さんって赤が似合うよね」
何度目のデートのときだったか、いったい何の話題からだったのか、
今はそれすらわからないけれど覚えている。
本当に何気ない彼からの一言。
それだけならまだ笑ってかわして済んだのに‥

















「ねぇ、さんってなんで赤着ないの?」
なんか白や青ばかりだよねとソファに座っている誠二くんが言った。
さん、赤嫌いなの?」
「そうじゃないけど赤は私には派手なの」
ただそれだけよと言って、私は取り入れたままだった数枚の洗濯物を畳み始めた。
赤が嫌いというわけじゃない。
自慢じゃないけど、人に赤が似合うと言われることは学生の頃からしばしばあったくらいだ。
自分でもどちらかというと似合うほうだと思っていた。自画自賛なんかじゃなくて。
「そんなことないって。さんすごく似合ってるんだから」
「ふーん。似合うって思わず惚れ直しちゃうくらい?」
含み笑いで茶化すと誠二くんの顔が真っ赤になった。
「あら?誠二く〜ん?なんか顔が赤いよ〜?」
沸き上がる笑いを殺しながら頬をつついてやると、誠二くんは意地悪‥と呟いて向こうを向いてしまった。
その大きな背中を見て小さく笑う。
こうしてちょっとからかうと楽しいけれど、これ以上からかうと本当に拗ねてしまう。
まぁ、誤魔化すこともできたし、この辺でやめておくのが妥当なところだろう。
そう思ってさっさと残りの洗濯物を畳んだ。





「あれ?派手って前は赤、着てなかった?」
畳んだ洗濯物をしまって戻ってくると、
2回目のデートのとき確か赤の服、着てきたよね?と嬉しそうな声で誠二くんが同意を求めてきた。
「えぇ?そうだっけ?誠二くんの気のせいじゃない?」
どこか空を見ながら答えてみたけれど。
「ううん。絶対にそうだよ。着てきてた」
要らないくらい自信に満ちたその声に、思わず溜め息が出てしまった。
どうしてそういうことは覚えているのかしら?









さんって赤が似合うよね」
何度目のデートのときだったか、いったい何の話題からだったのか、
今はそれすらわからないけれど覚えている。
本当に何気ない彼からの一言。
それだけならまだ笑ってかわして済んだのに‥



「俺、赤が好きなんだ」
たったその一言で私は赤が着られなくなりました。





























『「赤が好き」 彼のたった一言で 私のタンスが 真っ赤に染まる』という短歌?俳句?を元にできた話。
どなたが作られたものなのか、題名すら知らないです。しっかりと覚えてもないし
内容がちょっと違います。意識して服が増えていくのと意識して着られなくなるのと。
赤が好きと言われると年上は逆に着られなくなるんじゃないかなぁと思って(勝手な想像)

2002/05/29



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