この線はいったいどこまでいくのだろう。














「もう別れようよ」
学校の屋上。告白する、もしくはされる率と別れを告げる、もしくは告げられる率はだいたい半分くらいで。
どちらにしても、恋人たちの場所と呼ばれてる。確かにある意味当たってる気もするけど。
私がここにいるのは告白するためでも告白されるためでも、ましてや別れのシーン恋人たちの修羅場に出合わせるためでもない。
純粋に静かに休憩をとりたかっただけなのだ。
なのに、なんでこんな場面に出合わせなければならないのよ。
場所なら他にもあるでしょう?時間なら今じゃなくても放課後でも昼休みにでもすればいいじゃない。
ってこれはもちろん私の勝手な言い分。
彼らからしてみれば、授業サボって屋上で寝ている私のほうが悪いってことなんでしょうね。
こういう修羅場も困るけど、かと言って居ずらく感じるほどイチャつかれてもなぁ‥。
できれば立ち去りたいけれど、今私がいるところはちょうど屋上の入口の上あたり。
屋上を出て行くには彼らの目の前を通っていかなければならない。つまり身動きが取れない。
唯一幸いなことに、私がいるところは彼らから死角になっているはずだから彼らに私の姿は見えない(はず)。
逆を返せば私からも見えないから彼らが誰なのかわからないんだけど。
ま、このまま静かにしてればいなくなると思う。だけど、声が聞こえれば誰なのか確認したくなるのはきっと人の性。
どっちにしてもこのままではここにいては盗み聞きになってしまう。
でもここで出ていくのはちょっと‥
ま、少し見るだけなら気づかれないよね。
都合よく考えてちらりと覗いたその後、すぐに私は後悔した。
そこにいたのは同クラスの三上とその彼女だったから。



私と三上は一年からずっとクラスが一緒で仲が良かった。
男とか女とか関係なく、気をつかわないで言いたいことが言える。
親(悪)友と言ってもいいかもしれない。三上の親友は渋沢くんだと思うけど、少なくとも私はそう思っていた。
いつからなのか自分でもわからないが、私は三上が男として好きになっていた。
ただの友達だったはずなのに、いつの間にか惹かれていた。
ま、三上は今も私を友達としてしかみていないけど。







「私のこと、一度も好きだって言ってくれなかったじゃない」
彼氏なら言うのが当然でしょと言った彼女に腹がたった。
言葉に表すことがすべてじゃない。
三上がアンタを大切にしてたなんてこと私でもわかった。
そんなことにも気づかないの?
「どうせ遊びだったんでしょ?」
遊びだったのはアンタのほうでしょ?
女癖が悪くて彼女にも冷たくて素っ気無い。二股も三股もかけている。それが噂に囁かれてる三上 亮。
そんな虚像に惑わされて本当は三上のこと何も知らないくせに‥
「私、もう疲れたの」
バカじゃないの?
きっと三上のほうが何倍も疲れてる。アンタたちのその気紛れで。
「さよなら」
三上は最後まで何も言わなかった。
ただ、冷ややかに相手の背中を見つめて。フッと笑みをこぼした。
なぜ三上が笑ったのか私にはわからなかった。





私の視線を感じたのか三上がこっちを見上げた。視線が絡む。
とっさに隠れようかとも思ったけど今さらだと思った。
暫くみつめ合って先に口を開いたのは三上だった。
「‥なに見てんだよ」
悪趣味な奴と笑う三上が痛々しく見えるのは私の気のせいかもしれない。
「好きで見てたわけじゃないわよ」
できれば見たくなんかなかった。
「人がフラれるのを見るのは居心地悪いか?」
三上は笑って言ったけど、どこか無理してるふうに感じて眉を顰めた。
「落ち込んでないの?」
聞かないほうがいいかなと言った後で思った。
でも無理して笑っていてほしくない。
「別に」
淡々とした言葉に寂しさが入っていたように感じた。








会話はそこで途切れた。何を言ったらいいのかわからなかった。
いつものように笑って話せるような雰囲気はなかったし、私も笑えるような状態じゃなかった。
どうしようかと思っていたら突然、なんの前触れもなしに三上の頭が私の肩に凭れ掛かってきた。
「三上?」
突然のことに驚いて名前を呼んだ。
返事がないのでちょっと揺すってみたが、三上からの反応は無い。
どうやら寝入ってしまったらしい。
いつもなら叩き起こして笑って普通の友達を演じるけど、今日は寝かせておいてあげる。
ううん。眠っていてほしい。
今は友達じゃなく、 というただの女の子だから。あなたが好きなただの女の子だから。
この気持ちを口にできれば楽だけど、この場所はとても心地好くて。壊したくないから。
いつか伝えられるときがくるかな?
三上のこと、好きだよって。









道がどこまでも続くように、この線はいったいどこまでいくのだろう。
すぐそこで切れる?それとも地平の果てまでいくのだろうか?
曲がりくねりそれでも未だ止まることはないこの線が、交差するときがきたらその後はどうなるだろう。
もし、通りすぎてしまったら?そして再び交差することがなかったら?
起こるかわからないことに怯える私に相応しい名は臆病者…

















こっち読まなきゃわからないところあるし、あっち読まなきゃわからないところあるし。
いったいどっちから読んだほうがいいのか。不親切な感じでゴメンなさいです‥。

2002/04/29



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