某マリみてのパロのようなそうでもないような。
春道とヤス中心。
その他、カップリングのつもりじゃないものがほとんどですが、姉妹入り乱れてますので、ご注意を。





鴉のマリみて





 時は春。
 鈴蘭男子高校は、ある噂でもちきりだった。



 ことは、一年戦争終結時まで遡る。
 今年の一年戦争は、ゼットンこと花澤三郎が、中学の先輩でもある三年の坊屋春道に挑み、善戦の末敗れるという結末を迎えた。
 その直後のことだ。
 揃いも揃ってプティ・スールがいないでおなじみの鈴蘭の幹部中、実に二人が、新入生からプティ・スールを選んだ。
 ポンこと本城俊明と、ヒロミこと桐島ヒロミ。
 ポンは、海老塚中学の後輩・岩城軍司と、タイマンを張った後にスールとなった。
 前年度、鳳仙学園との抗争の後、犬猿の仲だった三年生・阪東のプティ・スールとなり、周囲を驚かせたヒロミは、自分と同じ「狂犬」の異名をもつ加東秀吉をプティ・スールにした。
 こうなると、俄然注目されるのは、ポンとヒロミ以外の幹部たちは、果たしてプティ・スールを持つのか、ということである。
 しかし、海老塚三人衆の最後の一人・マコこと杉原誠は、プティ・スールをもつつもりはない、と早々に宣言した。
 自分は愛に生きているし、いつまで鈴蘭にいるか分からないし、というのが、その理由である。
 ということで、プティ・スールをもつか否か、曖昧な幹部は、鈴蘭最強の男・坊屋春道その人のみとなった。


 ここで、話は冒頭に戻る。
 現在、鈴蘭を賑わせているある噂。
 それは、春道が、ある一年生をプティ・スールにするのではないか、という噂だった。
 ある一年生、とはゼットン。
 今年の一年戦争の覇者である。
 三年のトップが(学年は一年飛ばしだが)下級生のトップをプティ・スールに選ぶというのは、何とも収まりのいい話で、しかも二人は中学時代の先輩後輩で仲もいい。
 ゼットンに決まりだな、というのが、大方の見解だった。



 しかし、その噂に、複雑な気分の男が一人いた。
 ヤスこと安田泰男。
 現在の鈴蘭で、派手な三年と一年に挟まれ、どうにも精彩を欠く二年生のトップ……では全くない。
 おそらく、喧嘩の強さは、二年の中でも最底辺。
 けれど、ヤスは春道にずっとついてきた。
 だからこそ、春道がゼットンをプティ・スールにする、という噂は、ヤスにとって複雑なものだった。
 春道が二年、ヤスが一年のとき、転校生だった春道と最初に親しくなったのはヤスである。
 転校早々、海老塚三人衆とやり合い、阪東一派とやり合い、果ては武装の龍信を倒して、全校どころか、この街中にその名を知られた春道。
 そんな春道のプティ・スールに、まさか自分がなれるなんて思うほど、ヤスはうぬぼれが強くない。
 けれど、春道が誰もプティ・スールにしないことで、もしかして……なんて今更思ったりしないけれど、何となく安心していた。
 それが、今になって、春道のプティ・スールにふさわしい下級生が現れるなんて。
 ヤスは予想もしていなかった。
 そういえば、自分は春道のことを何も知らないと思った。
 悔しいけれど、喧嘩の腕も器の大きさも、ゼットンは春道のプティ・スールにぴったりだった。



