この感情に名前を付けるなら、きっと。














「なにやってんだ?博士は?」
頼んでいたメガネの調整を確認しようと博士の家を訪れてみれば、博士の姿はなかった。
「博士は風邪よ、熱があって2階で寝てるわ。メガネはまだだそうよ」
そう答えた彼女の目はとろんとしていて、舟を漕ぎそうになっている。
「眠そうだな。灰原も休んだらどうだ?」
「これだけ終わらせたいのよ」
カタカタと片手でキーボードをたたきながら、殺せないあくびを噛み殺している。
「まだ終わらないのか?」
「えぇ、もう少し」
「コーヒー淹れてきてやるよ」
「ありがとう」
視線はパソコンに向けたまま、彼女は礼を言った。
彼女がいつも使っているカップはどこにあるかわからなかったので、適当にカップを出す。
えっと、豆はあっちの棚だったな。
前に教えてもらった棚を開けてみたが、その場所になかった。
記憶違いだったかと隣の棚を開けてみたけれど、やはり見当たらない。
「灰原、豆はどこにあるんだ?」
声をかけながらリビングに戻ると、灰原からの返事はなかった。
そばによってみると、彼女が机に伏せているのがわかる。
「・・・灰原?」
小さくその名を呼んでみるが、やはり動かない彼女からの返事はなかった。
珍しく舟を漕いでいたから、よほど眠かったんだろう。
傍らまで寄って、その頭をなでてみる。それでも寝息は聞こえたまま。
「・・・・」
普段の彼女ならこんな姿を自分に見せることは無い。
たとえ少年探偵団のやつらと一緒にいても。
他のやつらより、俺は彼女に近い位置にいると思ってる。
でも、それは俺たちが同じ境遇の仲間だからだ。ただそれだけだ。
「哀・・・」
一度も呼んだことがない、その名を呼んでみた。
彼女からの反応はない。
確かにそこにいるのにその実、誰のものにもならない。彼女の今に無意識のうちに安心していた。
彼女を解っているのは俺たちだけ。
仲間である俺たちだけ。俺だけ。
その優越感。
気づかずそれを抱いてたんだと気づかされたのは、同級生である光彦の視線だった。
隠したつもりでまったく隠れていない、その思い。一途にただ彼女を見つめるその視線。
「哀・・・」
光彦の視線にだんだん苛つきを感じるようになって。
待っている幼馴染より、いつの間にか彼女のことを考える時間が多くなった。
彼女が笑えばうれしくなって、彼女のそばにできるだけいたいと思うようになった。
ただ仲間としているだけじゃ嫌なんだと思ってる自分に気づいてしまった。
もう否定することなんかできない。
この感情に名前を付けるなら、恋愛感情だ。
それを認めてしまえば、今度は自分の酷さに笑いがこみ上げてしまった。
何も話せず、ただずっと待たせたままの幼馴染の彼女。
なんて酷い男だって自分でも思う。だけど、この想いに嘘はつけない。
認めてしまえば、こんなにも苦しく苦く甘く温かい。
「志保・・・」
好きだ。
俺はお前が好きなんだよ。
茶色くやわらかい彼女の髪を一房とった。
その一房へ想いをこめて口付ける。
「寝たふりすんなよ、志保」
彼女との関係を変える為に、俺はもう一度その名を呼んだ。






















コナンの設定なのに、つい新一のような気で書いてしまう。コナンだと食器棚を開けるには踏み台が必要だったかもしれない(笑)

2019/10/14



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