止まらない。止められない。
天をも焦がす。それがこの想いの正体。




















「蛮さん、恋したことあります?」
瞳をキラキラさせるなんてことが実際にあるなら、まさに目の前の彼女がそれ。
馴染みのコーヒーに口をつけながら、周りに他に誰もいないことを確認してから口を開いた。
「そりゃ、まぁ、あるけど。夏実ちゃんはまだないのか?」
「はい そうなんですよ〜」
恋をしたことがないと嬉しそうに答えられると、次に聞かれることにだいたいの予想がつく。
「それで聞きたいんですけど、人を好きになるってどんな気持ちですか?」
やっぱりと思わず出そうになった苦笑いをなんとか隠して聞き返した。
「どんなって?」
「嬉しいとか苦しいとか、いろいろあるじゃないですか?例えばどんな風ですか?」
「例えばか。そうだなー‥」
















微かに触れる温かい指先の優しさも、そばで感じるその息遣いも。
繰り返される陳腐な言葉の囁きさえも、嬉しく感じてしまうほど。
まるで燃えあがるような熱さを持った温かな焔。
この気持ちを恋だというのならば。
















「銀次みてぇな感じかな」
「銀ちゃんみたい?蛮さん、それってどういう意味ですか?」
「蛮ちゃ〜ん、呼んだ〜?」
「べつに呼んでねぇよ」


















いつもどんな時でも胸を焦がし続けるのは温かな焔。

この気持ちが恋だというのならば、俺のしている恋は炎色の恋。


















2003/03/13



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