※50のお題『告白』の続きです。





いたい。いたい。いたい。
引き裂かれたほうが楽かもしれない。













、この後飲みに行かねぇ?」
「あ、ごめん。今日はやめとく」
「なんでだよ?急ぎはねぇんだろ?付き合えよ」
「昨日も飲んでるし、今日は止めとこうかと思って」
「ちょっとくらいいだろ?なぁ、行こうぜ」
城の中にあるの部屋。机に座ったままのにもう一度誘いをかける。
いつもならこんな強引な誘い方はしない。
だって、気づいたから。気づいちまったから放っておけなかった。
素面じゃ絶対なにがあったか話さねぇだろうし。酔っても話さねぇかもしれねぇけど、酒入れた方が口は軽くなるだろ。
予定がないことは女官にも確認してるから、間違いなかった。
なにより、予定があったらこんな時間まで城に残っちゃいねぇだろ。
呂蒙のおっさんあたりなら残ってそうだけど。
「わかった。興覇、行こう」
「・・・・・・・あぁ」
誘っておいて返事に詰まったのは、の目の色が見たことないほど沈んでいたからだった。










「はぁーーー美味しいね」
酒を飲み干してケラケラと笑うは上機嫌だった。
はけっして酒に弱い奴じゃねぇ。そこそこ長い付き合いだが、知ってる女の中じゃ断トツで一番だ。
が酔いつぶれたところなんて見たことがなかった。
こんなは初めてかもしれない。
顔色はあんま変わんねぇが、かなり酔ってやがる。
「興覇、今日、飲むの遅くない?」
、おめぇが速すぎんだよ」
「そんなことないでしょ」
そんなことあるだろ。
そう思いつつ、注いでやった酒瓶はもう空になっちまった。
しょっちゅう一緒に飲んでいる間柄、だからわかる。
今日のはいつもより飲むペースが速い。
その証拠に、同じに飲んでいる俺はそこまで酔っちゃいない。
とはいえ、客でごった返していた時間帯はとうに過ぎているし、どれぐらい飲んだか計算できないくらいには酔ってるけど。
「なんかあったか?」
なんて聞くまでもなく、わかってた。
だから連れ出したんだ。
稽古場じゃいつも通りでわかんなかったけど、凌統の声を聞いたとき、の顔が一瞬ゆがんだ。
すぐに元ので、気のせいかと思うくらいいつもと変わんなくて、きっと他の誰も気付いちゃいねぇ。
俺だって、あれが見えなきゃ気づかなかったかもしれない。
一緒に飲んでみて、確信する。
なにかあった。
絶対に。
「興覇が気づかいできるようになるなんて・・・お母さんはうれしいわ」
「俺は、こんな飲んだくれの親はご免だぜ」
「もおーノリが悪いわね。そこはお母さんのおかげだよ、でしょ?」
「・・・・・・・・」
誤魔化されてやる気はねぇってことを視線で伝えてみる。
俺の視線に気づいたは、視線をそらすと、杯を傾けて最後の酒をあおった。
「べつにーーー・・・・なにもないわよ」
「嘘が下手な奴。言いたくなけりゃ無理には聞かねぇけどよ」
凌統絡み、だろ。
本人の口からきいたことはねぇけど。聞いたって認めたりしねぇだろうけど。
誰とでも飲むやつだけど、は凌統の誘いだけは断る、らしい。
前に理由を聞いたら飲みの場に女が居たら凌統の彼女が気分悪くするでしょ、なんて言ってたけど、それだけじゃねぇだろ。
なんで、あいつがいいんだか。
「ありがとー、興覇ちゃん。ついでに朝まで付き合ってよ。もっと飲もう」
追加を頼もうとするの腕を捕まえて下ろさせる。
「もうやめとけって」
「なんでよ?」
「明日、朝礼に遅刻してもしらねぇぞ?」
「遅刻の常習の興覇が気にするなんてねー・・・うっうっうっ、お母さんはうれしいわ」
「おい」
「ふふふ、わかったって。・・・じゃあ、帰ろっか」
店の親父に声をかけて、勘定を済ませるとと一緒に店を出た。
惜しみなく降りそそぐ満月の明かりで、外は驚くほど明るかった。
広い通りだが、人影もないような時間。
まだ夜中だ。
「ごちそうさま」
「送る」
「いいわよ、ちゃんと歩けるし。自分の身くらい守れるからお気づかいなく。じゃあ、おやすみ」
ひらひらと手を振って、は作り笑いを浮かべている。
向けられた小さな背中。
その足取りはしっかりとしてる。
見失う前に追いかけて、まっすぐ家に向かう気がない、その背中を引きとめた。
