俺はこの想いを言うつもりはなかった。 ずっと胸に秘めて、蛍華にも結人にも誰にも、明かさないでいるつもりだった。 それは恋より友情が大事とか、そんな大層なことじゃない。 誰といるより結人といるときが蛍華は一番嬉しそうだったから。 蛍華の一番は結人なんだと聞かなくてもわかっていたから。 ただそれだけのこと。 どんなに喧嘩をしていても、それは俺からみればノロケでしかなかったくらいだったから。 「どうしたの?蛍華」 「あのバカ結人、せっかく人が話してるのに話聞いてないの。頭きちゃう!」 怒りを露にして蛍華がクッションを投げつけた。 「蛍華、物に当たるのは良くないよ。もう子どもじゃないんだから」 「だって結婚式だよ?一生に一回しかないのに!」 「あーあ、英士くんと付き合えばよかった」 蛍華が呟いた誰よりも残酷な言葉。 冗談だとわかっていても、平静に答えるのは大変だった。 「じゃあ、今俺が付き合ってって言ったら蛍華は付き合うの?」 「喜んで付き合うよ。だって英士くん優しいもん」 躊躇ない蛍華の口調は、例えるなら砂漠の蜃気楼のようなもの。 そこに本当に存在するわけじゃない、ただの幻想。 「痛っ、急になにするのよ」 デコピンすると、蛍華は額を押さえて文句ありげに見上げてきた。 「嘘つきだね。蛍華は結人としか付き合えないでしょ?」 呆れた口調で聞けば、蛍華はペロッと舌を出してゴメンと謝ってきた。 「そうなんだよね~悔しいくらい、私には結人しか見えないんだ。他にもいい人はいっぱいいるのにね」 「結人だって十分いい奴だよ。結人の良さは蛍華が一番よくわかってるでしょ?」 「なんか私、英士くんには一生敵わない気がする‥」 「当然だね」 ちょっと納得いかない顔の蛍華にクッションを投げ返した。 余裕の笑みで蛍華を膨らませて、俺はいつも通りキッチンに紅茶を煎れにいった。 迷った結果、結局3つに分けた‥ 2003/07/31 |
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