助けてほしいと願う自分がいる
でも 捕まってしまいたいと願う自分もいる

どちらも本当の自分で どちらも自分の本心で
求めているのはわかっているけれど 怖くて怖くて


かすかな足音が聞こえる…


早くしなければ あの人がここへ戻ってきてしまう
扉が開くその前に 早くここから逃げなければ
逃げなければと思っているのに 身体はいうことをきかない


どこまで走っても 逃げられはしない


だって
今宵は 『満月の夜』 だから…
















「なんだこいつ、まだ残っていたのか」
ドア口の椅子に座って眠り込んでいる藤代を見て、三上は呆れたように呟いた。
そしてさっき渋沢が頼むと言ったのはこのことかと理解した。
叩き起こそうかと思ったが、今起こしたら喧しくなることは明白。
とりあえずこのまま放っておこうと決め、三上はタオルを掴んでシャワールームに向かった。



どうして…



シャワーを浴びて戻ってくると、藤代はさっきとかわらず眠っていた。
三上は濡れた頭を拭きながら軽く息を吐き、着替えようと寝ている藤代に背を向けた。
ロッカーを開けようとしたらバーンと凄い音が響き、サッカーボールが足元に転がってきた。
ふりかえれば、寝ていると思っていた藤代が三上のほうを笑ってみている。
藤代はそのままなにも言わずにドア口に立った。
カチャリという小さな音と部屋の電気が消えたのはほぼ同時。
何を考えているのかと三上が口を開こうとしたら、とつぜん腕を引っ張られた。
強くない衝撃と共に直に背中に感じる冷たく硬い感触。
それが長机だと三上が認識するのに時間はかからなかった。
会話はなく、三上の代わりに机の上にのっていた物がバラバラと床に落ちた音だけが聞こえる。
両手首を押さえ込まれたまま、三上は見えない藤代を見上げた。
中途半端に乗せられた身体。
その両足は宙に浮き、机の端と藤代の足に挟まれて動かせない。
手首は強く掴まれ、ギリギリと言う音が聞こえてきそうなほど。
その痛さに顔を顰めながらも三上は声一つ上げなかった。



どうして…



三上になにも言わせないためなのか、ただ好きなだけなのか。
先ほどまでの強引さとはあまりに対照的な、優しさに埋めてその気持ちを悟られないように。
髪に。額に。瞼に。頬に。そして唇に。
藤代はまるで雨のようにキスを降らせた。
そして最後に絡みつくような、でもどこか遊び心を感じさせるキス。
藤代らしいなと思いながら、三上は黙ってそのキスを受けた。
「‥先輩、抵抗しないんすか?」
そのそぶりすら見せない三上に藤代は尋ねる。だが、三上は答えず軽く溜め息を吐いただけだった。
「お前には渋沢も笠井もいるだろうが。いったい何が不満なんだよ?」
「そんなの、全部っすよ」
























「………………もう、代わりは要らないから……」
























暗くて暗くてしっかりとわからなかった。
だから三上は余計に、藤代が泣いているのではないかと思った。
























どこまで走っても 逃げられはしない





























藤三の日にUP出来なかったので今さらですがお祝いに

2002/06/30



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