私は小さい頃から自分でも呆れるくらいの泣き虫だった。
一日に一回は必ず、と言っていいほど泣いていた。
だからといって別に誰かにいじめられていたわけじゃない。
毎日のように泣いていたけど、泣く理由はいつも違っていた気がする。
今では何で泣いていたのか、その理由すら覚えていない。

いったい何がきっかけだったのか。
自分でもわからないが、あるときから私は全然泣かなくなった。
そしてそれは今でも続いている。
まるで涙は涸れてしまったかのように‥














「なぁ、
「ん〜?な〜に?三上」
学級日誌に目を落としたまま、手は一切止めないで。
クラスメートで隣の席でちっっとも動いてくれる様子のないもう一人の日直、三上 亮くんに聞き返した。
ったく、窓の外ばっか見てないで少しは手伝えっての!と心の中で思いつつ、口には出せないでいる。
ま、サボって部活に行かれるよりは何倍かマシかもしれないけど、
手伝ってくれないんじゃ居ても居なくても同じなんじゃないか?と思わなくもない。
「お前、ぜんぜん泣かないってマジ?」
いったいどこからその話聞いたんだろ。
「あー‥まあね。ここ何年も泣いてないかな」
「なんで?」
いや、なんでって私に聞かれても‥
「そんなの私にだってわからないよ。悲しくないからじゃない?」
卒業式とかで泣いてる子を見るけど、よく泣けると感心してしまう。
「昔はスゴイ泣き虫だったんだけどねーいつからか泣かなくなったの」
そーいえば泣かなくなったのいつからかな?
「泣いてたのって学校で?誰かに苛められてたりとかか?」
「ううん。大抵は家で。親が厳しかったとかじゃないんだけど。たぶん学校で泣いたことはなかったと思うよ」
思い当たる記憶ないし。
「じゃあ、俺が泣かせてやろうか?」
楽しそうに笑いながら三上は言った。
「‥‥‥‥‥‥‥」
それを聞いて、思わず書いていた手が止まる。
「‥おい、なんかリアクション返せよ」
「あ、いや、ゴメン。思考回路が止まったもので」
なに言い出すのよ、この男は。
「‥っと、よし!書き終わった♪」
パタッと日誌を閉じて片付ける。
「三上ー、そっちの窓閉めてー」
「へいへい」





「で、どうだよ」
日誌を提出して教室に戻るとき、三上が聞いてきた。
「どうってなにが?」
何のことかわからなかったから聞き返した。
いきなり言われてわかるほど私、鋭くできてないんで。
「さっきのやつ。俺、結構マジで言ったんだけど」
「さっきのやつって教室で言ってた“俺が泣かせてやろうか?”ってやつのこと?」
他に思い当たることもなかったが、一応聞いてみた。
「そう、それ」
ニヤリと笑って言う三上を見て、ふとある考えが頭に浮かんだ。
「‥あのさ、三上ってもしかしてサド?」
「‥、マジこの場で泣かせてやろうか?」
「あーゴメンゴメン」
三上が怒ったのがわかったので慌てて謝った。
マジメにそう思ったから聞いたんだけど‥。
だって、あの発言聞いたら普通はそう思うでしょ?
「別に泣きたいとも思わないから遠慮しとくよ」
ヒラヒラと笑って手を振ったところで教室についた。



さて、帰ろう帰ろう。鞄を閉めて、ハタっと気が付いた。
そういえば三上ってサッカー部じゃん。
「三上、早く部活行かなくていい‥」
のか、と聞こうとしたらドア口で三上が溜め息をついたのが見えた。
「なに溜め息吐いてんの?」
近くに行って三上の顔を覗き込んだ。
別に顔色が悪いというふうでもないみたい。
「‥‥お前さ、俺が言ってた意味わかってねえだろ?」
呆れた感じに似た口調で溜め息混じりに三上は聞いてきた。
「意味?」
「俺のために泣かせてやるって言ってんだよ」
はい、またまた思考回路停止。
今日はよく止まるなぁ‥ってそうじゃなくて!
「‥おい、聞いてたか?」
「あのさ、三上。間違ってたらゴメン」
まだ半分止まったような思考でとりあえず先に謝って、思ったことを言ってみた。
「それって告白のように聞こえたんだけど‥」
私の気のせいよね?と言外に聞いてみる。
間違ってたらかなり失礼‥っていうか私ってば自惚れすぎ?
だって性格こそは悪いけど、三上って女子からスゴイ人気あるもん。
密かにファンクラブまであるって話だし。それは渋沢くんもだけど。
ま、当たり前だよね。
強豪武蔵野森サッカー部の司令塔サマだもん。
見た目も悪くないし、サボってばっかなのになぜか成績優秀だし?
私もけっこう好きだったり。もちろん友達としてだけど。
がそう思うんならそうだろ」
ニヤニヤと笑みを浮かべて三上は答えた。
それは‥やっぱり肯定なのかしら?
「で、どうなんだよ」
「いや、どうと言われても‥」
返答に困ってしまう。
確かにこんなカッコいい彼氏がいたら自慢になるかも‥とは思わなくはないけど。
そんな簡単なことじゃないと思うし。

まっすぐ私をみつめてくる三上にさっきまでのふざけた感じは全くなくて。
逆に恐いくらいその真剣さが伝わってきて。
「俺、が好きだ」
さっきまでただのクラスメートだったのに、とつぜん三上が男に見えて。
「俺が――――――――」
耳元で囁かれた言葉にときめいてしまったりして。
「だから俺と付き合えよ」
不覚にもこの人の隣にいたいと思ってしまった。
一種の一目惚れだったのかもしれない。
「三上、すっごく偉そう‥」
その言い方に呆れて。でも、どこか三上らしくて。
これが『三上 亮なんだ』って納得している自分がいる。
「悪ぃかよ」
「ううん。悪くないよ」









「俺がお前に涙をくれてやる」


きっかけは貴方のたった一言。

















あるサイトサマの悲恋ドリを読んで思い浮かんだ話。
話じたいは全然まっったく違う話だったので、
人様から見たら「なんでこの話読んでコレが浮かぶんだ?」って言われそうです。
唯一の共通点は相手キャラぐらい‥

なんかこれ一話だけでもいいような気がしないでもないです。
何よりこれだけ読んだ感じじゃ、ぜんぜん悲恋っぽくないですね。
悲恋ですよ。‥‥一応。

2002/03/08



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