俺はこの想いを言うつもりはなかった。 ずっと胸に秘めて、にも結人にも誰にも、明かさないでいるつもりだった。 それは恋より友情が大事とか、そんな大層なことじゃない。 誰といるより結人といるときがは一番嬉しそうだったから。 の一番は結人なんだと聞かなくてもわかっていたから。 ただそれだけのこと。 どんなに喧嘩をしていても、それは俺からみればノロケでしかなかったくらいだったから。 「どうしたの?」 「あのバカ結人、せっかく人が話してるのに話聞いてないの。頭きちゃう!」 怒りを露にしてがクッションを投げつけた。 「、物に当たるのは良くないよ。もう子どもじゃないんだから」 「だって結婚式だよ?一生に一回しかないのに!」 「あーあ、英士くんと付き合えばよかった」 が呟いた誰よりも残酷な言葉。 冗談だとわかっていても、平静に答えるのは大変だった。 「じゃあ、今俺が付き合ってって言ったらは付き合うの?」 「喜んで付き合うよ。だって英士くん優しいもん」 躊躇ないの口調は、例えるなら砂漠の蜃気楼のようなもの。 そこに本当に存在するわけじゃない、ただの幻想。 「痛っ、急になにするのよ」 デコピンすると、は額を押さえて文句ありげに見上げてきた。 「嘘つきだね。は結人としか付き合えないでしょ?」 呆れた口調で聞けば、はペロッと舌を出してゴメンと謝ってきた。 「そうなんだよね〜悔しいくらい、私には結人しか見えないんだ。他にもいい人はいっぱいいるのにね」 「結人だって十分いい奴だよ。結人の良さはが一番よくわかってるでしょ?」 「なんか私、英士くんには一生敵わない気がする‥」 「当然だね」 ちょっと納得いかない顔のにクッションを投げ返した。 余裕の笑みでを膨らませて、俺はいつも通りキッチンに紅茶を煎れにいった。 迷った結果、結局3つに分けた‥ 2003/07/31 |