バドミントンの第2試合は予定より早く始まった。というのも第1試合の勝敗が圧倒的な力の差でついたせいだけど。
センパイ。頑張ってくださいね〜」
息が上がったままなのに手を大きく振って応援してくれてるのは2年の後輩。
サッカー部のマネージャーで藤代の彼女のちゃん。
まったく接点はないのに何故仲がいいかというと、委員会が一緒だからだけど。
私は微笑んでから彼女に向かって手を振った。
もうすぐ三上が、もしかしたら渋沢も見に来るかもしれない。余裕を見せて言ってしまった以上。
「…無様な姿は絶対晒せないよね」
あとで何言われるかわかったものじゃないわ。
「おっ、燃えてるね、
小さく呟いた程度に言ったのにはちゃんと聞きとめたらしい。
「三上にいいとこ見せたい?」
意味深な笑みを浮かべてが言うので思わず反論した。
「ちょっと、なんで三上が出てくるのよ?」
「まぁまぁ。あ、試合始まるよ。整列しよ♪」
さっさと先を行くになんか誤解しているような節を感じるが後回しにした。
とりあえず試合に集中しなくては。
「それでは第2試合。3年3組対1年2組の試合を始めます」
「「お願いします」」







一切手加減をしなかったので(するのは失礼だと思うし)あっという間に決着がついた。
にお疲れといって私は出入り口を目指した。
「……あれ?三上は?」
さっきチラリと見たときは確かに姿があったと思ったのに、そこには渋沢の姿しかなかった。
「三上は次に自分の試合があるからって。それで…」
「『どうせ暇なんだろうから応援しに来い』でしょ?」
「……。もしかして会話、聞いていたのか?」
「違う違う。勘だけどだいたいわかるんだよ。三上が言いそうなことなんて」
タオルでかるく汗を拭きながら言ったから私は気づかなかった。
渋沢がそうかと答えたとき、少し表情が曇ったことに。
「たしか試合は北グランドでだったよね。私、三上の応援に行くけど渋沢はどうする?」
がいいって言うのなら一緒に行きたいと思ってるが」
いいかななんてかるく微笑んで。聞いてくるのは意味のないことだってわかってるくせに。
「じゃあ、いこう」
私はわからない苛つきを抑えながら渋沢に微笑み返した。





北グランドに行くと、まだ試合は始まっていなくて三上と隣の席のがボールの投げ合いをしていた。
あんなに早いの受けて痛くないのかしらと思っていたらがミスってボールが転がってきた。
「おっ!じゃん。取ってくれ〜」
コロコロコロ‥と足もとに転がってきたボールをのほうに柔らかく投げ返す。
思いきり投げてもよかったけどしなかったのは、変なほうに飛んでいって笑われるのは避けたいから。
「三上、応援に来てやったよ。ずいぶん早い球投げるじゃん」
が遅いとは言わないけど三上は球は早いと思う。
かわいそうね、2年生。私はあんなのに当たるのは絶対ゴメンだわ。
「これならバシバシ当てられるんじゃない?」
少し感心しながら言うと三上が変な顔をした。
「あ?なに言ってんだよ。今のはパス練に決まってんだろ?」
な、と三上がに同意を求める。
パス練って、パス練には見えなかったんだけど‥。
〜なんとか言ってくれよ。三上の奴、加減なしに投げやがって」
手、赤くなっちまってと泣きながらが手を見せてきた。
ちょっとつついてみたいなと思ったけど、さすがに可哀想だからやめた。
「‥三上、試合前に敵じゃなくて味方を潰す気?」
ドッジは頭数がものをいうんだから、たとえ役に立たないような状態でもいないよりはずっとマシ。
「あのな、俺のボールが強いんじゃなくての手が弱いんだよ」
俺のせいじゃないねと鼻で笑った感じがわざとだって分かった。
「ま、いざとなったら俺サマ一人でやってやるから心配すんなよ」
「その余裕が命取りにならないようにしてよね」
最後なんだからと言うと任せとけと二人に言われた。
「がんばってね」
心からの声援をおくり、私は渋沢がいるところに戻った。



「渋沢?どうしたの?」
「どうしたって何がだ?」
どうやら無自覚らしいと気づき、眉間に皺がよってるからと指摘すると、渋沢は少し驚いてから笑った。
「いや、仲がいいなと思って」
「誰と誰が?」
と三上が」
どこか渇いたような笑いとともに言われた内容に思わず目が点になった。
そして頭の中で何度か反復し、聞き間違いではなかったのかと渋沢を見たがどうやら間違いはなさそうだ。
「ずいぶんと露骨に嫌そうな顔をするな」
「当たり前でしょ?」
なんで私と三上が仲良しに見えるのよ。
「三上と付き合ってるんじゃないのか?」
冗談でしょ?どこからその発想が出てくるワケ?勘違いもいいところだわ。
心のなかでいろいろと思いながら私は口を開いた。
「私と三上は……」
「ちょっと、!三上くんだけじゃなくて渋沢くんまで独り占めなんてズルイじゃない!」
いつの間に来ていたのか、振り返るとが腕を組んで仁王立ち状態で私を睨んでいた。
そういえばのこと放っておいてきちゃったんだよね。
これはなにか奢っても許してもらえるかどうか‥と思ったとき。ふと考えが閃き、私は渋沢にアイコンタクトで頼んだ。
渋沢は小さくため息をつくと、に微笑みかけた。
「すまなかったな、さん。さんは悪くないよ。俺が行こうって言ったんだ」
「や、やだ、渋沢くんが謝ることじゃないよ」
真っ赤なの顔があまりにも女の子していて。
……私から頼んでおいてこういうのもなんだけど、これは聞いてはいられない。
でも、ここから逃げ出すわけにもいかないから。
私は耳を塞ぐ代わりに精一杯の声援を三上たちに送った。

















第1話を考えてから1月近く経ってる‥(爆)

2002/06/27



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