誰もいないところがいいと思い、私たちは東庭に来た。どこかの試合が接戦らしく、大きな声援が聞こえてくる。
ちゃんが悩んでいることって藤代のことでしょう?」
ちゃんはうつむいたままこくりと頷いた。
「私、誠二くんのこと好きなんです。だけど私、かわいくないし頭も良くないから誠二くんにつりあわな…」
ちゃん」
出てくる言葉に予想がついて遮った。
叱られた子どものようにビクっとちゃんの肩が上がる。
見えた瞳からは今にも泣きそうな印象を受けた。
「そばにいるだけで満足できるなら友達のままでもよかったんじゃない?満足できないから自分の気持ちを伝えたんでしょう?」
ちゃんはなにも言わなかった。
「あのね、たしかにちゃんよりかわいい子はいるかもしれないよ。頭の良い子もね」
でも、そんなこと言い出したらきりがない。
人間なんて誰も完璧じゃないんだから、ごく当たり前のことだ。
ちゃんの藤代を想う気持ちが誰にも負けていないければいいんじゃない?自分の想いが他人に負けてると思ってる?自信ない?」
「いえ、ありますっ!…………あ」
はっきり言いきったのが恥ずかしかったらしく、ちゃんは顔を赤くした。
その様がかわいくて思わず笑ってしまった。
ちゃんはもっと自信を持っていいと思うよ」
ちゃん十分かわいいしといって頬をつつくと、ますます顔を赤くさせる。
藤代、かわいい彼女がいていいわね。
私は笑いながら立ち上がった。ちゃんも立つように促す。
ちゃん、今からでも遅くないから藤代の応援に行ってきなさい」
そのほうが絶対にいい。
藤代のことだから、もしかしたらちゃんがいないって騒いでるかもしれない。
「でも、もう試合終わってるはずだから今さら…」
「終わっていたらお疲れ様って言えばいいじゃない。ね?」
ポンと背中を押して上げると、ちゃんは走り出した。
その背中をまるで母親や姉になったような気分で見送る。
もうすぐ東庭から出るというところで、突然ちゃんがこちらにふり返った。
さっきまでの暗さを感じさせないとびっきりの笑顔で。
センパイ、ありがとうございました」
深く頭を下げると、また駆け出してあっという間にその背中は見えなくなった。
さっすが、6秒フラットで走る藤代の彼女。足も早〜い。







脈絡のないことに感心していたらポンっと肩を叩かれ声がかかった。
ってば、いいこと言うじゃない」
「あれ?、聞いてたの?」
いったいいつからいたのか。ぜんぜん気づいてなかった。
「後ろ姿をみかけて追いかけてきたの。話しかけられる雰囲気じゃなかったから隠れてたのよ」
まぁ、たしかに出てこられる雰囲気じゃなかったかもしれない。
ちゃんがいなくなったほうを見つめてがクスっと笑った。
「あの子、かわいい子ね」
「ホントね」
私が男の子だったならあんな子を彼女にしたいと思うわ。
見た目じゃなくてそばにいてかわいいと感じる子。もちろん見た目も十分かわいい。
ちゃんはかわいくないとか言ってたけど。
…まぁ、自分で自分をかわいいなんていう人は滅多にいないと思うけどね。
でも、ちゃんがかわいくないなんて言ったら私はどうなるのよ。
暗くなりそうな気持ちを落とさないように私は軽くの肩を叩いた。
「行こっか。そういえばのほうは試合どうだった?」
私のほうはなんとか勝ったよと言いながら私は歩き出した。話しかけながら数歩歩いたのにから返事はない。
?」
がついてきてないことに気づいて私はふりかえった。はさっきの位置から動いていなかった。
どうかしたの?
聞こうと思ったけど、言葉は出てこなかった。
が、怖いくらいとても真剣な瞳で私を見ていたから。
「…そばにいるだけで満足できるなら友達のままでもかまわない」
「えっ?」
「さっきのの言葉。でも、そういうは現状で満足できてるワケ?」
「?、なにを言ってるの?」
「気づいてないの?それとも気づいてないふりをしてるの?どっちにしても、時間は永遠じゃないわよ」

















『渋キャプ』の『し』の字も出てきてない‥ι

2002/08/31



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