言うのは簡単 いくらだって告げられる

でも 君がそれを望まないならば 僕は…
















「なんだ。あの女と一緒じゃなかったのか?」
「……もしかして蛮ちゃん妬いてるの?」


蛮の独り言のような呟きをちゃんと聞きとめた銀次が尋ね返した。


「なに言ってんだ。んなワケねぇだろ」


無駄に茶化されて返ってきた言葉とは裏腹に、みつめてくる瞳は真剣で。
向けられた激しい感情を嬉しく思う自分は病気なのかもしれない。


「俺は好きなのは蛮ちゃんだけだよ。一目惚れ。蛮ちゃんってばすっごくかわいいんだもん」
「男にかわいいなんて言うんじゃねぇよ。気色悪い」


バシッと蛮がたたくと銀次は気色悪くないよ〜と膨れた。
ストンと填まる定位置は、お互いのためだけにある。


「でもいまは‥今もかわいいけど、きれいって感じがする。蛮ちゃんって美人だよね〜」
「せめて美人じゃなくて美形って言え」
「女の子のそばも悪くないけど、俺はやっぱり蛮ちゃんのそばが一番いいなぁ〜」
「…………あっそ」


そっけないと感じる蛮の言葉。
本当はただ照れているだけなのだとすぐにわかる。
だって抱きしめる腕に触れている部分から伝わってくるものは温かく、幸せだと感じるから。


























「……………………って、おい。どさくさに紛れてなにやってんだ?」
















素知らぬ顔で侵入しようとした手を容赦なくペシッと叩く。
叩いた蛮とは対照的に、叩かれた銀次のほうはさして気にする様子はない。


「だって蛮ちゃんを一番近くに感じられるっていったらこれ以外にないじゃん


ダメ?と吐息混じりに耳もとで囁かれる甘い誘惑。
蛮は銀次のこれに弱く、簡単に陥落されてしまう。
もっとも、やっている銀次はわかっててやっているわけじゃないのだが。


「かわいくて美人な俺のそばにいられるだけ幸せだと思えよ」
「それだけじゃ足りないよ。俺、欲ばりだもん」


蛮のため息混じりに、銀次は当たり前に答えた。














ずっとそばにいるよなんて、言うのは簡単だけど約束なんか出来ない。
だから俺は不確かな約束の代わりにただ一つの言葉をくりかえす。

蛮ちゃん、これだけは覚えていて。
俺が望む場所はたった一つ、蛮ちゃんの隣だけなんだってことを。








「蛮ちゃん、大好きだよ」


















銀次くんの親切に蛮ちゃんが嫉妬したというような設定。蛮ちゃんかわいくない‥。

2002/12/22



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