「・・・・ん?なに?」
「さっき言わなかったか?お前は嘘が下手だって。どこ行く気だ?」
城とは方角が違う。 たしかに、の家はこっちだが、こいつは今日、家に帰らないつもりのような気がした。
ただの勘。
でも、見上げてきたその瞳を見て、俺の勘があってたことがわかる。
「へぇ、わかるんだ?すごいね」
「あたりめぇだ」
「さすが、水賊で頭はってただけのことあるね。頭、かっこいいよー」
「茶化すな」
「興覇って、世話焼きだね」
軽口が途切れて、作り笑顔を浮かべていたその顔から笑みが消えた。
一気に酔いが引いて、酒が抜けていくのがわかる。
泣きたい、のかもしれない。
泣いてはいなかった。
糸が切れた人形のように、わずかにふらつきながらの体が凭れ掛かってきた。
熱い額が俺の胸に預けられる。
「興覇」
「なんだよ?」
「抱いてよ」
「・・・・・・・・」
「抱いて」
「・・・随分飛躍したもんだな」
いったい何があったのか。わかんねぇ。
ただ、今の言葉はただのやけっぱちだろう。
本心じゃねぇ。
俺を見ねぇのがその証拠。
「男ってさ、好きじゃない女でも抱けるもんじゃないの?」
「さぁな」
「・・・・・・・・」
「そんなん、男とか女とか関係ねぇだろ」
「そうかな?」
「好きじゃねぇ女を抱ける奴もいるし抱けねぇ奴もいる。女にも抱かれる奴もいるし出来ねぇって女もいるだろ」
「・・・・・・・・」
「お前は好いた男じゃなきゃ出来ねぇよ。そういう女だ」
「・・・・・・・・」
「そうだろ」
俺もそうだ。
惚れた女じゃなきゃいらねぇ。だからお前じゃなきゃ駄目だ。
飲み込んだ言葉と、寄り添ったままの高い体温が胸に刺さって、痛みをさらに強くしていく。
・・・・いてぇ。
針をのみ込んでいるみたいな。
でも、言わなきゃいけねぇ。
いつもの俺で。
口調も、何も変わらないままで。
が俺をそういう意味で好きなら抱いてやるけどな。違うだろ?」
声は震えなかったが、胸の痛みは更に増した。
引き裂かれるような痛み。
どんな返事が返ってくるか、わかってる。
わかっていても、それを口に出すのは・・・・きつい。
いっそ、酔いに任せてここで何も考えずをかき抱けたら幸せなのにな。
できねぇ。
できねぇよ。
・・・・が余計に泣くことがわかってんだから。
「・・・・ごめん・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・ごめん、興覇っ・・・」
本当は、震えているその小さな肩を抱きしめてやりたかった。
でも、それはできねぇ。
の涙を増やすだけだから。
「誘ったかと思えば泣き出すのかよ、忙しい奴だな」
いつもより明るい声で、ただひたすらの頭をなでてやる。
温かかった涙が胸を濡らし、俺から熱を奪っていく。
このまま家に帰したら、はずっと一人で泣いてるだろう。
きっと寝られない。
そんなことはさせたくねぇ。
「ほら、今日は俺から誘ったんだから最後まで付き合ってやる。行くぜ」
の顔を見ずに、答えも聞かずに、手を引いて歩き出す。
家じゃなく城に戻ることにした。
握る手の温かさと聞こえる小さな嗚咽が、痛みを引き起こして、握る手に力をこめさせる。
なんでもないように。
そう装いながら、泣きたいほど切なかった。
















『告白』のヒロイン・・・というか続きです。お題で続き物やっちゃダメな気がしますが、このタイトル、どうも相性が悪いみたいで既に4作目。
話のイメージは浮かぶのになかなか最後まで完成するものがなくて頓挫ばかりなので許してください。
『告白』が気に入ったんで続きをかいたら・・・なんか、スゲー甘寧がいい男。やべぇ、好きだ・・・。
この場合、どっちに転ぶのが正規ルートなんだろうか。
これを機に甘寧に転んでもいいんじゃないか?っていうか、転びたくてたまらない管理人(笑)
なんか見たことあるような・・・って思ったら、馬超の失恋慰めドリと同じ流れだと気づく。あっちはもっと歪んでますが。

2020/2/14



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