青く澄み切った空には雲一つなく、すがすがしい。
稽古場へと行こうと歩いていると、人影が桜の木の下にあることに気づいた。
「あれは・・・」
遠目でも誰なのかわかったので、心を浮きだたせながら歩み寄っていく。
「おはよう、天元」
広く大きな背中。後ろから声をかけると、天元はふりかえった。
「ああ、おはよう」
あたたかく優しい風が、頬を撫でて心地いい。
その心地よさを増幅するのはあなたの表情。
朝から会える、ただそれだけで嬉しい。
「桜、きれいに咲き誇ったわね」
「そうだな」
そういって天元は視線を桜に移す。
薄紅色に染まる桜は、ゆっくり左右に揺れながら、私たちを見下ろしている。
ここ数日ですっかり暖かくなった。
つい先日まで粉雪が舞っていたというのに。
「・・・」
桜を見上げながら、あなたの横顔も見つめる。
来年もこうして天元と一緒に見れたらうれしいな。
「」
「あ、うん、なに?」
突然名を呼ばれて少し驚いていると、私を見つめながらやさしく微笑んだ。
「来年もともに桜を見るか?」
「・・・!」
同じことを考えてくれていたのかもしれない。
そう思ったらうれしくなって私も微笑んだ。
「いいわよ」
また来年もその次も、ずっとあなたの隣で・・・
まだ完成してない話のヒロインを登場させる無謀な私。いや、書いてますよ、今。
2022/3/21
|