暗闇に溶けながらサラサラとした黒髪を撫でる。 柔らかな唇にキスを落とせば彼愛用の煙草の香り。 「ねぇ、蛮ちゃん、俺のこと好き?」 「どうしたんだよ?急に」 滑らかな肌にすり寄りながらかけた問いに求めた答えはなく、少し口を尖らせた。 「いいから答えて。ねぇ、俺のこと好き?」 再び尋ねた口調があまりに強固だったみたいで。俺の態度に蛮ちゃんはいぶかしみながらも微笑んだ。 細く長い指が俺の頬を滑って包み込む。 「あぁ、好きだぜ」 同じだった。 初めて好きだと伝えられたときと同じ笑顔。 この上なく優しくて、この上なく哀しい。あの綺麗な笑顔。 それを見る度に手にいれるのだ。言い様のない安著と、ほんの少しの哀しみを。 やっぱりな、と思いながら。 蛮ちゃん、わかってないんだね。 士度も気づいていないけど、でも俺はわかってるよ。 蛮ちゃんの『好き』は俺の好きと違うってこと。 蛮ちゃんは本当は士度が好きで。士度も蛮ちゃんが好きなんだって。邪魔者は俺なんだよね。 でも、蛮ちゃんはそれに気づかない。 蛮ちゃんのほうが俺なんかよりずっと頭いいのに気づかないね。 どうせなら最後まで気づかないでいてよ。 この、砂より脆い独りよがりな幸せを長続きさせるために。 来る日の崩壊を感じながら なにもできない 偽りの愛を求め 尽きることのない真実の愛を紡ぐ 「蛮ちゃん、愛してるよ」 ダークにしては中途半端で、なんとコメントしたらいいのか…(^^; 2003/02/25 |