 誰もいない屋上で、ヤスは去年のことを思い出す。
 ヒロミが阪東のロザリオを受け取って、彼のプティ・スールになったように、春道にもかつてグラン・スールと目された相手がいた。
 阪東の同級生で、春道たちよりも一学年上の、リンダマンこと林田恵だ。
 鈴蘭史上最強の男と言われる春道と、同じくらい強かったリンダマン。
 二人は、リンダマンが鈴蘭を卒業した日に、神社でタイマンを張った。
 結果は春道の負けだった。
 気絶した春道を抱えて、リンダマンが去っていく。
 大勢の男たちが、息をつめて見守っていた。
 ヤスも見ていた。
 二人の間には、誰も割って入れないような雰囲気があった。
 あのタイマンの後、リンダマンは春道をプティ・スールにした。
 後日、街中でそんな噂が、まことしやかに囁かれた。
 春道本人は何も言わないし、リンダマンはこの街を出てしまったし、で、噂の真相は今も確かめられていない。
 そもそも、卒業式の後にした契りが有効なのかどうかも分からない。
 ただ、ヤスは思う。
 もしも春道のグラン・スールにふさわしい男がいるのなら、それはリンダマンの他にありえない。
 ヤスだけでなく、鈴蘭の、否、この街の不良少年なら、誰もが思うことだった。
 最強の男のスールは、最強の男であってほしい。
 だから、ヤスは春道のプティ・スールになれるとも、また、なりたいとも思わずにきたのだ。



(でもなあ……)

 ため息をつく。
 坊屋春道のプティ・スールに、自分がなれるなんて夢にも思わない。
 でも、春道がゼットンにロザリオを差し出すのかと思うと、何だか胸のあたりがモヤモヤするのだ。






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……というような妄想を記したファイルを発掘したので、まとめてみました。
マリみてパロ流行りましたね。5〜6年前でしょうか。もっと前でしょうか。
もはや古すぎて一周回ったんじゃないの?と思い、出してみました。回ってませんか……?でも好きなんです。誰が誰を「お姉さま」と呼ぶのか、とか考えるのが。
女体化じゃなくて、みんなあのまま「お姉さま」。

タイマン張った後のポンと軍司は、絵に描いたような理想の姉妹になります。今年のベスト・スール賞もきっと獲る。ポンが軍司にあげたロザリオは、ポンの卒業後、軍司のプティ・スールになった十希夫に渡ります。 ちなみに、ポンは、一年のときに、千田からのスールの申込みを断っています。千田の卒業後、街で偶然再会したポンは、変わり果てた千田を、とても乱暴な方法で励まします。その際、「次にあいつに会ったら、俺はあいつのことを『お姉さま』って呼んでやろうかと思ってるんだ」という名言を残します。

秀吉は、ヒロミにロザリオを渡されたとき、「これじゃなくて、そっちくれよ」と言います。そっち、とはヒロミが首から提げてるロザリオ。でも、ヒロミはそっちはくれません。阪東からもらったロザリオだからです。

マコは、上に書いたとおりの理由で、プティ・スールを持ちません。その話を聞いて、なぜか鳳仙で秀幸が胸を撫で下ろします。(杉原はプティ・スールを持たねえんだな)とホッとした後、(何で俺が安心してんだ?)と狼狽えます。こっちはこっちで竜也様がみてる。

そして、鈴蘭の皆さん大方の予想に反して、春道はゼットンをプティ・スールにはしません。そういうの興味ないとか何とか。
けれど、春道は、ヤスの気持ちを知って、「こんなもんで良けりゃやるけどよ」と、ロザリオをくれようとします。が、ヤスは、自分が春道に求めていたのは、そういう関係じゃないと気づいて断ります。
ゼットンは、後日その話を聞いて、「じゃあ自分が安田さんのプティ・スールになりましょう!」とか訳のわからないことを。

「お姉さま」と呼べるかどうかについては、意外と軍司が手間取ります。最初は照れまくって呼べません。「いや何か恐れおおいっていうか……」と顔を真っ赤にする軍司に、おもしろがって何度も呼ばせるポン。
対して秀吉は、ヒロミのことを、あっさり「お姉さま」と呼ぶようになります。内心は緊張していたかもしれませんが、「桐島ぁ!」からいつのまにかシレッと「お姉さま」に移行しています。二人きりのときは「ヒロミさん」と呼びたいとゴネて、ヒロミに苦笑されたりしています。








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