青く澄み切った空には雲一つなく、すがすがしい。
この春島にたどり着いたのは昨日。
みかんの木の下に座っていると、ゾロが近づいてきた。
「なに?」
「出かけたんじゃなかったのか?」
確か朝食の時にサンジくんとそんな話をしていた。
満開の桜たちを見てテンションが上がって、夜に花見をしたいから今夜は宴会だーーと言い出したのはルフィ。
それならあれがしたいだのこれがしたいだの各々が言い出して、ゾロが船番を引き受けた。
「航海日誌、まとめたかったから残ったの」
「ふーん」
そんなわけないじゃない。
でも否定する気にもなれず、ちょっと嘘をついてみる。
「桜、きれいね」
「そうだな」
話をふると、ゾロが島のほうへ視線を向けた。さすが春島、というべきか。色とりどりの島。
桜だけじゃなく、花だらけ。
確か香水が盛んなんだって、ウソップが昨日話していた。
ちょっと興味あるなと思ったけど。
買い物に行こうかと言ってみたら返事をくれたのはサンジくんだった。
「アンタ、全然興味なさげね」
アタシがなにしても、誰と出かけても。
「興味ねぇからな」
主語がないその言葉の中身が気になりつつ、聞けない。
本当はわかってるのに、つっかかってしまう今の自分はバカみたいだ。
でも、普段船の上で共同生活。個人の部屋はなくて、基本どこで何をしても仲間の目がある。
それでいいと思う時がある。それじゃ足りないと思う時もある。
・・・。
恋人っぽくできるのなんか島に着いた時くらいしかない。
なのに。
「トレーニングするの?」
「あぁ」
顔を上げずに答えが返ってきて、ゾロは回数を数え始めた。
あぁ、わかってる。こいつは筋肉バカだって。
乙女心を察してほしいけど、自ら動くしかないこともわかってる。
内心を悟られてるロビンにおもちゃにされそうだけど、背に腹はかえられないと船番を頼みに行った。
「いいわよ。いってらっしゃい」
二つ返事で答えは返ってきて、その表情からきっとからかわれそうと思いつつ、しかたないとあきらめた。
今の自分に必要なのは、二人の時間だから。
まっすぐゾロのところへ戻る。
変わらずトレーニングしているその傍らに立った。
「ちょっとついてきて」
「どこ行くんだ?」
「いいから」
「俺、船番なんだぞ?」
「大丈夫。フランキーとロビンがもう帰ってきてるから頼んできた」
そう伝えて、どこへ行くか言わずに先に歩き出した。
別に目的なんて考えてなかった。
町中、・・・はいいや。
町には向かわず、適当に桜並木の丘を登っていく。こんなにきれいに咲いているのに誰とも会わない。
木々が揺れる音と、鳥が歌う声だけの静かな丘。ゾロは何も言わずに後ろをついてくる。
船を出てから結構歩いてきた気がする。
ゾロがどんな顔してるのか見たくなって、後ろをふり返った。
「なんだよ?」
「黙ってついてくるなぁって思って」
「お前がついて来いって言ったんじゃねぇか」
「そうだけど」
たしかにそうだけど。
心の奥にくすぶってるちょっとした不満。自覚しつつ、言葉にするのははばかられて、代わりに桜の木を見上げた。
「きれいだよね」
「そうだな」
そう言いながら、ゾロの視線はアタシに向けられていた。
何言ってんだ?と言いたいのかしら。
夜には皆で来るっていうのにこんなとこまで来て。
それはわかってるけど、アタシはアンタと見たかったのに、アンタは興味ないのよね、きっと。
アタシだけがそう思ってるのよ。
乙女モードに入ってしまった自分にげんなりしつつ、でも逃れられなくて、ため息が出そうになる。
「なに?」
ゾロから視線を感じ続けていたので、何を言いたいのかと聞いてみた。
黙ったまま近づいてきたかと思ったら、そのまま抱きしめられた。
小さなリップ音と頭に落とされた口づけの感触。
「・・・!」
驚いた。
いつもそんなことしたりしないのに、どうしたというんだろう。
そのまま太い腕の中に閉じ込められる。
・・・あー・・・・うん。
わかった。
いや、わかってるのよ。
アンタが言葉にするタイプじゃないってことは。わかってるの。
「ナミ」
至近距離で名前を呼ばれて、背中に腕を回した。
あぁ、アンタのその声が好き。
アンタからのたった一言で、アタシは幸せになる。
単純。
単純すぎ。
でもでも。
うれしいんだから別にいいや。
「うん」



















サバサバしたナミさんが好きなんですが、書けない(>_<)

2022/03/22


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