あるところに 一匹の猫がいました
ある日 猫はとつぜん捨てられてしまいました

鳴いていた猫に 一人の少年が手を差しのべてくれました
猫は幸せになった……はずでした

そう この物語にまだ続きがあったのです














「このまま濡れとったら風邪ひいてまうで?あ、心配せんでもまだ喰ったりせえへんよ」
無理強いは好きやないしと笑う成樹くんにバカと言いながらパンチを一発。
寄っていけという成樹くんのお誘いを断って帰ろうとしたら、遅くなった成樹くんを探しに来た和尚さんと真っ正面からぶつかってしまって。
まだ成樹くんのことを完全に信用したわけじゃないけど、和尚さんに言われて(まるめこまれて)お邪魔させてもらうことになった。





和尚さんのお言葉に甘えてお風呂を貸してもらい、通された先は成樹くんの部屋。
「‥何にもない、のね」
正確には何にもないっていうか余分なものがないのほうが正しい。
男の子の部屋ってみんなこんな風なのかなぁ?
グルリと広くない部屋の中を見回していたら自分の携帯が鳴っていることに気づいた。
そういえばマナーにしたままだったっけ。誰だろ?
ディスプレイを見てみると、表示されてる名前は弟の一馬。
無機質なものなのに、どこか温かさを感じながら私は電話に出た。
「もしもし?」
「あ、姉ちゃん?やっとでた。‥姉ちゃん、今日、俺に黙ってアイツと出かけただろ?」
いつもより1オクターブ下がった声にギクリ。
な、なんで今日のこと知ってるの?
一馬は今日結人くんたちと買い物だったし、お母さんにも黙っててって言ってきたのに。
「そんなことないよ」
一馬は私の言葉を疑っているみたいでしばらく黙っていた。
「…ま、いいや。今どこにいる?まさかアイツの家にいるとか言わないよな?」
「あ、あのね、今、友達のところにいるから心配しなくていいよ」
廊下を見ながらちょっと早口で言った。
成樹くん、頼むから今は戻ってこないで。
後ろめたいことしてるわけじゃないのに、何となく成樹くんのことは一馬に言いたくなかった。
「友達?それって誰?俺、迎えに行くよ」
傘、持っていってないだろと聞かれてまぁと答えを濁した。
「でもいいよ。友達に借りて帰るから」
「わざわざ借りて帰らなくても俺が迎えに行けば済むじゃん。それとも俺が迎えにいったらマズイことでもあるの?」
怪しむように訊かれて答えに詰まる。
外の天気はとても小雨といえる状態じゃなく、歩いて帰れるなんて言えない。
それにたとえ外が帰れる状態でも、まだ服が乾いてないし。
どうしよう。なんか納得させられるような答え考えないと。
「えっと………………きゃあ!」
思わず叫び声を上げてしまった。というのもいつの間にか戻ってきてた成樹くんがいきなり後ろから抱きついたからなんだけど。
び、び、びっくりしたぁ!
「ちょっと、離れて、というか放して」
受話器の口に手を当てて小声で成樹くんの手をパチッと叩く。
「ええやないか〜それより姉ちゃん、めっちゃ抱き心地ええなぁ〜」
ええ匂いするし〜と頬擦りする成樹くんをぐいっと押して、携帯の存在に気づいた。
いつの間にか手を離してた。たぶん、会話聞こえてたよね。
「あの、ゴメンね、一馬」
「‥姉ちゃん、今の声、誰?友達って男なの?」
「うん。そうなの。でもただの友達だから…」
何にもないよと続けようとした私の手の中からいきなり携帯が消えた。
「ちゃうちゃう。友達やのうて彼氏や、カ・レ・シ俺ら今、二人きりでええとこなんや。邪魔せんといて」
な?と成樹くんが悪戯っぽい笑みを私に向ける。
「か、一馬?あのね、違うの。今、草晴寺ってところで二人きりじゃない……一馬?ちょっと一馬!」
奪われた携帯を取り返し、電話の向こうの一馬に叫んだけど一馬からの応答はなし。代わりに無機質なツーツーという音が聞こえるだけ。
「成樹くん!なんであんな冗談‥誤解されるじゃない!」
「‥‥冗談やないって言うたらどないする?」
まるで射抜かれるかのような強い視線。体がこわばって涙が頬を伝った。
うつ向いた私に成樹くんは手を伸ばしてきて、指先が触れたときビクッと体が震えた。私が脅えているのがわかったらしく、成樹くんは苦笑いしたようだった。
「…すまん。怖がらせてしもうたみたいやな。謝るから泣かんといて、な?」
抱きしめてきた成樹くんに私はただ首をたてに振っただけだった。





涙がおさまった後、お互いのことを少し話した。
簡単な自己紹介とかね。だっていつまでも姉ちゃん呼ばれされるのは嫌だし。
いろいろ聞いてて何より驚きだったのは成樹くんが私より年下だってこと。高校生だと思ってたから。
だって成樹くん、中学生に見えないじゃない。
「ま、俺はと違うて見た目も中身も大人やからな〜」
「私だって子どもじゃないわよ!」
なんて成樹くんをどつきながらだんだん話が盛り上がってきてたところだった。
いきなりドアが開いて和尚さんが顔を出し成樹くんの頭に空手チョップを落とした。
「いきなりなにすんねん!」
「シゲ、お前に客じゃと何回言わせるんじゃ!はよせんかい」
叩かれた頭を押さえてちょっとスマンなと言うと成樹くんは出ていった。
お客ってやっぱり友達かな?
ここに来たらどうしよう。絶対に誤解される‥よね。
私の着てる服、成樹くんの服だし。どこかに隠れる?でも…
なんて私が一人であれこれ考えていると、玄関のほうが急に騒がしくなった。
なんだろう?と私がひょこっと顔を出してみようとしたとき。
「姉ちゃん!いるんだろ!」
他にも成樹くんやいろいろとざわざわしていた中からひときわ大きく聞こえた一馬の声。
「‥一馬?!」
なんで一馬の声が‥だって一馬はここを知らないはずなのに。
そう思いながらも私は玄関へ向かった。

















『拾ってください』の続き。こっちのほうが先に出来ていたり (爆)

2002/07/19



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