暖かかった。温かかった。

まるで、アイツのぬくもりを感じてるようで・・・



















暖かい日差しが窓からいっぱい差し込んでくる。
俺は安物のベッドの上でゴロリと寝返りをうった。
ここは俺らの宿泊先、シルバーリーブにあるみすず館の一室。パステルたちが使ってる部屋だ。
何で居るかというと、こっちの部屋のほうが暖かいから。
もちろん理由はそれだけじゃねぇけど、誰にも見咎められないなら我慢する必要はねぇだろ?
クレイは買い物に、ノルは女将さんに手伝いに呼ばれてたし、キットンは居るはずだが、この静かさからすると間違いなくどこかに出掛けてる。
ちなみにこの部屋の主達は、天気が良いからと3人(2人と1匹)で公園に行った。
一緒に行かないかと誘われたが、面倒だと言って断った。
この頃、情緒不安定なのか、アイツと一緒に居るのが辛い‥っつーか無駄に意識する。
前までは何ともないように振る舞えていたのに、今は必死で隠してる。
いったいどうしたってんだよ、俺。
なんて、思わず自問自答してしまう。











初めて逢ったときから多少は意識していた、と思う。
道中にいたような見た目にキャーキャー言うような女じゃなく、(まぁ、出会い方が出会い方だったからかもしれねぇけど)女を使ってくるわけでもなく、今は珍しい何も染まっていない真っ白な少女だった。
それに加えて、あのクレイと張れるくらいのお人好しで、マリーナと違ってあちこちヌケまくっててときちゃ、とても放ってなんかおけない。
目を離すとルーミィ以上に危なっかしくて、だからいつも自然と目で追っていた。
‥そこに特別が生まれたのはいつだったのか、わかんねぇけど。





向けている感情が好きと自覚したからって何が変わるわけでもない。
仲間としてアイツの横に今まで通り居るだけだった。
幸い、恋愛に関しちゃ鈍感なパーティだったから、今も誰にも気づかれちゃいねぇ。
ホント助かる。
いくら俺でも24時間一緒にいて隠してんのは無理だし、何より、この想いをパステルに話す気はないから。
まだアイツに気づかれるわけにはいかない。
今みてぇにみんなでバカやって騒いでんのも、それはそれで楽しいしよ。
そう思うが、それでも偶に、本当にごく偶にだが、辛くなるときがある。
パーティの仲間としてじゃなく、一人の男として特別に見られたい。
好意を持つ以上、そう思うのは当たり前のことなんだろうけど、今の俺にはあっちゃいけねぇ。





「まだ早ぇよ‥」











広くはない部屋で、汚い天井に向かって呟いた。
視線をずらして、目に入ったのはアイツが原稿を書くときに向かってる机。
綺麗に片づけられたその上に指を走らせて手を置いた。
日が当たっていたせいで仄かに暖かい。
木から伝わってくる暖かさを感じたくて、目を閉じた。
途端に外から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
白いレースカーテンの向こうに見える3人の姿。
左側にクレイ、その肩にシロ、右側にはパステル、真ん中にルーミィ。
3人仲良く手を繋いで、そう、まるで親子のよう。
「くっくっくっ‥」
抑えきれない笑いが込み上げてきた。あんまりにも似合いすぎて笑えてくる。























ポタタ。



















「へ?」







間抜けな声をこぼして頬に手をやると、指先に雫がついた。
濡れてる?
…涙?

「あ、とりゃーぷだ」
高い声が聞こえて、ルーミィがこっちを指差したのが分かった。
レースカーテン越しでも、ちゃんと見えるらしい。
たぶんそこまで見えはしねぇだろうけど、念の為に頬を拭った。
「よぉ」
「ほんとだ。おーい、トラップ」
カーテンを開けて呑気な親友に手をふりかえして、笑顔を張り付けた。











仄かなぬくもりは、いつの間にか嫉妬という炎に変わっていた

























る、ルーミィの口調ってメチャクチャ難しくありません?(滝汗)

2004/11/18



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