恋しい。

そう、ただ恋しかっただけ。



















はぁー‥
カーテンを戻してこぼれたのは特大のため息。
家族みたいだと見て勝手に思って、傷つくなんて馬鹿らしい。本当に馬鹿らしい。
アイツらが仲が良いのは知ってるし分かってる。
なんの裏もなく、お互いをただのパーティの仲間としてしか見てないのも理解してる。
それでも。それでもあの構図に、あの親友ですら許せないと思ってしまうのは、俺の我が儘なんだろう。











「トラップ〜?」
不意打ちで叩かれた肩に、文字通り飛び上がるほど驚いた。
バッとふりかえると、其所には間抜けな面をしたパステルの姿。
さっきまで外にいたはずなのに、いつの間に部屋ん中へ来てたんだ?
「なんだよ?」
心臓はバクバク言ったままだったが、俺はできる限りいつも通りの平静を装った。
パステルは、そんな俺の雰囲気に多少疑問を感じたみてぇだったけど、聞いてはこなかった。
「あのね、今ね、女将さんがお茶を用意してくれたの。頂こうよ」
「あぁ、今行く」
口は適当な肯定を述べたけど、肝心の足が動かない。
まぁ、理由はわかってた。
さっき一緒に帰ってきたんだから、下には当然クレイやチビスケたちがいるだろう。
やつらの前で、あの雰囲気を目の前にして、にこやかにお茶なんてできる気分じゃねぇ。
それに、いつもの俺だったらこの気持ちも隠せるだろうが、今は自信なんて欠片もなかった。





行けねぇ。行きたくねぇ。
まだ此処にいてぇ。まだ此処にいてほしい。











止まれ!











そんな俺の心の声が届いたわけじゃねぇとは思うけど。
素直に部屋を出ようとしてたパステルが、いつもなら気づかねぇのに、動かない俺に気づいてわざわざ戻ってきやがった。
「トラップ?どうかしたの?」
「なんでもねぇよ」
「なんか変だよ。具合い悪いの?」
「なんでもねぇって。いいから先行ってろ」
覗き込もうとするパステルにシッシッと犬を追い払うように手を振って、顔を背けた。
それが俺が作れる精一杯の俺だった。
俺はまだこの部屋からは出たくなくて、でも、距離は欲しくて。
出来れば気づかずにそのまま行ってほしかったなんて、ついさっきまでの想いと正反対だけど。
だってよ、今そばにいたら何かが変わっちまいそうで。
越えてはいけない線を飛び越えちまいそうで、とにかく怖かったから。
だから頷いて再び背を向けたパステルを引き留めた力に、俺自身が一番驚いた。
何故か力を持つその手を慌てて離す。
俺を見上げる瞳には心配の色がはっきりと見えた。


「悪ぃ‥」





それはどっちに対しての悪いだったのか、俺自身にもわからなかった。
ぐいっと力任せに強く引いた腕。あっさり引き寄せられた体を抱き止めて、洩れるのは熱い吐息だけ。
服越しに感じる温かさと柔らかさに嬉しさを感じながらも。
腕の中にいるのに手が届かない。
その事実が重くて哀しくって仕方ねぇ。
「トラップ、寒いの?」
俺の行動に驚いていながらも、いつもと変わらないパステルの声が耳の近くで聞こえてる。
俺は無言で抱きしめる腕に力を込めた。





飛び抜けた美人じゃなくて泣き虫で、
救いようがない方向音痴で色っぽさの欠片もなくて、俺の理想とは全然違うけど。
寒いと勘違いしてる間抜けで見当違いな考え方も。クレイと張り合えるほどのお人好し加減も。
未だ何も染まっていないその真っ白な心も全部。



















全部。
イトシイ。



















言葉にできねぇほど、ただこの腕の中の存在が欲しいなんて、自分でも信じられねぇ話。
マジで好きなんだ。マジで惚れてんだよ。
今この場で想いが伝えられねぇくらい。この関係が壊れるのに脅えを感じるくらいに。
だから喉が焼けるくらい望んでんだ。
お前が気づいてくれること。このまま気づかないでいてくれることを・・・



















フッとパステルの体から力が抜けたのが分かった。
続いて、おずおずと背中を走る温かさ。
ぽんぽんと優しく、まるで小さな子どもをあやす母親のように。
何にもわかってねぇくせに。何にも気づいてねぇくせにっ!
仲間というだけで心配して手をまわしてくれる残酷なまでの優しさ。
まわされた腕の温かさが嬉しいのに、胸の辺りが痛くて苦しくて。
あまりの己の汚さに泣きたくなった。

























一番始めは甘くない。変なジンクスが出来てますね〜(苦笑)

2004/11/19



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