半乾きの髪をふきながらバスルームから出てきた。 静かな室内に響くのはペタペタという俺の足音だけ。 いつもならすぐにかかってくるはずの声が今日はかかってこない。 「銀次?」 覘いたリビングにその姿はなく、寝室をのぞいてみれば、そこに銀次はいた。 あぐらなんかかいて、珍しく腕まで組んで。 古ぼけたベッドの上で座ったまま、なぜかうなだれていて反応がない。 なにか考え込んでいるのかと思った。 金色の髪がこくりこくりと一定の間隔で動いているのを見なければ。 「おい。銀次、寝てんのか?」 近づきながら声をかけてみたが、やはり銀次からの返事はない。 そういえば俺が風呂に入る前、ずいぶん眠そうに目をこすっていたなと思い出した。 ったく、座ったまま寝ちまうくらい眠いなら先に寝ててもかまわねぇってのに。 「こら、このままじゃ風邪ひくぞ」 起こさないように気を配りながらゆっくりベッドに寝かせた。 それにしても座ったまま寝るなんて器用なヤツ‥。 たぶん銀次のことだから、前に俺が言ったことを律儀に守ろうとしてくれたんだろう。 あんなこと、べつにいいのによ。 コイツ、変なところだけはちゃんと覚えてやがるよな。 「ま、それがお前のいいところなんだろうけどよ」 ちょんちょんと頬をつつくと銀次は「う〜‥」とかうめいて、頬を数回擦るとまた夢の中へとはいっていってしまった。 すやすやと続く寝息。なんの悩みも感じさせない安らかすぎる寝顔に笑いを堪えて、俺もベッドに潜り込んだ。 風呂から出てきたばかりの俺には少し冷たすぎるシーツ。 すぐそばにはちょうどいい湯たんぽ。 いつもの俺なら少しくらい躊躇するだろうに。 俺は自分自身で驚くほど自然に銀次を抱き寄せた。 「銀次」 近くに感じるのは太陽の匂いと静かな吐息。 伏せられた睫の長さや、その鼓動の強さ。 毎日のように一緒にいても初めて気づくことはいくらでもある。 まだ気づいてないこともきっとたくさんある。 熱い照れくささを殺し、その柔らかい唇へ吸い寄せられるようにキスを落として、手は少し広い背に。 明日の朝、誤魔化すのに騒ぎになるかもしれないがかまわない。 今は君のとなり、この腕の中でぬくもりを感じていたいから。 「おやすみ、銀次」 じゃあ蛮ちゃんは?ということで蛮ちゃんメイン。書いてて羨ましくなったり(失笑) 2002/12/08 |