「なぁ、猿マワシ。テメーは待ってるか?」
俺の瞳を貫き、どこか遠くを見ながら、その答えを求めない問いかけを呟く。
まるで捨てられた子どものように。絶望と哀しみに染まった瞳で。
きっと、本当に聞きたい相手は俺じゃないんだろう。
「…待ってろって言うなら待っててやるぜ」
「サルに待っててもらっても嬉しくねぇけどな」
こぼれ落ちてしまいそうななにかを必死に堪えているような、そんな様子で彼は笑った。
「美堂っ‥!」
声もあげず、表情一つ変えないまま、泣き崩れているその背を思わず抱きしめた。
いっそ泣き喚いてしまったほうが楽だろうに。強すぎる哀しさを肌で感じて、見ているこっちのほうが辛くなる。
「ずっと待っててやる。代わりでもかまわねぇから!」
喧しいだろうとか、ガラじゃねぇとか考えずに、ただ力一杯叫んでいた。
本当にかまわないと思ったから。
彼が心から泣ける場所になれるなら本当に…
「テメーにアイツの‥邪馬人の代わりはできねぇよ」
ビクッと震えた俺は、美堂から離れた。
まわされなかった掌がすべてを告げていたのに、俺はどうして気づかなかったんだろう。
なにも言えない俺の肩に額を預けて美堂は言った。
「バーカ。勘違いしてんじゃねぇよ。俺が言ったのは誰も誰の代わりもできねぇってことだ。わかった?」
「美堂?」
「ったく、わかってねぇなぁ」
呆れが混じったような笑い声が小さく聞こえる。
上げた表情。浮かべた微笑みの柔らかさ。
敵をねじ伏せる圧倒的な強さも、脅え震えるほどの弱さもない。
きっとこれが本当の美堂 蛮の姿。
「テメーの代わりもいねぇってことだよ」
ねじれというのは 決して交わることがない
でも君が待っていてくれるなら 地の果てまでにいっても交差したい
絶対的な不可能を 可能に変えるのは想い
ここは ねじれの交差点
どうもSS用に作ると長くなってしまう。しかも微妙に。困るなぁ(汗)
2003/02/11