たった一人 君に知ってほしいんだ 英語の単語だけじゃなく 数学の公式だけじゃなく たった一人 君だけに知っていてほしいんだ 何度求めても変わることのない 俺の中で出たたった一つの答えを 「渋沢くん、この問題わかる?」 数学の問題集を片手に蛍華が渋沢に歩み寄る。 渋沢は蛍華の問題集をのぞき込み、一通り解き方を説明してから蛍華に言った。 「数学なら俺に聞くより、後で三上に聞いたほうが確実だぞ」 「亮くんは彼女さんとデートだって言っていたから今日は戻ってこないでしょう?」 明日は休みだし、かなり久しぶりだって喜んでいたからと蛍華は笑いを殺しながら付け足した。 もちろん他人には全然わからない程度の違いなのだが、幼馴染みから見れば違いは一目瞭然らしい。 そういえばそんなこと言ってたなと時計を見ながら渋沢は呟いた。 そのまま二人ともテスト勉強に集中し、2、3ページ応用問題を解いて蛍華は手を止めた。 「渋沢くん、そろそろ休憩しない?」 時計を見ながら呟くように蛍華は言った。 言った後に渋沢がきりが悪いということに気づいた蛍華は、渋沢が何か言う前に立ち上がった。 この部屋には何回も訪れたことがあるからどこに何があるかはだいたいわかるし、渋沢が何を飲むかもわかっている。 迷うことなくテキパキとお茶の用意を済ませてきた蛍華に、渋沢はありがとうと受け取りながらかるく苦笑した。 「悪いな。本来なら俺がいれるべきなのに」 お客さんにやらせてしまってという渋沢に今度は蛍華が苦笑いして手を振った。 「いいのいいの。私ばっか教えてもらってるし」 実際、蛍華より渋沢のほうが全体的に成績はいいから、教え合うというより渋沢が教えるということなほうが圧倒的に多い。 お礼にと蛍華が何かを渡そうとしても渋沢は決して受け取らないから蛍華としてはこんなところで返さないと返す場所がないのだ。 「辰巳くんとか今ごろテスト勉強してるかな?」 笠井くんはともかく、藤代くんは一夜漬けって感じがするけどと蛍華は笑った。 失礼な言い様だが、あながち外れてもいないので渋沢は返答に困った。 「いつもはそうだが今回は頑張るって先週からやってるよ」 三上はそんなことしても無駄だって笑ってたけどなと苦笑いし渋沢は時計を見た。 「案外、今やっていて教えてくれって飛び込んでくるかもな」 渋沢が言い終わるかどうかといううちに勢いよく部屋のドアが開け放たれた。 「キャプテ~ン!」 大きな声で挨拶もなしに入ってきたのはたった今渋沢と蛍華が噂をしていた藤代だった。 「あれ?氷耒センパイ来てたんすか」 「うん。こんにちは。藤代くん、笠井くん」 驚きつつ蛍華は藤代の後ろから入ってきた笠井にも挨拶をした。 どうもと笠井が頭を下げていると藤代はバッと教科書を広げた。 「キャプテン、この答え、48/131になりますよね!」 そう言って一問の問題を指差した。 「だから違うって。何回言えばわかるんだよ」 笠井の言葉にだいたいの事情を察した渋沢と蛍華は一緒に藤代の教科書をのぞき込んだ。 「‥その答え、38じゃないのか?」 問題を見て先に暗算し終わった渋沢が呟いた。 「やっぱりそうですよね」 ったく、どう計算したら答えが分数になるんだよと笠井が藤代を小突く。 「えっ‥私は22だと思うんだけど」 「氷耒、最後の符号は-だから変わるんだぞ」 「あ、そっか。‥‥うん、そうだね。答えは38だ」 頭の中で計算し直した蛍華が頷きながら言った。 「そんな~」 渋沢に加え、蛍華まで自分と答えが違うことに藤代はショックだったらしい。 どこで間違えたんだろうと呟きながら教科書とにらめっこ。 笠井はそんな藤代の首もとを掴んで無理やり立たせた。 「おわっ!何するんだよ」 「解き方は部屋に戻ったら説明してあげるから、とりあえず立って」 藤代の文句をものともせず、笠井は蛍華たちのほうを向くと苦笑いをしてかるく頭を下げた。 「邪魔しちゃってすみません、氷耒先輩、渋沢キャプテン。失礼しました」 未だ文句を言っている藤代の背中を後ろから押しつつ、笠井ははいはい‥とかるくかわして部屋を出ていった。 パタンと小さな音を立ててドアが閉まると部屋に元通りの静寂が訪れる。 渋沢と蛍華には静かすぎるように感じたが。 「‥まるで嵐みたいだったね」 蛍華がいうと、ドアのほうを見てまったくだなと渋沢は言った。 「それにしても渋沢くんが言ったら本当に現れるなんて」 見事に予感的中だよねと蛍華が微笑む。 「噂をすれば影ってやつだな」 「じゃあ、また噂してたらまた来ちゃうかな?」 噂していてみる?と蛍華は悪戯っぽい笑みを浮かべた。 「やめておけ。困るだろう?」 敢えて誰がと言わないところに引っ掛かりを感じるだろうが、蛍華はそれに気づかなかった。 「それより、氷耒に教えて欲しいことがあるんだが‥」 いいかなと苦笑いした渋沢に、蛍華は嬉しそうに微笑んだ。 「もちろん!但し私にできる問題ならね。どの問題?」 問題集をのぞき込んだ蛍華をまっすぐ見つめて渋沢は尋いた。 「氷耒は俺が嫌いかな?」 最初は意味がわからず目を点にしていたが、そのうち言われた内容を理解して蛍華は眉間に皺をよせた。 「渋沢くん。普通、聞くなら逆を聞くんじゃない?」 だいたい本人を目の前にして言えるわけないじゃないと言う蛍華に渋沢はそうだなと答えた。 「じゃあ、氷耒は俺のことが好きかな?」 蛍華は再び目を点にした。 「‥‥ねぇ、渋沢くん。その好きって友達としての好きとは違う意味の好きってこと?」 少し頬を染めながら蛍華は訊いた。しかし渋沢はただ微笑むだけで何も答えない。 「そんなの急に言われたって‥わからないよ」 「そうか。‥‥じゃあ、試してみようか?」 どうやって?と訊く蛍華に渋沢はまた笑って蛍華の頬に手を添えた。 渋沢の意図を察した蛍華は当たり前のように顔を真っ赤にさせて慌てた。 「ちょっ‥ちょっとダメだよ、渋沢くん。もしさっきみたいに藤代くんたちが来たら‥」 「大丈夫だよ。氷耒が噂しなければね。それとも俺が嫌いかい?」 「そんな‥‥渋沢くん、ズルイ」 「俺は氷耒が友達としてじゃなくて好きだよ。氷耒は俺が嫌い?」 「嫌いじゃないよ。嫌いじゃなくて逆に‥‥」 言いかけた言葉の語尾はキスに溶けた。 「‥‥ねえ、竹巳。どうしようか?」 「どうしようって‥戻るしかないんじゃない?」 噂に誘われてやってきた後輩の会話は、ドアに阻まれ二人の耳には入ってこなかった。 あまりにも遅すぎるだろと自分でも思います。ゴメンなさい、連理サマ‥ 2002/05/13 |
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