今日は12月31日。大晦日。
闇夜に響くのは今年の終わりを告げる除夜の鐘。それに混じるのは…………騒音。

バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!

まったく、夜中だというのに礼儀もなにもあったもんじゃない。
遠慮の欠片もなく叩かれる窓ガラスは屋敷中に響いてしまっているのではないかと思うくらい悲鳴をあげている。
「誰だよ、こんな時間に!」
ベッドから飛び起きて、大慌てで窓に駆け寄る。
月夜のシルエットから声を聞かなくても誰だかすぐわかった。

「美堂?!」
「ったく、さっさと開けろよな。風邪ひいたらどうしてくれんだよ」
寒い寒いと言いつつ勝手に部屋に上がり込み、勝手にストーブを点けて暖まる体勢の美堂に言葉を失った。


「おい、なに突っ立ってんだ?早く窓閉めろよ」
自分で開けたくせになんてやつだろうか。
わがままなやつとは思ったが、とりあえず言われたとおり窓を閉めてふりかえった。間髪いれず次の要求が出てくる。

「あ〜喉渇いた。なんか飲むモンくれよ」
「飲むって、お茶か?」
「ビールに決まってんだろ」

当たり前のように答える美堂につくづくわがままなやつとは思ったが、逢いに来てくれたことが純粋に嬉しかったので黙って足を向けた。
部屋にある小さな冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し美堂の目の前に差し出す。

「冷てぇな」
「当たり前だろ。それより、こんな時間にいったいなにしにきたんだ?」
美堂は本当に猫のように気まぐれで、来ると言ってから来ることはまずなかったが、夜に会いに来ることは今までになかった。
「新年の挨拶ってとこ。わざわざ俺から出向いてやったんだ。ありがたく思えよ」
偉そうに言うこの自分勝手の塊に呆れてものが言えなくなりそうだ。

「んなもん日が出てからだっていいじゃねぇか。なんでこんな時間に…」
「今年一番最初にお前に逢いたかったから」




言われた言葉を理解するのに数秒。それを確認するのにまた数秒。
沸き上がる嬉しさで抑えていても自然と頬が緩んでしまった。




その瞬間を見計らったかのように(というか見計らったんだと思うが)美堂は小さな悪ガキのようにベーと舌を出した。
「なーんてな。なに、本気にしてんだよ」
ビールを片手に美堂はケラケラと楽しそうだ。
いつもならここでなにか言い返してやりたくなるのに今日はならない。


「なんかお前らしくねぇな。もう酔ったのか?」
別の笑みを浮かべ、茶化してみれば美堂は相変わらず笑ったままで。
話さないだろうと思いながらも言葉を待っていると、そのうちうつ向いてしまった。


「美堂?…ぅわっ!」
突然の圧力に抗う術はなかった。
背中への衝撃とともに視界にちらっと映ったひっくり返るビール缶。
「おいっ…!」
「空だから心配すんなよ」
今の自分たちの体勢よりそっちに気がいって声をあげれば予想通りだったらしい。
降ってきた言葉は本当のようで、カラカラと軽い音を立てながら暗闇に溶けた。



改めて自分にのしかかっている美麗な魔女を見上げる。
オレンジの明かりを灯もした瞳は美しいとしか言える言葉はなく、上がる心臓の音すらほど遠く感じるほど、吸いつけられて瞳が離せない。

吐息とともに美堂がゆっくりと身を屈めてくる。
ふわりと舞い降りてきた羽根のようなと形容するにふさわしいキス。
たった一瞬すらももったいなくて、俺は瞬きもせずに受け止めた。
「……ますますお前らしくねぇな」
「たまにはこういうのもいいんじゃねぇ。どうよ?」
触れるだけの飽きないキスを交わして、気分はますます高まるばかりだ。


「悪くねぇな。むしろ」
細いその首を引き寄せてトントンとノックをすれば僅かに口が開かれた。
すかさず侵入して赤い舌を絡めて吸いあげる。

「…ぅん……っんん……」

苦しいのかもしれない。起き上がろうとする美堂を抱きしめなおした。
どんなにもがいても逃がしてなんかやらない。
俺の腕の中でおとなしくなるまで荒いままの呼吸を何度も何度も奪った。
銀糸も途切れぬまま、ほどなくして上下が入れ替わる。

「俺は毎日でもかまわねぇよ」
ペロリと口の端を舐めて、ほんのり桜色に染まった肌に唇を落とす。
紅い華を散らせばビクリと反応が返ってきた。



「くくく……」
「なにがおかしい?」
急に笑い出した美堂に尋ねると、美堂は笑ったまま首を振った。
「いや、なんでもねぇ。本当にスケベだよな、テメーは」
「お前ほどじゃねぇよ」
快楽が浮かび始めた瞳は畏れを感じさせない。







































どこからか耳に響いてくる小さな声。
何度か目をこすって瞬きをして。きょろきょろと辺りを見回して、まぬけにも思考は止まったまま。
「……………夢……?」
信じられない…というか信じたくない思いを抱えて、ポツリと呟いてみた。
寒い。一人きりの部屋はあまりにも寒すぎる。
木色のサイドテーブルの下には、空き缶が転がっていた……ら救われたのにな。



















士蛮で蛮ちゃんに誘わせるということがどれだけ難しいかよくわかりました。
あまりにも無謀すぎた。自分の力量と相談してからやるべきだった(反省)
始めは夢の中でまで蛮ちゃんにいいようにこき使われちゃっている士度の話だったのですが、
「これが初夢だったらちょっと可哀想だろ」ってことで最後は幸せっぽくしてみました。夢じゃ幸せじゃないか?

2002/12/15



Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!