「なにをそんなに考え込んでいるの?」

来てからソファに座ったまま言葉が少ない彼を心配して声をかけてみた。
彼が悩むなんて珍しい。
ここ最近は事件も特に起きてないはずなのに。

「いや、いつしようかなって思ってさ」
「いつってなにを?」
「んーー・・・言ったらおめぇ、馬鹿だっていうだろうから教えねぇ」

まったく、なんのことかわからない。
私には彼ほどの推理力はないし。
でもなんとなく空気から察して、私に関係あることらしいということはわかる。
なにかサプライズとか?
いや、彼はそういうタイプじゃないわね。
なにも言わず、じーっと顔を見つめられて、なんだか居心地が悪い。
そんなに見つめないでほしいのだけれど。

「うん、やっぱそうしよう」

人の顔を見つめたまま、どうやら何かが決まったらしい。
いったい何なのかしら?

「ちょっと来てくれよ」






手を引かれるまま向かったのは隣にある彼の家。
行くと、一つの部屋へと通された。

「ここはあなたの部屋?」
「あぁ」

初めて入った。彼の部屋。
ここに彼がいたんだと感じ取れる空気。
部屋の中を見渡せば、サッカーのボール。推理小説。彼が好きなものがあふれている。
彼の匂いがする部屋。

「それで、なんの用なの?」
「ちょっとそこに座って目を閉じてくれ」

すごく楽しそうな彼の顔。ワクワクしてるっていうのが伝わってくる。
なにか見せてくれるんだろうか?
指をさされたベッドに腰掛けて、言われた通り目を閉じて待った。
フッと彼が近寄ったことが気配でわかった。
ギシリとベッドが鳴いて、少し沈む。
音もなく重なった唇。
驚いて目を開けると、メガネを外した彼の顔がすぐそこにあって。
言葉も出ない。
きっと、今の私はひどく間の抜けた顔をしている。

「ずっとキスしたくてさ、いつにしようかなって考えてたんだ」

イタズラが成功したって言わんばかりの彼の顔を見てカッと頬に熱が上がる。

「もうっ・・・!」
「なんだよ?なんで怒ってんだよ?」
「一言くらいいいかどうか聞きなさいよっ」

私の意志は無視なわけ?なんて言ってみたけれど、ムカついていたわけではなかった。
ただ、びっくりして。ただただビックリして。
恥ずかしくて。つい出てしまった、一言。
きっと、今の私の顔は赤い。

「あぁ、そうだよな」

言われて初めて気が付いたと工藤くんは言った。
スッと私の前で膝をついた工藤くんは、私の右手を取ると、その甲へと唇を寄せた。
驚いて言葉が出なかった。

「キスしたい」
「っ・・・」
「志保にキスしたいんだ」

まっすぐ下から見上げてくるその瞳はゾクゾクするほど魔性の色を携えていて。
小学生らしからぬ表情。
色っぽいなんて、小学生に言う言葉じゃないはずなのに、今の彼にはぴったり当てはまる。
跳ねあがった心臓の鼓動は収まる気配がなく、顔には熱が集まって、ますます熱い。

「おめぇってホントかわいいよな」
「・・・っ・・・」
「なぁ、返事は?」
「・・・・いいわよ」

他の返事が返せない私は、悔しくて彼を睨みつけたけど、彼は嬉しそうに笑っていた。


















おまけ。


「ねぇ、なんでわざわざ部屋へ連れて来たの?」
「べつに。誰も来ない場所がよかっただけ」
ちょっと納得がいかないというその視線に気づかないふりを通した。

「・・・ファーストキスは俺の部屋がよかった、なんていえるかっつーの」






おわり。


















ぐはぁ、甘い。中身は男子高校生なんだから、考える事なんてこんなことじゃないか?若いし。
膝ついてキスって・・・コナンが怪盗キッド化してしまった。ホントはもっとかわいいんですよ。迫らせすぎたな(汗)

2019/10/14



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