「蛍華さまー」
広い広い館の中を一心に走っていた。
キョロキョロと見渡しながら、呼んでいるのに目的の人の姿も声もない。
「どこですかー?」
ともにおそとでお花をみたいのに、蛍華さまの姿は見当たらない。
いくつめかわからない扉を開くと、座っている蛍華さまを発見した。
あ、いた!
蛍華さまはこちらに背をむけて椅子に腰かけていた。その手元は見えないが、熱心に何かをみている。
「なにをしてるんですか?」
「本を読んでいるのよ。文遠、どうしたの?」
「蛍華さまとおそとへいきたくてさがしていたんです」
「そうなの。いいわよ。でも、これだけ読んでしまいたいから少し待っていてくれるかしら?」
にっこりほほえんだ蛍華さまがかわいくて、大好きで迷わずうなずいた。
「蛍華さま、いっしょにおそとへいきたいです」
「わかったわ。これが終わるまで大人しく待っていてね」
蛍華さまの目線は、再びその手元へと落ちてしまった。
うずうず。
まだかな、まだかな。
一秒すら待ちきれなくて足が動きだす。
もっと蛍華さまの近くに寄りたくて、そのひざの上によじのぼった。
「蛍華さまー」
「文遠、上に乗っては重いわ。下りて頂戴」
「蛍華さま、きいてください」
蛍華さまを独り占めしている本を、ちょっとどけてそのお顔をのぞきこんだ。
「文遠は蛍華さまとはやくおそとへいきたいんです」
「それはわかったわ。だから少し待っていてほしいの」
再び、蛍華さまを独り占めしはじめた本。
むぅ。
こいつはジャマだ。
蛍華さまの手の中から敵を追い出し、後ろへと放った。
「あ、文遠ったら」
「蛍華さま、こっちをむいてください」
ちょっと眉間にしわを寄せた蛍華さまもかわいくて、その首へ抱きついた。
白いその頬へ唇で触れた。
「文遠は蛍華さまがだいすきです」
「ありがとう、文遠」
・・・懐かしい。
無心に本を読んでいる蛍華の背中を見ていたら、思い出してしまった。
蛍華が本を読み始めるとまわりが入らないのは相変わらずのこと。
いくつになっても変わらないな。
声をかけて、しばらく待っているが、こちらを見てもくれない。
いまだ背を向けたままのあなたに問いたい。あなたの視界に、私はいるのですか、と。
「蛍華」
呼びかけてみたが、肩一つ揺れもしなかった。
その背中を後ろから包み込み、抱きしめてみるが、やはり反応がない。
寂しい。
私がいることを認識していただけているだろうか。
たまらず本を取り上げると、不機嫌そうな顔をした蛍華の瞳があった。
「今いいところなの、返して?文遠」
小首を傾げた蛍華はとてもかわいらしいが、ここで負けるわけにはいかない。
「幼き頃を思い出しました。あの頃、あなたはこうしてよく本をお読みになっていた。あなたにかまってほしくて、私はよくあなたを探していた。探しまわってやっと見つけたのに、あなたは本を読んでいて、待ちきれず私は本を取り上げたことがありましたな」
「そんなこともあったかもしれないわね」
それとどう関係があるのかと聞きたそうだった。
「今の文遠は幼子ではないでしょう?」
「幼子ではありませんが、あなたにかまってほしい気持ちは変わっておりません」
目を見開いて、蛍華の口からため息がこぼれたのが聞こえた。
「文遠」
「おや、いけませんか?」
取り上げた本は、蛍華の手が届かないように後ろへ放った。
あれから16年。大人になったつもりで、己は何も変わってないのかもしれない。
幼かったあの頃のように。
最後までなどやっぱり待ちきれないのだ。
あなたの視界に私を入れていただきたい。
「私は、あの頃からずっと蛍華が大好きですぞ」
「ありがとう、文遠」
愛しい人を抱きしめて、今度は頬ではなく、唇へと愛を送った。
当初は大人の張遼とのシリアス話だったんですが、見た目もかわいい張遼にしたくて5歳児に(笑)
なんかウチにはない空気が漂う作品になりました。
いいな、5歳児張遼。ショタの趣味はないけど。
2019/9/24
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