あたしは本当に馬鹿だった。大馬鹿者だった。




















チイは簡単に嘘をつける奴じゃないって知っていたのに。なんであのときのチイの言葉を嘘だと思ったんだろ?
真実なんて一個しかないのに。真実なんて気持ちの入る隙間がないのにさ。
今この瞬間から戻れるものなら戻りたいよ。
ユウナのときみたいにせめて一緒に考えたかった。
それなのにズルイよ。酷いよ。
あの日のチイの言葉に、嘘なんてひとつもなかったんじゃん。


















「俺、帰らなくちゃ」


















両手を腰に当てて、チイの声はいつもと変わらず明るかった。
友達の家へ遊びに来て、これから帰る子どもみたいに残念そうな表情をしてた。
ザナルカンドに帰るって言ってんだから、家へ帰るってことなんだろうけどさ。そうなんだろうけどさ‥
でも、どうしてなのかな。こんなに、こんなに不安になるのはさ‥


「じゃあな」
「また、会えるんだよね?ねぇ!」


待ってという言葉はあたしの中になかった。
だけど、胸の内に生まれた言い様のない不安がチイを引き留めなきゃいけないって言っていたから、背を向けたチイに叫んでいた。
あの日の嘘に尋ねたときと同じ質問。
あの時と同じように‥ううん、それ以上に答えを望んだのに、でもやっぱりチイは背を向けたまま、なにも答えてくれなかった。

























ユウナが吹く口笛が透き通った空に跳ね返ってここまで聞こえる。
チイが残したチイとユウナだけのサイン。あたしには残してくれなかった合図。
チイにも聞こえてるんでしょ?ちゃんと届いてるんでしょ?



















「ねぇ……」



















あの日の午後、待ってるのは辛くなかった。でもそれは、チイが隣にいたからなんだよ。
知ってるでしょ? あたしが待つの嫌いなこと。



















「早く、戻ってきてよ」



















あたしのためにじゃなくていいからさ。
あたしのところにじゃなくていいからさ。



















「お願いだから戻ってきてよ」



















太陽みたいなチイに、もう一度逢いたいんだ。


























初書きですので、思いだけは詰まってます。甘くないですけどね(死)

2004/02/03



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