アイツと一緒にいたいと思う
アイツに一緒にいて欲しいと思う
誰よりも藤代が好き 誰にも渡したくない
言いたいのに言えない言葉
笑ってかわされるのが恐いから‥
本気だと知られてしまうのが恐いから‥

どうしたらアイツをつなぎとめておけるんだろう















今日は大晦日。面倒くさかったが、俺は毎年のとおり家のほうに戻ってきていた。
大掃除やらなんやらしてて日中がすっかりつぶれてしまった俺は、やっと手に入った休息を楽しんでいた。
「キャハハハハ‥」
下はずいぶんと賑やかなようだが、下りていく気にはなれなかった。
電気の消えた薄暗い部屋で、独りベッドに横になり、窓から差し込んでくる月明かりを浴びていた。
‥アイツ、今ごろなにしてんのかな。
今日一日ずっと頭を占めていたことだった。
正直、自分でも驚くくらい俺はアイツに支配されてると思う。心も身体も。
はっきり言ってムカツクけど、それが嫌じゃないと感じてる自分がいると同時に、
アイツを支配したいと思う自分がいて。
はじめはただのバカな後輩だったのに。
いったい、いつの間に捕らわれてしまったのか いつになったら捕らえられるのか‥
アイツは笑って俺の傍にいてくれるけど、好きだとは一度も言ってくれない。
当然俺も言ってねぇけど‥。

言えない 言わない

とても曖昧で不安定な現在の関係。
はっきりさせたいのにはっきりするのが怖い。
アイツに捨てられたとしても、俺はきっとアイツを忘れることはできないという確信があるのに。
「お手上げだよな‥」
苦笑いしながら思わず呟いた一言。



‥そういえば、明日、アイツの誕生日なんだよな。
休み前にアイツが散々騒いでいたのを嫌でも覚えている。
別に騒がなくてもそれくらい知ってたのに。くくくっと思い出し笑いをして。
プレゼント、どうしようか‥
わざわざ用意してしまった机の上にあるものに視線をうつした。
どうやって渡そうか‥
できることならその日のうちに手渡しで渡したい。
一番はじめに『おめでとう』と言いたい。
アイツの家の場所は知っているのだから会いにいって渡せばいいだけ。
ただそれだけのことなのに不安と欠片ほどのプライドがそれを邪魔する。
要らないって言われたらどうする?
実は遊びだって言われたらどうする?
あの笑顔が俺だけに向けられているものでなかったら‥?
すごく恐い。
言いはじめたらきりがないのに‥
まったく、こんな事でこんなに悩んでるなんて俺らしくねぇよなぁ‥
アイツを好きになって、つくづく自分は変わったと思う。
一つ一つことをするのに一々不安が付きまとうようになった。
アイツに関してはこれっぽっちも自信のない自分。
自信で満ちていた昔の三上亮はいったいどこへいったのか‥
はぁ‥情けねぇなぁ‥
身体を起こし、なんとなく窓際に立つと、そこには藤代の姿が。
「‥アイツ‥なんで‥」
コートとプレゼントを持つと、俺は部屋を飛び出した。





「こんばんわっす。三上先輩vv」
屈託のない藤代の笑顔を懐かしく感じる。
ほんの数日しか離れてなかったのに‥
「‥お前、なんでココにいるんだ?何しに来たんだよ?」
ぶっきらぼうにしか尋ねられない自分。
しかし気分を害した様子もなく、藤代は言った。
「そんなの、先輩に会いたかったから会いに来たに決まってるじゃないっすか〜」
そう笑顔で答えてくれるのが嬉しい。
俺も会いたかったんだ、お前に。
「先輩も俺に会いたかったでしょ?」
当たり前のように聞く藤代に思わずドキッとしてしまった。
まるで心の中を見透かされたようで‥
「‥俺は、別に会いたくなかったぜ。迷惑だっての」
いつものように笑いながら答えた。
来てくれて嬉しいのに口から出てくるのは正反対の言葉。
素直になりたいと思う反面、できる限り演じたいとも思う。
『昔の三上亮』を。
素直じゃないのは生まれつき。
言えないのはくだらないプライドにしがみ付いてるから。
ホント、自分に嫌気がさす。
嫌われても仕方ないと思うのに、嫌わないで欲しいと願う我が儘な自分。
「先輩ってホント素直じゃないっすね〜」
あぁ、俺もそう思うよ。
「照れてるんですか?」
「照れてねぇよ!」
「寂しかったんですか?」
「んなわけねぇだろ!」
声を荒らげて言ったが藤代は笑っていた。
ホント、ムカツクやつ!
「とっとと帰れ!じゃあな!」
くるっと背を向けると、思いっきり腕を引っ張られて体勢が崩れた。
「うわっ‥!」
ふわっと藤代に抱きとめられるといい匂いがした。
藤代の匂い。すごく安心できる。傍にいてくれてると実感できるから。
「先輩っていい匂いしますね〜」
な、なんで同じこと考えてんだ///
「ねぇ、先輩。俺の‥‥」
心臓がバクバクいってる。藤代に聞こえてしまうんじゃないかって思うくらい。
俺は藤代に聞こえてしまわぬよう、声を荒らげた。
「とにかく離せよ!!」
「え〜なんでっすか〜?」
「ここは玄関先だぞ!」
「だから?」
「誰かに見られでもしたらどうすんだよ!」
まして親にでも見られたらマジ最悪だ‥
「いいじゃないっすか。親公認ってことでvvv」
藤代があんまり嬉しそうに言うから、俺は反論できなかった。
チッ‥ んな顔するんじゃねぇよ。
「先輩、今出ても平気ですか?」
「別に。なんで?」
「まだ年が変わるまで時間ありますからデートしましょvv」
「は?お、おい‥!」
人の抗議なんてお構いなしに、藤代は俺の手をとって歩き出す。
振り払おうかと思ったけど、握られた藤代の手の温かさが嬉しさを感じて‥
俺たちはそのまま歩いた。









いつになったら本心を見せられるんだろう
伝えられなくて、逃げてばかりで‥
だけどお前に傍にいて欲しい
お前が好きなんだ

いつかこの気持ちを伝えたとき
お前は変わらず傍にいてくれる?
弱くて我が儘な俺をお前は愛してくれるだろうか

お願い‥愛して
俺にはお前しかいないから
俺にはお前しか愛せないから

だってお前は俺の一番大切な人‥

















藤三‥と言っては語弊があるようなものになってしまいました。
初めてのカップリングものということで大目に見てください‥
如月サンお誕生日おめでとうございますvvv

2001/11/21



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