遊戯なんかじゃなかった 誰にも負けないくらい それくらいのことが好きだった それでも裏切ってしまった俺を お前は許してくれるのか? 「ねぇ、キスしない?」 突然のからの提案に俺は驚いた。 が自分から俺を求めることは今までなかったから。 「あぁ?なんだよ、急に」 ルックスも性格も声も仕草も最高の女。コイツの横はバカみたいに心地いい。 こんなイイ女、他にはいないだろう。そう。他にはいない。 「亮だっていつも急だったじゃない」 「俺サマはいいんだよ」 そう答えてまた手元の雑誌に視線を戻す。 の視線を感じるが、知らん顔をした。 「ねぇ、亮」 「なんだよ」 雑誌に視線を落としたままだけど、ちゃんと耳を傾ける。 「好きだよ」 温かみのあふれる言葉。心がこもっているのがわかる。 「亮が好き」 誰よりも大切だった存在。 「俺もだよ」 いま心の内にあるありったけの愛を込めて微笑む。 だけど俺の言葉を聞いてが泣きそうな表情になったので慌てた。 「?!お、おい、どうしたんだよ?」 「亮は‥優しいね」 そのときのの顔は嬉しそうに。だけどどこか哀しそうだった。 「ごめんね‥」 「?」 なにに対して謝られているのかわからない。 「ごめんなさい‥」 はただ謝罪の言葉を口にするだけ。 もしかして‥ 「別れましょう。私たち」 あぁ、やっぱりな‥と思った。 は気づいていたのだ。俺の心の中にアイツがいることに。 「‥、俺、お前のこと本気だった」 以前の俺は女遊びがすごかった。自分でも呆れてしまうほどに。 でもと付き合い始めたらピタリと止まった。 の傍にいると幸せだった。の傍にいるだけで幸せだった。 俺はが好きだ。それは変わってない。 「でも…」 変わってないのに! 「言わなくていいよ。わかってるから‥」 自分の気持ちを察してくれてるに何を言ったらいいのかわからない。 初めて感じる罪悪感。 今まで付き合ってた女に感じたことのない感情。 「悪ぃ‥」 こんなにも想ってくれてるのに‥ こんなにも想っていたのに‥ 「謝らないで。仕方のないことだから」 が許してくれても俺が俺自身を許せない。 「亮、お願いがあるの」 「ん?なんだよ」 「私以上に大切にしてあげて」 「?」 それが願い?なんで?なんでそんなに優しいんだ? 「私よりあの子が好きなら私以上に大切にしてあげて」 なんで泣かないんだよ‥ 「わかった」 そんなことで償いにはならないとわかっているけど。 「亮、あの子のところに行ってきなよ」 笑って言うに胸の痛みが大きくなる。 「‥」 なんで俺に笑いかけてくれるんだ?俺が憎いだろ? お前という彼女がいながら他の女を気にしてて何も言わなかった俺が‥ 「早く。ぜったい大丈夫だから」 俺は何も言わずに立ち上がった。キィ‥とドアの開く音が響く。 「、サンキューな」 は背中を見せたまま決して振り返ってはくれなかった。 当たり前か‥ これですべてが終わり‥ 終わりだけど‥ 無言のの背中が何かを叫んでいるような気がして‥ 気がつけばを背中から抱きしめてた。 「‥あ‥きら?」 「、お前のこと、本当に好きだったぜ」 そう伝えて俺はの部屋を飛び出した。雨なんか気にせず全速力で走った。 しばらく走って女子寮が見えなくなったところでやっと立ち止まる。 「‥なにやってんだろな‥」 俺が哀しむなんておかしいけど‥ 矛盾してるけど‥ 「‥」 それくらい君のことだけを想っていた もう俺が君の隣に立つことはないだろうけど 君には誰よりも幸せであって欲しいと思う もし次に君に会ったとき 君はもう一度微笑んでくれるだろうか 「、愛してたよ‥」 溢れてくる想いを雨に溶かして‥ ありがとう‥ そして、さよなら‥ 俺を愛してくれた人‥ この話、三上先輩を悪役にしたくなかったというのが本音です。 彼女いるのに他の子が気になっているわけですから思いっきり悪役ですが 三上先輩はまだヒロインの事が好きなんです。 でも気になる子が出来てしまって‥ でもヒロインの隣にいたくて‥ という葛藤だらけな感じの設定して書きました。 本当に人の心って難しい‥ 2002/01/10 |