すっごく恐いんだ アンタはいつも余裕で
アンタのことが誰よりも好きなのに‥
言えないんだ
アンタに笑ってかわされるのが恐いから‥
俺じゃ無理なのはわかってる

アンタを捕まえておけるだけのものを俺は持ち合わせていないのだから‥















今は冬休み。今日は大晦日。
三上先輩の近くに少しでもいたくてギリギリまで寮に残っていたけど今日は家に戻ってきていた。
先輩、今ごろ何してんのかなぁ‥
ゲームをしていて、ふと頭をよぎったことだった。
人間と言うものは思い始めたら止まらないもので。
こうなってしまうと三上先輩のことが気になって仕方なくなってしまった。
そういえば先輩、俺の誕生日が明日だって覚えてくれてるかなぁ‥
あれだけ騒いだんだから少しは覚えてくれてると思うんだけど‥。
というか覚えていて欲しい‥
騒いだのは別にプレゼントが欲しかったわけじゃない。
もちろん欲しくないと言ったら嘘になるけど、それは高望みだと思うから。
本当はただ知っていて欲しかっただけ。ホンの少しでもいいから俺のことを。
ただ気にして欲しかったんだ。少しでも俺を見て欲しかったんだ‥
すごく不安になる。
あの綺麗な漆黒の瞳に俺が映っているのか。
映っているとしたらどんな風に映っているのか。
だって先輩は一度も俺のことを好きだと言ってくれないから。
俺も言ってないんだけど‥。
俺の場合、言ってないというより言えないというほうが正しい。
恐いんだ。笑ってかわされるのが。壊れてしまうのが。
そんなぐらいなら曖昧でも不安定でもこのままがいい。
先輩の傍にいられるから。先輩を抱きしめていられるから。
狡いな‥俺。









どうして人間ってどんどん欲張りになっていくんだろう
どうしてそのまま満足できないんだろう
初めはただ先輩と後輩でもいいやって思ってて
1年のときは名前覚えてもらっただけで喜んでいたのに
そのうち隣にいたいなって思い始めて
あの時だって1度だけで‥
身体だけでいいやって満足したはずなのに
今は心も欲しいって思ってる
俺を愛して欲しいって

どんどん醜くなっていく自分
どんどん強くなっていく想い

こんなに苦しいなら初めに言ってしまえばよかった?
あの時に伝えればよかった?
「貴方が好きです」って‥










窓の外を眺めていると無性に先輩に会いたくなってきた。
先輩に会いたい。会って抱きしめたい。
もう外は真っ暗だけど、ここから先輩の家までどれくらいかかるかわからないけど、会いに行こう。
伝えたい。この想いを。
それに今すぐ会いに行かなければならない気がするから。
よ〜〜〜〜し!!
ゲームの電源を切り、バサッとコートを羽織って。
「俺、ちょっと行ってくるね」
「え?お、おい!誠二!」
後ろから兄貴の声がかかったけど、俺は無視して飛び出した。





「どうしよっかなぁ」
ついての第一声がコレだった。
勢いで来たのはいいけど、なんか、いざ会うとなると恥ずかしいって言うかなんていうか‥
朧気に見上げた三上先輩の部屋(のはずの場所)に灯りはない。
せっかくここまできて帰るのもヤダし。
でも、先輩いないみたいだしなぁ。やっぱり帰ろうかなぁ‥
などと考えながら家の前を行ったりきたりして悩む。
あれ?でも、先輩は戻ってきてるはずだし、日付だって変わってないんだからいないってことはないんじゃないか?
そう思ってもう一度見上げた窓に三上先輩が見えた気がして。
「先輩?!」
思わず名前を呼んだら先輩らしき人影はスッと消えてしまった。
やっぱ気のせいかなぁ?ま、そんなに都合良くいかないよな‥
虚しさを覚え、バカみたいだと思っていたら玄関から三上先輩が飛び出してきた。
「こんばんわっす。三上先輩vv」
驚きつつも出てきた先輩にいつもどおり笑って挨拶。
「‥お前、なんでココにいるんだ?何しに来たんだよ?」
ぶっきらぼうに聞いてくる先輩。
そんな感じさえ懐かしく愛しく感じてしまう。
「そんなの、先輩に会いたかったから会いに来たに決まってるじゃないっすか〜」
寂しかった‥不安なんだ。
アンタの中で俺はどういう存在なの?
「先輩も俺に会いたかったでしょ?」
望んでいる答えがもらえないとわかっていての質問。
「‥俺は、別に会いたくなかったぜ。迷惑だっての」
ねぇ、それは本心?
今、顔をそらせたのはなぜ?顔も見たくないの?
ねぇ、どうして俺に抱かせてくれるのさ?
次々と生まれてくる問い。
聞けばいい。でも聞けない。
堂々巡りでここまできた。
答えを聞くときがいつか訪れるだろうに‥
恐いんだ。はっきり言われるのが。
自信なんてない。
この人とつりあえるだけのものを俺は持っていないから‥
「先輩ってホント素直じゃないっすね〜」
俺も人のこと言えないけど。
「照れてるんですか?」
「照れてねぇよ!」
「寂しかったんですか?」
「んなわけねぇだろ!」
こんなに可愛くないこと言ってるのに‥
やっぱり俺はこの人から離れられないんだな。
離れられないってわかってるのに言えない自分。
情けないったらない。
たった一言が伝えられないなんて。
思わず自分で自分を笑ってしまった。
どうやらそれが先輩の怒りに触れたようで。
「とっとと帰れ!じゃあな!」
くるっと向けられた背。

イヤダ‥
イカナイデ‥

無意識に思いっきり腕を引っ張ってしまった。
そのせいで先輩の体勢が崩れる。
「うわっ‥!」
あ、あぶね!!
慌ててその華奢な身体を抱きとめると三上先輩の匂いがした。
俺の大好きな匂い。すごく安心できる。
先輩が傍にいると実感できるから。
まだ俺の傍にいてくれる。と‥
「先輩っていい匂いしますね〜」
そう言うと三上先輩の顔が少し赤くなった。
同じこと考えてたかな?
「ねぇ、先輩。俺の‥‥」
こと好きですか?
「とにかく離せよ!!」
遮られてしまった言葉の続きを改めて聞く勇気も無くて。
俺はいつも通りにきり返す。
「え〜なんでっすか〜?」
「ここは玄関先だぞ!」
「だから?」
先輩の言いたい事はなんとなくわかったけど、あえて聞き返した。
「誰かに見られでもしたらどうすんだよ!」
「いいじゃないっすか。親公認ってことでvvv」
笑って言うと先輩は照れくさそうにそっぽを向いた。
うん。
やっぱり俺はこの人が好きだ。
「先輩、今出ても平気ですか?」
「別に。なんで?」
「まだ年が変わるまで時間ありますからデートしましょvv」
「は?お、おい‥!」
先輩の抗議なんてお構いなしに、俺は先輩の手をとって歩き出した。
振り払われるかと思ってたけど、先輩は握り返してくれて‥
それが俺は嬉しくて‥
俺たちはそのまま歩いた。










ねぇ、俺にアンタの心をくれない?
俺の心だけ持っていくなんて狡いよ
アンタが好きだから身体だけじゃ嫌なんだ
心も欲しいんだよ
そう思うのって欲張りなのかな?

たとえ天罰が当たったって構わない
なにがあってもアンタの手を放すつもりはないから

















ただ藤代くんも不安なんだというのが書きたかっただけ。

2001/11/23



テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル