「やっっと昼飯だな」
腹減って死ぬかと思ったというに三上がオーバーなんだよとツッコミをいれる。
「なんとか順調に勝ち上がってるよな」
頭を押さえながらもは嬉しそうだった。
が一回戦にいきなり当たったときはバーカって思ったけどね」
の声援に答えようとしただけじゃん。それをあの2年が狙いやがって」
「どうせ答えるなら結果で答えてほしいわね」
ってば今までの試合全部当たってるしというとは頬を膨らませた。
「いいじゃん。勝ってるんだしさ」
「そういう問題じゃねえだろ」
俺、一度も当たってないし〜と余裕の笑みで言った三上にがつっかかっていこうとしたとき。
「あ、センパイ、ここにいたんですか〜」
現れたのは犬‥じゃなくて後輩の藤代。
背は私よりずっと高いにも関わらず、なんか頭撫でたくなるのよね。
「あれ?藤代、どうしたの?」
おいでおいでと手招きしながら藤代を呼ぶ。
三上が明らかに呼ぶなと目で言ってきてるけど、もちろん無視。
がセンパイのこと探していたっす」
センパイ、次のバスケの試合の副審なんじゃないッスか?と言われて嫌な予感が身体中を走り抜ける。
「‥‥ねぇ、今の時間わかる?」
二人のどちらに聞くというわけでもなく、呟いた。
「ん〜今は‥1時42分だな」
ぎゃあぁぁぁ〜!ま、マズイ!
「やだっ!もう始まってんじゃん」
どうすればいいかなんて、答えは一つしかない。
既に間に合ってないけど、とりあえずダッシュで体育館に行くことだ。
「藤代、サンキュー。これ、お礼。じゃ!」
ほとんど口をつけていない食べかけのミルクパンに別れを告げ、私は走り出した。



あーもうなんで体育委員はこんなに忙しいのかしら。もうちょっと行事が楽しめてもいいんじゃないの?
ブツブツと一人文句を言いながら全速力で体育館に向かう。
その途中、あの時ジャンケンに勝っておいてよかったとつくづく感じた。
負けていたらバスケだけじゃなくバレーのほうまで受け持たなければならなかったから。
ま、この学校中を走り回るような忙しさもあるとすれば今日だけ。
明日はそれぞれのブロックの(準)決勝戦と敗者戦があるけど、トーナメントの関係でろくに試合がないクラスがでてくる。(今日の第1戦で勝利して次の試合で負けたところ。これは仕方のないことだよね)
その人たちが審判をやることになってるから、今日だけは3年が中心になるけど明日はきっとラクなはず!
……まぁ、今日の試合に1回でも負けたら私も『その人たち』に仲間入りなんだけどね。
なんて考えていたら体育館に着いた。
たくさんの人が走り回る音とボールをつく音が忙しく聞こえる。
「お‥おくれてゴメン」
息を切らしながらとりあえず謝った。
さすがにここまでの全力疾走はキツイ。私は運動部じゃないし、ふだん運動なんかしてないし。
今度からジョギングぐらいしたほうがいいかも。もうちょっと体力ほしいし。
「もう!センパイ、遅いですよ〜」
頬を膨らませたちゃんにゴメンゴメンと手で謝って、いるはずのない姿を見つけて驚いた。
なんでここに渋沢がいるの?
が来るまで俺がの代わりをしていたんだ」
私の頭の中で考えたことを読んだかのように渋沢は答えた。
「それはありがとう。でも、どうして渋沢が?」
「先輩がいなくてどうしようかと思っていたところにちょうど渋沢先輩が通りかかってくれてたんでお願いしちゃったんです」
そう言うと、ちゃんはすみませんと軽く頭を下げた。
「いや、べつにかまわないよ。それにしても随分早かったな」
は足が早いんだなと微笑んでいる渋沢の顔がどこか楽しそうなのは私の気のせいだろうか。
「ちょうど前半が終わって今は休憩中だよ」
「そっか。ゴメンね」
それから私は渋沢にもう一度ありがとうと言って後半開始の声をかけた。





無事(?)に試合を終えて記録をし、キョロキョロと周りを見回すと、渋沢が出ていこうとしているのを見つけて慌てて追いかけた。
ありがとうとは言ったけど、借りを作っちゃったことに変わりはない。=作りっぱなしなんて気分悪い。
「渋沢、ちょっと待って」
今日は何か走ってばかりな気がするなと思いながら前を行く大きな背中を呼び止めた。
?どうしたんだ?」
「何かお礼させてよ」
代わりやってもらっちゃったしというと渋沢は手を振った。
「かまわないって言っただろう?は気を使いすぎだ」
気にしなくていいという渋沢に私は当然食い下がった。
「そう言われると気になるの」
なんでもいいからなにか言ってというと渋沢は困ったように頭を掻いた。
そのままなにか思案顔でしばらく考え込むと、とつぜんポンと手を叩いた。
「じゃあ一つ。………ほしいんだが」
「…そんなことでいいわけ?」
耳もとで囁かれた渋沢の提案に、私は思わず聞き返した。
だって簡単すぎる気がして。あんまり難しいのも困るけどね。
「あぁ、いいかな?」
「そんなことでいいなら。じゃあ、明日ね」
手を振り渋沢の背中を見送ってから、お腹すいたなぁと改めて感じた。
そういえば私の昼ごはん、藤代に渡してきちゃったんだったよね。今さら行っても残っているわけないし。
しようがない。もう一度購買に買いに行くか。
そう思って購買に行こうと歩きだしたとき、渋沢に呼ばれた気がした。
振り返ればいなくなったはずの渋沢がこっちに歩いてくる。
「あれ?どうしたの?」
「たいしたことじゃないんだが‥、お昼は済ませたのか?」
私はふるふると首を横に振った。
「ちょうど食べ始めだったし、慌ててたから呼びに来た藤代に渡してきちゃった」
もうちょっと早く食べ始めればよかったなとか、ちゃんと時間を見ていれば問題なかったなとか思うけど今さらだ。言って変わるものじゃないしね。
「じゃあ、一緒に食べるか?」
渋沢のありがた〜〜い言葉に考えるより先に頷いていた。

















‥横道に逸れてしまった。

2002/06/29



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