それは答えじゃないかもしれないけど…












のんびりと屋上の床に寝そべって。私はただぼんやりと空を見ていた。
飴でも舐めようかとポケットを漁ると堅いものが手に触れた。
何かと思って取り出してみると、さっき美術の時間で使って返さずじまいになっていたカッターだった。
チキチキと刃を出して手頚に当ててみた。
カッターの冷やりとした冷たい感じが伝わってくる気がする。
そのまま軽くスッと引いてみた。私の腕に薄い紅い線が生まれた。
それはだんだん太くなり、生きているという証を流す。
なに、やってんだろ‥
自分じゃない別の自分の声が聞こえた。
手頚を切ったからって、別に死にたいというわけじゃない。
「ホント。なに、やってんだろ‥」
自分で自分のとった行動がすごくバカらしく思えた。
「なんだ、か」
ひょいっと顔を見せたのは同クラスの黒川 柾輝だった。
どうやら黒川もサボってきたらしい。
そういえばドアの開いた音が聞こえた気がする。
「なんだ、黒川か」
黒川と会話をするのがかなり懐かしく感じた。
きっと気のせいじゃないだろう。
普段は一緒にいないし、たとえサボって一緒になってもろくに話したことはない。
同じ場所にいるのにお互いに無言のままなんてよくあることだ。
話さない。だって知らないから。
クラスメートほど他人じゃないけど、友達というほど知らない。
そう。黒川は私を、私は黒川を何も知らない。
知らないけど感じる。
たぶん、どこか私たちは似ている。
そんな気がしているのは私だけかもしれないけど。



「って、お前なにやってんだよ!」
黒川が少し慌てたふうで私の手の中のカッターを取り上げる。
「そんなに慌てなくたっていいじゃない」
「‥お前な、この状況だったら少しは慌てると思うぞ」
そうかしら?私はそんな場面に出くわしたことがないからわからないわ。
「これって美術室のか?2限の」
「うん。ねぇ、返して」
甘えるような仕草でカッターを返してくれるよう頼む。
ま、渡してくれないと思うけど。
「渡すわけねえだろ。これは俺が返しとく」
やっぱね。
「別に死のうとしてたわけじゃないよ?」
「死のうとしてやったとしても、そうじゃなかったとしても、その行動に出るってことが問題なんだよ」
少し怒ったような口調で黒川は言った。
確かにそうかもしれない。
「ほら、手貸せ」
黒川はカッターを内ポケットにしまい、ハンカチを取り出した。
へぇ、ちゃんとハンカチ持ち歩いてんだ。
「で、は何でこんなことしたんだ?」
「ん〜?ちょっと考えちゃってさ」
「何をだよ」
ぐるぐるぐるっと手当てをしながら黒川が聞き返してきた。
「生きるってことの意味」
「‥‥はぁ?」
呆れたというか‥なんて比喩していいのかわからない顔で黒川が私を見てきた。
「昨日のホームルームで進路調査用紙配られたじゃん?」
「あーそういえばそうだったな」



「死ぬって生きることの逆でしょ?じゃあ生きるってことはどういうこと?」
別に今の生活に不満があるわけじゃない。ただ思った。
私はこのままでいいのかと。
「ねぇ、黒川はどう思う?」
くるりと振り返って黒川に尋いてみた。
なぜかわからないけど黒川に話してみたかった。
生きるってどういうことなのか。黒川はそれに対してどう思うのか。
「‥俺には難しいことはわからねえ。生きることの意味なんて考えたことねえし、考えても今答えは出ねえ」
遠くをみつめて黒川は続けた。
「でも、生きてるんならいろいろ考えなきゃいけねえんじゃねえ?」
「いろいろ?」
「生きることの意味ってのもそうだろうけど、この世界。似たような人間はいても絶対に同じ人間はいねえんだぜ。
つまり、誰も誰の代わりにもなれねえってことだろ?」



にしか出来ねえことは何か。考えてみれば?」
俺には俺にしか出来ねえことがあるようにさ、と言って黒川は笑った。
「私にしか出来ないこと‥」
私にしか出来ないことってなんだろ?
真面目に考えていたら肩を掴まれた。
「黒川、なに?」
「相談料」
あまりの至近距離に黒川の顔が見えなくなる。
「じゃあな」









とりあえず 生きることの意味より
私にできることの中身より

黒川とこの気持ちの名前について考えてみましょうか

















ある人の話を聞いて浮かんだドリです。
はじめは渋キャプだったんですけど、柾輝くんになりました。
ニセ柾輝くんです。

教訓 彼はとっても難しい‥

2002/03/11



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