本当は、感謝を伝えるのは俺のほうなんだ。














「悪い、恋次」
家へ来た早々、開口一番に謝られた。
「俺さ、テスト勉強しなきゃいけねえんだよ」
「試験が近いのか?」
「そうなんだ。髪の色で教師たちに目を付けられがちだから成績落とすわけにいかねえの」
「苦労してんだな。気にすんなよ。俺はごろごろしてるし」
「悪いな」
そういって、机に向かった一護。俺はというと一護のベッドに転がって漫画を読んでいた。
・・・が、すぐに飽きた。
もともと漫画が好きってわけじゃねえし。
読みかけの漫画を閉じて、ベッドに転がったまま机に向かっている一護の様子を見る。
おー真剣な表情。
すると、難しい問題にあたったのか眉間にぐぐぐっとしわが寄った。こめかみに手が動いて、唸りだした。
おもしれえ。
いくら見てても飽きはしないけど、とはいえ、ずっと一護を見つめているのもなんだし。
そう思っていたら棚に挟まれているスケッチブックが目に入った。
「それ、見ていいか?」
「あ?ああ、別にかまわねえよ」
お許しをいただいてスケッチブックをとると、パラパラとページをめくってみる。
はじめのほうはどうやら美術の授業で描いたものらしい。
こりゃ、林檎だな。
モノクロで描かれた皿に乗った林檎が現れた。
続いて、花瓶。
学校の花壇と自転車置き場。
誰かの手。
クラスメートの横顔。
幾何学の模様。
色が塗られている作品はなかった。
どうも授業で使われたのはそこまでのようで、以降は白紙が続いている。
「なぁ一護。このスケッチブック、借りていいか?あと鉛筆も」
「いいぞ、勝手に使え」
ふり返らなかった一護に許可をいただいてベッドに座りなおすと、鉛筆を走らせていく。
別に絵を描くことは好きってわけじゃない。
そんな高尚な趣味はねえし。
白いキャンバスの上。俺が描く鉛筆の先から生まれてくる一護。
力強い瞳。
そして、手。
俺に触れる。俺が引き寄せる手。
いつも梳いているオレンジ色。細くて柔らかくて気に入っている。
首筋。
肩。背中。
いつも抱きしめているその広さ。
こうやって描けば描くほど、結局どこも好きなんだよなとわかる。





「描けたのか?」
4枚目を書き終わったところで一護から声をかけられた。
「あ?あぁ、描けたけど・・・悪い。気になっちまったか?」
まったく遠慮せず見つめていたと気づいた。
いつの間にか描くことに集中していたから。
「そりゃ平気。ちょっと見せてくれよ」
「いいぜ」
我ながらうまく描けてると思うし。
ちょっと自信をもってたから、椅子に座ったままの一護の所へ持って行ってスケッチブックを差し出した。
ぺらりとめくられる。
お、珍しく一護の顔が赤くなっていく。
「どうだ?」
「・・・恋次って俺大好きなんだな」
「当たり前だろ。じゃなきゃここにいねえよ」
男の部屋で男の絵を描く趣味はねぇし。
一護は黙ってスケッチブックを机に置くと、席を立って抱きついてきた。
離れる気配のない一護に呆れつつ聞いてみる。
「おい、勉強は?」
「恋次が帰ってからやる」
「いや、だめだろ学生」
「こんなん見てやってられるかっつーの」
そういうと、ぎゅっと抱きしめる手に力がこもった。
俺もその背中に手をまわす。
「恋次」
「なんだよ?」
「描いてくれてサンキュ」
「おう」
俺の想いを描くことで一護が喜ぶんならいくらでも描いてやる。
そう伝えると、一護は本当にうれしそうに笑った。





本当は、感謝したいのは俺のほう。



ありがとう 僕の想いを感じてくれて
ありがとう 僕の想いを嬉しいと感じてくれて

君がうれしいと僕もうれしい
だれよりも 君が好きだから



















久々に自分で書いた新志を読んで、あんな甘い話が書きたいとスイッチが入りまして2時間で完成。
作っても作っても暗い話オンパレードな一恋でやってみようとチャレンジ。
あらあらゲロ甘。結構いいじゃん(笑)
テーマはまんまもらってますが、許して。
こういう話って、書いててニヤニヤが止まらないから移動中に書けないんですよねー

2021/03/07



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