珍しいな」
  「ですね」
  「・・・それより朝メシ・・・」
  ぼそっと藤代が呟くと、笠井は眼を細めて藤代を見た。
  「誠二が最初に話をずらしたんだろ・・・」
  「う・・・」
  「・・・やっぱ藤代には学習能力ねぇ・・・。
  渋沢、行こうぜ?」
  「・・・ああ、そうだな」
  付き合いきれない、という様子で言う三上に、
  賛同するように頷いた渋沢。
  藤代は三上に向かって叫んだ。
  「ああ〜!先輩!迎えに来た恋人を置いていくんですか!?」
  「誰が恋人だ!誰が!!」
  「・・・笠井・・・行こうか」
  「・・・そうですね」
  二人は、諦めに似たため息をついた。


 ねぇ どうして幸福に

 いつの間に悲しみが混ざるの?

 嘘や欲望は何処で真実とつながる?


 「せんぱーいvvv食べたら外行きません?」
 藤代は味噌汁に手をつけながら笑顔で前に座る三上に云う。
 三上は顔をしかめて即答した。
  「イヤ」
  「えー。いいじゃないっすか。雪、綺麗ですよ?」
  「・・・寒いじゃん」
  「俺が暖めてあげますから」
  にっこり、と笑う藤代に、三上は却下、と呟いた。
  「ひどっ!しかも即答っすか!?
  ・・・それが先輩の愛だって言うんですね!!」
  「違うわ!・・・わーったよ。行く。行くから」
  諦めに似た表情で、三上が藤代に言うと、
  藤代はにっこりと笑った。
  「んじゃさっさと食べていきましょ!!」
  「へーへー」
  目の前で交わされる会話に渋沢はため息をついた。
  「なんだよ渋沢。お前も行きたいのか?」
  「・・・いや、そうじゃなくて・・・」
  「遠慮すんなって。一緒に行こうぜ?」
  にやり、と笑って見せると、渋沢はあっさりと頷いた。
  「じゃぁ、遠慮なく」
  「おうよ」
  渋沢と三上が話す様子を、藤代は箸がとめてじっと見ていた。
  顔にはデカデカと「不服」とかいてある。
  笠井は魚の骨をとりながら、藤代に囁いた。
  「・・・誠二・・・早く食べないと置いていかれるよ」
  「ああ!そうだ!!キャプテンと三上先輩を
  二人っきりにしちゃいけない!!」
  「・・・はぁ・・・やっぱり俺もついていったほうがいいのかな・・・」
  大慌てで食事を再開する藤代に、
  笠井はがっくりと肩を落とした。


 自分の中 他人が映る

 他人の中 自分が映る


 
「わたしのなか、きみがいる。
  きみのなか、わたしがいる・・・か」
  雪道を歩きながら、渋沢が呟く。
  視線は前、雪にはしゃぐ藤代と
  それに呆れつつも律儀に付き合っている笠井を見ていた。
  「あ?何それ」
  「whiteoutっていう歌の歌詞」
  「ふーん。珍しいな、お前が歌の歌詞覚えているなんて」
  三上がそう相槌を打つと渋沢は頷いた。
  「なんとなく、俺の心情かなーって思ってな」
  「・・・なんで?」
  「いや、そうあればよかったのに、って」
  三上が俺だけを見てくれていればよかったのに。
  渋沢は心の中でそう付け足した。
  「そっか。大変だな、お前も。
  ま、がんばれよ。応援してるから」
  三上は渋沢の言葉を追及せずそう云って笑った。
  「ああ。無理だけど、頑張ってみるよ」
  「それでこそキャプテンだな」
  口の端で笑って、三上は渋沢の前を歩き出した。
  そして行く藤代に声をかける。
  「藤代!あんまりはしゃぐと転ぶぞ!!」
  「だいじょーぶです!!・・・うわぁっ!」
  藤代は三上に向かって大きく手を振って、滑ってこけた。
  「ぷっ!かっこわりー」
  「誠二全然忠告聞いてないじゃん」
  「いってー・・・」
  笑う三上と、半眼で呆れた表情の笠井。
  打った尻をさすりながら、藤代が呟くと、
  彼に追いついた三上が、手を差し出した。
  「ほら。つかまれよ」
  「先輩!!ありがとうございます」
  嬉しそうにその手に捕まって藤代が立ち上がる。
  その様子を、後ろで見ていた渋沢は小さく笑って。
  それからはしゃぐ後輩と、呆れ表情の後輩と。
  そして自分の好きな人の居る方へ。
  歩き出した。


 生きてる気がしたよ

 変わる筈ない存在

 始められる気がして

 白い世界へ再び歩き出す

 輝きに目が眩む whiteout




++++++++
ということで、やっとこさですがキリリク話UPです。
雪にまつわる話、ということで今回はGARNET CROWのwhiteoutを
元ネタに書きました。・・・マイナーです・・・CW曲だし。
でも好きデス。すっごくかっこいいんですvvv
・・・その感じが、少しでも出せればなー・・・と思って書きました。
ケイカさん、リクに添えてない感じですいません(滝汗)
へっぽこですが、受け取ってやってください。
ホントに報告ありがとうございました。
またよければ踏んでくださいな。
      2002.2.3




御礼の言葉
もう読んだときはVマーク飛ばしマクリでした。
このお話はキリリクで書いていただいたものです。
快く転載許可が頂けたので、
即行でUPさせていただきました。
如月サン、本当にありがとうございますvvv
あんな無茶苦茶なリクですみません!
これからも宜しくお願いしますvv

2002/02/07 UP





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